文献情報
文献番号
201433004A
報告書区分
総括
研究課題名
新しいコンセプトに基づく掻痒抑制物質探索のための新規アトピー性皮膚炎モデルの開発とその応用
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
福井 宣規(九州大学生体防御医学研究所)
研究分担者(所属機関)
- 古江 増隆(九州大学医学研究院)
- 安東 嗣修(富山大学大学院医学薬学研究部)
- 山本 美奈 (塩野義製薬株式会社)
- 萩原 明人(九州大学医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【委託費】 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
46,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
痒みは「掻破したいという衝動を起こさせる不快な感覚」として定義され、様々な疾患で認められる代表的な症状であり、QOLを著しく損なうことから、その対策は重要である。特に、国民の7~15%がアトピー性皮膚炎に罹患しているという現状を鑑みると、その創薬ニーズは極めて高い。研究代表者は最近、重篤なアトピー様皮膚炎を自然発症する新しいモデルマウスを開発した。本研究では、この疾患モデルマウスを用いて、掻痒惹起物質の産生制御機構や感知機構を明らかにすると共に、分子レベルでの摂動実験やヒト臨床検体を用いた解析を行い、産生と感知の両面から、新たな創薬ターゲットを同定することを目的とする。
研究方法
1) モデルマウスの免疫学的・組織学的解析
掻破行動を週令を追ってモニターすると共に、その皮膚を組織学的に解析する。また、リンパ節や皮膚のT細胞を対象に、関連サイトカインの産生パターンに関して詳細な解析を実施する。
2) 産生制御機構の解明
モデルマウスで発現が上昇あるいは低下する遺伝子を網羅的に探索し、その遺伝子をCD4+ T細胞に導入することで、サイトカインの産生を制御する候補因子のスクリーニングを行う。同定した分子を対象に、ノックダウンによる機能解析やレポーターアッセイを行い、その産生に重要なマスター制御分子を同定する。また、サイトカインの発現をモニターできるレポーターマウス(プロモーターの下流、第1エクソンをGFPで置換)を作製する。
3) 感知機構の解明
サイトカインの投与により応答するDRGニューロンをErkのリン酸化を指標に見いだし、既知の痒み受容体の発現と比較解析することで、サイトカイン応答性痒み関連ニューロンの特徴づけを行う。
4) ヒト臨床検体を用いた解析
アトピー性皮膚炎の患者サンプル(血清、DNA、RNA)の収集に着手する。これを用いて、関連候補遺伝子の発現や活性化、多型につき、サイトカインの産生や臨床症状との関連性に注目した解析をスタートさせる。必要に応じて、ヒトCD4+ T細胞を用いた解析にも着手する。
5) 創薬研究
既存薬の有用性の検定に着手すると共に、研究代表者に協力して、新たな創薬標的の同定を行う。
掻破行動を週令を追ってモニターすると共に、その皮膚を組織学的に解析する。また、リンパ節や皮膚のT細胞を対象に、関連サイトカインの産生パターンに関して詳細な解析を実施する。
2) 産生制御機構の解明
モデルマウスで発現が上昇あるいは低下する遺伝子を網羅的に探索し、その遺伝子をCD4+ T細胞に導入することで、サイトカインの産生を制御する候補因子のスクリーニングを行う。同定した分子を対象に、ノックダウンによる機能解析やレポーターアッセイを行い、その産生に重要なマスター制御分子を同定する。また、サイトカインの発現をモニターできるレポーターマウス(プロモーターの下流、第1エクソンをGFPで置換)を作製する。
3) 感知機構の解明
サイトカインの投与により応答するDRGニューロンをErkのリン酸化を指標に見いだし、既知の痒み受容体の発現と比較解析することで、サイトカイン応答性痒み関連ニューロンの特徴づけを行う。
