がんの早期診断に資する新規のPET薬剤標識技術開発と普及に向けた自動合成装置の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201438022A
報告書区分
総括
研究課題名
がんの早期診断に資する新規のPET薬剤標識技術開発と普及に向けた自動合成装置の開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
栗原 宏明(独立行政法人国立がん研究センター 放射線診断科)
研究分担者(所属機関)
  • 伊丹 純(独立行政法人国立がん研究センター 放射線治療科)
  • 高橋 和弘(独立行政法人理化学研究所・ライフサイエンス技術基盤研究センター)
  • 大崎 勝彦(JFEテクノス株式会社・量子システム事業部)
  • 金井 泰和(大阪大学・医学系研究科)
  • 田村 研治(国立がん研究センター中央病院・乳腺腫瘍内科)
  • 吉本 光喜(国立がん研究センター・研究所)
  • 荒井 保明(独立行政法人国立がん研究センター 放射線診断科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
PET検査による分子イメージングは早期発見が困難な難治性がんや転移・再発例等に対する早期診断に最適な診断技術の一つであり、FDG以外にも新規のPET薬剤が開発されている。PET薬剤は大量合成が難しく、新規のPET薬剤が早期診断のための診断薬として普及していくためには高収率・高比放射能を達成できるPET薬剤製造技術の開発とPET薬剤合成の自動化が必須である。本研究では従来の方法ではわからなかったがんの性状を画像化できると期待されているHER2イメージング剤と18F-FBPAに焦点を当て、民間企業(JFE)と連携して、①高収率・高比放射能を達成できる標識技術の確立と、②その標識技術を反映させたPET薬剤自動合成装置の開発を目的とする。
研究方法
18Fアニオンを用いた芳香環のフッ素化反応は、従来の方法では官能基や脱離基の種類により大きな制約を受ける。一方、その制約を越える方法がいくつか提案されているが実用レベルには至っていない。そこで、従来法と新しい方法の2つの合成ルートについて検討する。いずれも新規合成法であり、より確実性の高い方法を優先的に開発を進める。例えば、AgFをF-源としてパラジウム(IV)クロライドをフッ素置換し、別のアリールパラジウム種と反応させることで様々な置換基を有する芳香族化合物のベンゼン環をフッ素化する方法や、その他にもヨードニウム塩などを用いてフッ素化する方法など、最近の知見をもとに、F-からの新規FBPA合成法の考案も考えて行く予定である。
合成方法が確立した後、開発された新たな合成方法を実行できるよう、自動合成装置の仕様を決定し、その仕様に基づき試作機の製作を行っう。自動合成装置はカセット式とし、樹脂製材料を中心とした三方活栓、ピンチバルブ、注射筒、チューブ、注射針、バイアルをつないで開発している。限られた大きさのホットセルに導入するために小型化を行い、開発を進める。
結果と考察
18FアニオンからのFBPA合成は従来法や先行特許の方法では十分な量を合成できないことがわかった。そのため、高い収率を得られるよう新たな合成方法を開発し、1度の合成で2GBq以上の最終製剤が得られる合成方法を確立した。
PETプローブの標識合成では、核種の半減期の短い点から短時間合成が要求され、工程数は少ない程良いとされ、通常は2工程くらいが普通である。今回新たに開発された新規のFBPA合成方法は5工程の合成であるが、十分、常道合成装置に応用可能と思われる。一回合成あたりの収率も比較的良好であった。今後は前駆体を導入するなど、反応工程の簡略化についても研究を進める予定である。
自動合成装置の開発に関して、合成装置は三方活栓カセットを用いた装置とした。三方活栓回転用のアクチュエータ、シリンジの駆動アクチュエータ、バイアル反応容器の昇温ヒーターなどのパーツから構成し、これらのパーツを自動シーケンスにより動作させることにより、流路の切り替え、液の移送を行い、反応工程や精製工程が実施出来るよう設計した。合成の状況は、各種センサーによりモニタリングできるようにし、モニタリング用のセンサーとしては放射能センサーなどを考慮している。また、その他、液の移送、パージ用の窒素ガス供給口、溶媒留去のための真空・排気ラインへの接続口などについて既存設備と整合性が取れるようにした。新規開発された18F-FBPAの18Fフッ化物イオンを原料とする合成方法は、反応プロセスは5-6工程、固相抽出による精製プロセスは3工程程度が必要となるから、これらを考慮に入れて基本仕様を決定した。今後の検討において固相カラム上での反応実施(オンカラム合成)、精製プロセスの省略などによりプロセスが簡略化される可能性はあるが、今回製作する試作機としては余裕をもった仕様とした。
装置本体の概寸は、上記の機能を持たせて、W550×D440×H400程度とし、既存のホットセルに設置可能な大きさとした。
結論
18Fアニオンから十分な量のFBPAを得るための新たな合成方法を開発した。開発した新たな合成方法を実行できる自動合成装置の製作に着手した。

公開日・更新日

公開日
2015-09-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201438022C

収支報告書

文献番号
201438022Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
29,900,000円
(2)補助金確定額
29,604,356円
差引額 [(1)-(2)]
295,644円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 13,691,316円
人件費・謝金 2,298,988円
旅費 941,290円
その他 5,772,762円
間接経費 6,900,000円
合計 29,604,356円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-08-04
更新日
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