ゲノミクス解析に基づく造血器悪性腫瘍の病態解明

文献情報

文献番号
201438014A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノミクス解析に基づく造血器悪性腫瘍の病態解明
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
間野 博行(東京大学 大学院医学系研究科細胞情報学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 永井 正(自治医科大学 内科学講座血液学部門)
  • 宮崎 泰司(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 中村 元直(岡山理科大学 理学部臨床生命科学科)
  • 都築 忍(愛知県がんセンター研究所 遺伝子医療研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
白血病は様々な遺伝子異常によって生じるヘテロな疾患群であり、PML-RARAやBCR-ABLのように具体的な発がん原因遺伝子・治療対象分子が明らかな例はまれである。有効な分子標的療法を新たに開発するためには、それぞれの白血病サブグループの主たる発症原因遺伝子を明らかにすることが重要であり、そのためにはゲノミクス解析が有用なツールと考えられる。
我々はこれまでの第3次対がん総合戦略研究事業において、(1)広く我が国の白血病症例からCD133陽性白血病芽球分画のみを純化保存するバンク事業を行い既に1000例に及ぶ芽球ストックを整備した(Blood 98:422)と共に、(2)微量の臨床検体からでもマイクロRNA(miRNA)を大量にクローニングする手法を開発し(Nature Protocols 2:3136)、上記白血病芽球におけるmiRNA配列の大規模取得技術を確立した。さらに我々は、一般の方法とは異なり、エラー率の極めて低い次世代シークエンサー解析技術を新たに開発した(未発表データ)。そこで本研究計画では、次世代シークエンサーを用いて上記検体バンクを大規模にリシークエンスし、配列異常の面から造血器腫瘍の新たな分子診断マーカーおよび発症原因異常の探索を目指す。
研究方法
各検体試料よりmRNAを抽出して断片化した後、SureSelectシステム(Agilent社)を用いてエクソン領域のみを高効率に純化した。これを次世代シークエンサーによる配列解析を行い、各試料毎に約50 Gbpの大量の塩基配列を得た。それを独自のコンピューターパイプラインによって非同義変異のリストを得た。
結果と考察
我々が集めた検体の中に、家族性血小板異常症の患者群があった。それら症例の骨髄及び頬粘膜細胞よりゲノムDNAを抽出し、全エクソンシークエンスを行った。興味深いことに全検体中53%の頻度でCDC25Cの非同義変異を発見した。中でもD234G変異はrecurrentであった。CDC25Cはdual phosphataseであり、その活性により細胞周期のG2/Mチェックポイントを制御することが知られており、その異常がG2/Mチェックポイントの破綻につながることが予想される。実際、変異CDC25CはTAK1によるリン酸化を受けず、14-3-3タンパクに結合しないことがわかった。その結果活性が高進し、変異CDC25Cを持つ細胞はG2/Mチェックポイントを受けず、細胞周期が異常に更新することが明らかになった。そのためCDC25C変異細胞はDNAダメージ存在下でも細胞周期停止・アポトーシスにならず、DNA変異を蓄積しやすいことが明らかになった。
結論
家族性血小板異常症は、高頻度に急性骨髄性白血病・骨髄異形成症候群に移行することがしられており、その原因は不明であった。CDC25C変異が家族性血小板異常症の約半数に見つかったことは、細胞周期異常がその原因であると考えられ、より早期からの末梢血の遺伝子スクリーニングの重要性を示唆する。

公開日・更新日

公開日
2015-09-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201438014C

収支報告書

文献番号
201438014Z