RNA測定による膵癌血液診断法の実用化研究

文献情報

文献番号
201438021A
報告書区分
総括
研究課題名
RNA測定による膵癌血液診断法の実用化研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
金子 周一(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
研究分担者(所属機関)
  • 太田 哲生(金沢大学 医薬保健研究域医学系 )
  • 酒井 佳夫(金沢大学 医薬保健研究域医学系 )
  • 北川 裕久(金沢大学附属病院)
  • 原田 憲一(金沢大学 医薬保健研究域医学系 )
  • 本多 政夫(金沢大学 医薬保健研究域保健学系 )
  • 今井 康人(金沢大学附属病院 先端医療開発センター)
  • 藤原 忠美(名古屋大学医学部附属病院 先端医療・臨床研究支援センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
膵癌は、我が国で約3万人が年間死亡し、部位別癌死亡数の第5位を占める重要な悪性腫瘍である。膵癌の5年生存率は約10%と極めて予後不良であり、その原因には、多くが進行状態で診断される、外科的根治術以外に予後を著しく改善する治療法がない、ことがある。有症状を契機に診断される膵癌は殆どが進行状態である。膵癌特異的なリスク因子もなく、ハイリスク対象の囲い込みも困難である。そのため、簡便で普及性のある膵癌診断法の開発が極めて重要である。本研究では、膵癌組織の炎症細胞、末梢血液細胞の遺伝子発現解析を行い、膵癌の生体反応の特徴を解析し、開発済のRNA測定診断薬「消化器がんマイクロアレイ血液検査」を、膵癌を高精度に診断する「膵癌血液mRNA測定検査」に改良、実用化を目標とする。
研究方法
業務項目「膵癌の病態解析と膵癌高精度判定血液RNA測定診断薬の開発」では、a.プロジェクトの総合推進、b.膵癌患者の末梢血液、癌組織の解析による遺伝子発現解析診断技術基盤開発、c.消化器癌RNA測定診断薬の膵癌検出診断薬への改良技術開発、d.膵癌高精度判定血液mRNA測定診断薬開発検討会を実施する。業務項目「膵癌高精度判定血液RNA測定診断薬の臨床性能試験」では、改良開発するmRNA測定体外診断薬「膵癌血液mRNA測定検査」について、臨床性能試験案、試験薬概要書を策定し、医薬品・医療機器総合機構の体外診断用医薬品対面助言を実施し、治験に準じた臨床性能試験により、体外診断用医薬品承認申請を行う。
結果と考察
【膵癌患者の末梢血液、癌組織の解析による遺伝子発現解析診断技術基盤開発】
膵癌患者(5例)および対照健常者(7例)の末梢血液について、全血液、およびCD4+細胞、CD8+細胞、CD14+細胞、CD15+細胞の各分画を分離、それぞれRNAを抽出、mRNA発現についてDNAマイクロアレイを用いて遺伝子発現解析を行った。階層クラスタリング解析で、全血液、および細胞分画ではCD14+細胞とCD4+細胞が、膵癌、健常者それぞれを多数含む2つのクラスタが形成、両細胞分画の膵癌血液反応への関与が示唆された。
膵癌切除組織における炎症状態の解析について、外科的切除治療をうけた膵癌患者20例の膵癌組織について、炎症細胞集簇の特徴を免疫染色にて検討した。膵癌局所には、CD33+好中球エラスターゼ陰性の単球/マクロファージ系細胞、CD4+細胞の著明な集簇を認めた。
これらの解析より、膵癌の存在による、全末梢血液細胞の遺伝子発現変化が生じ、末梢血液細胞分画および膵癌局所においてCD4+細胞および単球/マクロファージ系細胞がともに膵癌に伴う炎症細胞の反応に重要な役割を担うことが示唆された。
【消化器癌RNA測定診断薬の膵癌検出診断薬への改良技術開発】
RNA測定診断薬「消化器がんPCRアレイ血液検査」で膵癌28例、健常者27例の全血液遺伝子発現測定を実施した。膵癌の血液で有意に発現変動を示す遺伝子について、リアルタイム定量PCRにて発現データを確認、得られた遺伝子発現データの生物統計解析により、膵癌に反応し、診断に有用と推定される40個までの遺伝子群セットを同定した。
体外診断用医薬品承認のため、血液からのRNA抽出、発現解析における機器については、医療機器届出済みのPAX-gene採血管からRNAを抽出するキアゲン社の自動分注装置ならびに自動抽出装置は医療機器を用いることとした。遺伝子発現測定の機器については、384個の遺伝子を同時測定可能な同社のリアルタイムPCR機器を用いることとした(製造販売届出番号:13B3X10099000002)。
【膵癌高精度判定血液mRNA測定診断薬開発検討会の実施】
 平成26年11月18日に、「膵臓癌診断キットの研究開発に関する全体会議」を開催し、膵癌病態解析、膵癌高精度判定血液mRNA測定診断薬の品質技術についての報告討論、および体外診断薬と実施すべき臨床性能試験計画案についての医薬品・医療器総合機構の医療機器・体外診断用医薬品対面助言面談、臨床性能試験実施、承認申請の工程を策定した。工程に従い、医薬品・医療機器総合機構の医療機器・体外診断用医薬品に関する対面助言準備面談を平成27年3月19日に実施した。また、医薬品開発業務受託機関を選定した。
結論
膵癌の末梢血液細胞の遺伝子発現変化解析、膵癌局所の炎症状態の解析により、膵癌に最も精度が高く反応が検出される遺伝子発現を測定し診断する「膵癌血液mRNA測定検査」診断薬開発の基盤が整った。開発中の「膵癌血液mRNA測定検査」の臨床性能試験への試験実施体制を整備した。

公開日・更新日

公開日
2015-09-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201438021C

収支報告書

文献番号
201438021Z