文献情報
文献番号
201433002A
報告書区分
総括
研究課題名
新規癌抗原Glypican-1に対する抗体医薬品の奏功性を予測するコンパニオン診断薬の開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
仲 哲治(独立行政法人 医薬基盤研究所 創薬基盤研究部)
研究分担者(所属機関)
- 柳町 守(エーザイ株式会社 エーザイ・プロダクトクリエーション・システムズ バイオマーカー&パーソナライズド・メディスン機能ユニット バイオマーカーリサーチグループ)
- 豊浦 雅義(株式会社ファーマフーズ開発部)
- 藤尾 慈(大阪大学大学院薬学研究科臨床薬効解析学)
- 土岐 祐一郎(大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科)
- 高橋 剛(大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科)
- 世良田 聡(独立行政法人医薬基盤研究所 創薬基盤研究部 免疫シグナルプロジェクト)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【委託費】 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
46,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
食道癌の治療成績は手術手技等の向上に加え、化学療法の進歩により改善しつつあるが、StageⅡ・Ⅲの食道癌に術前化学療法を施行し切除した症例でも5年生存率はわずか55%であり、進行食道癌の治療成績は未だ低いというのが現状である(Ando et al. Ann Surg Oncol. 2012)。化学療法に対する耐性も予後不良の因子の1つであることからも、食道癌の治療成績の向上には新規治療法の開発が急務である。このような問題を解決するため、研究代表者は食道癌の新規癌抗原をプロテオーム解析により探索し、その1つとしてGlypican-1が食道癌患者に高発現する事を発見した。そして、独自に開発したGlypican-1に対するモノクローナル抗体が食道癌の動物モデルに対して優れた抗腫瘍効果を示す事と、重篤な毒性も示さないことも明らかにしており(国際出願PCT/JP2014/006455)、Glypican-1に対する抗体医薬品をエーザイ(株)と共同開発中である。本研究の目的は、上記抗体医薬品の奏功性が期待される患者を選定するためのコンパニオン診断薬を同時開発し、実用化することである。
研究方法
研究代表者は食道癌の新規癌抗原としてGlypican-1を同定しており、食道癌患者血液中においても可溶型のGlypican-1が高値を示すことを明らかにしている。そのため、低侵襲且つ簡便な血液中のGlypican-1を定量するELISAシステムを開発し、コンパニオン診断薬としての実用化を目指す。
(1)血清Glypican-1定量システムの開発
Glypican-1に対する高親和性のモノクローナル抗体を樹立し、血液中のGlypican-1濃度を定量するサンドイッチELISAシステムを独自に確立する。
(2)食道癌患者血清、手術組織および臨床情報の収集
大阪大学大学院医学系研究科消化器外科において、食道癌患者の血清と手術組織の収集を行う。同時にさまざまな臨床情報も記載する。
(1)血清Glypican-1定量システムの開発
Glypican-1に対する高親和性のモノクローナル抗体を樹立し、血液中のGlypican-1濃度を定量するサンドイッチELISAシステムを独自に確立する。
(2)食道癌患者血清、手術組織および臨床情報の収集
大阪大学大学院医学系研究科消化器外科において、食道癌患者の血清と手術組織の収集を行う。同時にさまざまな臨床情報も記載する。
結果と考察
(1) 血液中のGlypican-1を定量するELISAシステムの開発
独自に開発したGlypican-1に対する抗Glypican-1モノクローナル抗体を大量精製した。Biacoreシステムにより抗体の親和性解析を行った結果、いずれのクローンもKD値が3.0nM前後の抗体であることを明らかにした(国際出願PCT/JP2014/006455)。さらに、deletion mutant等を用いてエピトープ解析を行った結果、N末端を認識するクローンおよびC末端を認識するクローンをそれぞれ同定した。Glypican-1に対する親和性の高い抗体を用いて様々な組み合わせを検討し、サンドイッチELISAシステムの構築を試みた。血液中の可溶型Glypican-1を認識するにはN末端エピトープを認識する抗体を用いる必要があるが、N末端のエピトープを認識するモノクローナル抗体(#7と#19の組み合わせ)において、Glypican-1を定量できることが明らかにしておりH26年度の進達度を100%満たしている。現在、本ELISAシステムの高感度化すべく、抗体に修飾を加えるなど改良を行うことによりELISAシステムの最適化を行っている。
(2) 臨床検体の収集
本研究に同意を得られた患者より食道癌手術前の血清と免疫組織化学染色用の腫瘍組織標本がペアとなるような臨床検体を50例収集し、保存している。現在、臨床検体を継続して収集している段階であるが、平成26年度の進達度を100%満たしている。食道癌組織に対して免疫組織化学染色法によりGlypican-1の発現を確認し、スコア化した結果、Glypican-1高発現食道癌患者は低発現食道癌患者と比較して有意に予後不良で有ることを明らかにした(論文投稿準備中)。このことは、Glypican-1高発現食道癌患者に抗Glypican-1抗体による治療が奏功すると、食道癌の予後の改善が十分期待される。
平成27年度以降も臨床検体の収集を継続し、独自に開発したELISAシステムにて血液中Glypican-1濃度の測定と免疫組織化学染色法によるGlypican-1発現情報との相関解析に用いる。
独自に開発したGlypican-1に対する抗Glypican-1モノクローナル抗体を大量精製した。Biacoreシステムにより抗体の親和性解析を行った結果、いずれのクローンもKD値が3.0nM前後の抗体であることを明らかにした(国際出願PCT/JP2014/006455)。さらに、deletion mutant等を用いてエピトープ解析を行った結果、N末端を認識するクローンおよびC末端を認識するクローンをそれぞれ同定した。Glypican-1に対する親和性の高い抗体を用いて様々な組み合わせを検討し、サンドイッチELISAシステムの構築を試みた。血液中の可溶型Glypican-1を認識するにはN末端エピトープを認識する抗体を用いる必要があるが、N末端のエピトープを認識するモノクローナル抗体(#7と#19の組み合わせ)において、Glypican-1を定量できることが明らかにしておりH26年度の進達度を100%満たしている。現在、本ELISAシステムの高感度化すべく、抗体に修飾を加えるなど改良を行うことによりELISAシステムの最適化を行っている。
(2) 臨床検体の収集
本研究に同意を得られた患者より食道癌手術前の血清と免疫組織化学染色用の腫瘍組織標本がペアとなるような臨床検体を50例収集し、保存している。現在、臨床検体を継続して収集している段階であるが、平成26年度の進達度を100%満たしている。食道癌組織に対して免疫組織化学染色法によりGlypican-1の発現を確認し、スコア化した結果、Glypican-1高発現食道癌患者は低発現食道癌患者と比較して有意に予後不良で有ることを明らかにした(論文投稿準備中)。このことは、Glypican-1高発現食道癌患者に抗Glypican-1抗体による治療が奏功すると、食道癌の予後の改善が十分期待される。
平成27年度以降も臨床検体の収集を継続し、独自に開発したELISAシステムにて血液中Glypican-1濃度の測定と免疫組織化学染色法によるGlypican-1発現情報との相関解析に用いる。
結論
本年度において、独自に開発した抗Glypican-1抗体を用いた定量システムにより、血液中のGlypcain-1を定量できることが明らかとなった。本研究において収集した食道癌手術組織でのGlypican-1の発現量と血中の可溶性Glypican-1の発現量の相関を明らかにし、抗Glypican-1抗体の奏功性を予測するコンパニオン診断薬として利用することで医療の質の向上のみならず、医療費の削減に寄与できることが期待される。
公開日・更新日
公開日
2015-06-12
更新日
-