4) ヒト臨床検体を用いた解析
アトピー性皮膚炎の患者サンプル(血清、DNA、RNA)の収集に着手する。これを用いて、関連候補遺伝子の発現や活性化、多型につき、サイトカインの産生や臨床症状との関連性に注目した解析をスタートさせる。必要に応じて、ヒトCD4+ T細胞を用いた解析にも着手する。
5) 創薬研究
既存薬の有用性の検定に着手すると共に、研究代表者に協力して、新たな創薬標的の同定を行う。
結果と考察
1) モデルマウスの免疫学的・組織学的解析
モデルマウスの皮膚に浸潤する細胞の主体はCD4+ T細胞である事を明らかにすると共に、そのサイトカイン産生に関する詳細な解析を行った。また、疾患発症におけるサイトカインシグナルの重要性を確認するため、その受容体のノックアウトマウスとの交配を開始した。
2) 産生制御機構の解明
マイクロアレイを用いて、遺伝子の網羅的探索を行い、その中からマスター制御因子候補を同定した。また、サイトカインの第1エクソンをGFPで置換したノックインマウスを作製した。
3) 感知機構の解明
サイトカインの皮内注射により、掻破行動並びに皮膚神経枝の末梢神経活動の増加が観察され、皮膚内の一次感覚神経及び一次感覚神経の細胞体である後根神経節(DRG)ニューロンの初代培養において、該当受容体が発現していることを確認した。DRGニューロンへのサイトカイン刺激によりGRP及びNppb (BNP) 陽性ニューロンの一部に興奮した神経のマーカーであるErkのリン酸化が、またそれ以外のニューロンにおいてもErkのリン酸化が認められた。
4) ヒト臨床検体を用いた解析
「アトピー性皮膚炎の病態・痒みに関連する新規転写因子・シグナル分子・代謝産物の解析」が承認されたことを受け、臨床検体(血清、DNA、RNA)採集の準備に着手すると共に、エキソーム解析のため条件設定を行った。また、ヒトCD4+ T細胞を用いてサイトカインの産生をモニターできる実験系の構築を行った。
5) 創薬研究
抗サイトカイン関連抗体の作製に着手した。ファージ抗体ライブラリーを用いたスクリーニングを実施し、複数の陽性クローンを得た。
モデルマウスの皮膚に浸潤する細胞の主体はCD4+ T細胞である事を明らかにすると共に、そのサイトカイン産生に関する詳細な解析を行った。また、疾患発症におけるサイトカインシグナルの重要性を確認するため、その受容体のノックアウトマウスとの交配を開始した。
2) 産生制御機構の解明
マイクロアレイを用いて、遺伝子の網羅的探索を行い、その中からマスター制御因子候補を同定した。また、サイトカインの第1エクソンをGFPで置換したノックインマウスを作製した。
3) 感知機構の解明
サイトカインの皮内注射により、掻破行動並びに皮膚神経枝の末梢神経活動の増加が観察され、皮膚内の一次感覚神経及び一次感覚神経の細胞体である後根神経節(DRG)ニューロンの初代培養において、該当受容体が発現していることを確認した。DRGニューロンへのサイトカイン刺激によりGRP及びNppb (BNP) 陽性ニューロンの一部に興奮した神経のマーカーであるErkのリン酸化が、またそれ以外のニューロンにおいてもErkのリン酸化が認められた。
4) ヒト臨床検体を用いた解析
「アトピー性皮膚炎の病態・痒みに関連する新規転写因子・シグナル分子・代謝産物の解析」が承認されたことを受け、臨床検体(血清、DNA、RNA)採集の準備に着手すると共に、エキソーム解析のため条件設定を行った。また、ヒトCD4+ T細胞を用いてサイトカインの産生をモニターできる実験系の構築を行った。
5) 創薬研究
抗サイトカイン関連抗体の作製に着手した。ファージ抗体ライブラリーを用いたスクリーニングを実施し、複数の陽性クローンを得た。
結論
新しいアトピー性皮膚炎モデルを樹立し、関連サイトカインの産生に重要なマスター制御分子候補を同定すると共に、その一次感覚神経への新たな感知機構の存在を明らかにした。
公開日・更新日
公開日
2015-06-01
更新日
-