特定細胞加工物/再生医療等製品の品質確保に関する研究

文献情報

文献番号
201432013A
報告書区分
総括
研究課題名
特定細胞加工物/再生医療等製品の品質確保に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
新見 伸吾(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部)
研究分担者(所属機関)
  • 紀ノ岡 正博(大阪大学 生物化学工学)
  • 佐藤 陽治(国立医薬品食品衛生研究所 再生・細胞医療製品部/薬理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【委託費】 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特定細胞加工物/再生医療等製品(以下、細胞加工物等という)の製造工程における無菌性保証及び品質確保については未知・未経験の要素が多い。本研究においては、細胞加工物等について、無菌性保証及び工程等の微生物汚染リスク低減のあり方、変動要因を勘案した品質確保のあり方について、提言及び取り纏めを行い、運用教育の活用、細胞加工物等の実用化促進に貢献することを目的として検討を行っている。
研究方法
直接支援区域である操作室の給気口と排気口は共に天井部に設置されているので、給気口より供給された気流がどのように排気口に吸い込まれているかを調べるために、操作室内全体の気流可視化評価を行った。また、重要区域である安全キャビネット(BHC; Biohazard Cabinet)前面のシャッター開口部及び内部における気流の変化や、操作室からBHC内及びBHC内から操作室への空気の漏えいについても調べた。清浄度の評価は、非作業時、BHC停止条件の操作室において、風量と室圧を変化させて粒子濃度を測定した。また、着衣室に薄型クリーンユニット(ACP; Air Clean Partition)を設置し、故意に空中に粒子を拡散させ、着衣室のACPの使用及び不使用時における清浄度についても測定した。hiPS細胞はmTeSR1(STEMCELL Technologies社)を基礎培地としマトリゲル(Corning社)でコートされたディッシュを用いて継代培養した。iPS細胞からのゲノム抽出は、NucleoSpin Tissue(MACHEREY-NAGEL社)を用いて行った。iPS細胞を同調培養後固定して染色体標本を作製し、ヘキスト33258溶液及びキナクリンマスタード液に浸漬し蛍光で染色体画像を撮影した。hiPS細胞のゲノムDNAはExon(CDS)領域を濃縮し、次世代シーケンサーによるシーケンスを行った後に変異塩基を抽出した。さらに、CGHアレイを用いてシグナルデータを取得してコピーナンバー変異をリスト化する解析、SNPアレイを用いたゲノムタイピングを実施した。
結果と考察
無菌性保証のあり方について、全体会議を開催し、細胞加工物等における無菌操作法に対するガイドラインの趣旨、今後のあり方について意見交換を行った。本会議においてガイドライン作成に向けた体制及び準備がほぼ整った。細胞培養加工施設(CPF; Cell Processing Facility)の性能を評価した結果、操作室から BHC内及びBHC内から操作室への空気の漏洩は観察されなかった。着衣室にACPを設置し、故意に空中に粒子を拡散させ、ACPの使用及び不使用時における清浄度の回復度について検討した結果、ISOクラス7まで清浄度が回復するまでの時間は、ACPを用いない場合は2分ほどであったのに対し、ACPを用いると30秒以内であった。なお、風量・室圧を変化させて非作業時及びBHC停止条件における操作室の粒子清浄度を測定した結果、全条件においてISOクラス7で設定された規格値以内であった。操作室内全体の気流可視化評価では、給気口から直接排気口へ向かう気流はなく、その他のエリアでも目視にて確認できるような乱れた気流はなかった。以上の結果から、給気口から供給された気流は徐々に室内に拡散し、循環しながら排気口にて吸い込まれていると判断された。iPS細胞を約3か月間培養し、3継代毎に回収したゲノムは、濃度及び純度の品質検定で問題が無いと判断された。また、本ゲノムを用いて作成したライブラリーの品質も良好であると判断された。これらの結果から、調製したゲノムは、今後全エクソン解析、CGHマクロアレイ解析、ビーズアレイ解析に供することが可能であることが示された。また、18継代培養したiPS細胞の核型を解析した結果、大半の細胞において染色体が異常であることが示され、どの段階で異常が起こったかを検討することが今後の課題となった。
結論
再生医療等製品の無菌操作法に関するガイドライン作成を行うべく、各分野の専門家を集めた会議を立ち上げた。CPFにおいて、風量・換気回数、空間差圧の様々な条件検討や気流可視化試験、清浄度検証などを行った。今後は、本CPFにて無菌性保証及び工程等の微生物汚染リスク低減のあり方を提言するための諸実験計画を進めていきたいと考えている。フィーダーフリーの培養環境下で長期間(18継代)培養されたiPS細胞において、核型異常のある細胞が出現した。高品質のシーケンスライブラリーを作製することができ、すべての検体において50Gb相当のシーケンスを読むことができた。したがって、得られたライブラリーは今後解析を行う上で十分な品質を有していると結論された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201432013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
細胞加工物等の無菌操作環境におけるリスク評価として、直接支援区域、無菌操作区域、重要区域における微生物汚染の影響を実験により確認した。細胞加工物等の品質評価法として、iPS細胞の培養維持期における一塩基変異の変動について検討を行い、蓄積、消失、頻度が一定のパターンに分類できることを明らかにした。
臨床的観点からの成果
細胞加工物等に存在する可能性のある造腫瘍性形質転換細胞について、ハイコンテントイメージングシステムとデジタル軟寒天コロニー形成試験を組み合わせることにより従来の軟寒天コロニー形成試験に比べて1万倍高感度でハイスループットな検出法を開発した。
ガイドライン等の開発
再生医療等製品製造における無菌操作のあり方について、「無菌操作法による無菌医薬品の製造に関する指針」(平成22年度厚生労働科学研究)と対比させ文章を作成することで、無菌医薬品製造との違いを明瞭に、ガイドライン(案)の原案に相当する考え方をまとめた。
その他行政的観点からの成果
再生医療等製品の無菌操作法に則したガイドラインは世界に例がなく、ガイドライン(案)の作成が終了し、行政側により査読及びパブコメ等を経てガイドラインとして厚労省より公表されると、日本における開発者の指針となると共に世界標準となることが期待される。
その他のインパクト
細胞加工物等に存在する可能性のある造腫瘍性形質転換細胞を高感度及びハイスループットに検出する方法の開発については、iPS細胞を使った再生医療の臨床研究における安全性を高める可能性のある研究成果として、2016年3月4日NHKニュースおはよう日本で紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
9件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
20件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
悪性形質転換細胞の検出方法
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2014-176861
発明者名: 草川森士、安田智、佐藤陽治
権利者名: 公益財団法人ヒューマンサイエンス振興財団
出願年月日: 20150901
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
2017-06-19

収支報告書

文献番号
201432013Z