文献情報
文献番号
201432001A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科再生医療拠点を活用した歯周組織再生療法の確立
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
村上 伸也(大阪大学 大学院歯学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 澤 芳樹(大阪大学 大学院医学系研究科)
- 李 千萬(大阪大学 医学部附属病院)
- 北村 正博(大阪大学 大学院歯学研究科)
- 山田 聡(大阪大学 歯学部附属病院)
- 野崎 剛徳(大阪大学 大学院歯学研究科)
- 北垣 次郎太(大阪大学 歯学部附属病院)
- 竹立 匡秀(大阪大学 大学院歯学研究科)
- 早川 堯夫(近畿大学 薬学総合研究所)
- 山本 紘司(大阪大学 医学部附属病院)
- 梅澤 明弘(国立成育医療研究センター研究所 再生医療センター)
- 齋藤 正寛(東北大学 大学院歯学研究科)
- 大倉 華雪(医薬基盤研究所 難治性疾患治療開発・支援室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【委託費】 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
36,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、ヒト幹細胞臨床研究「自己脂肪組織由来幹細胞(ADSC)を用いた新しい歯周組織再生療法開発」を遂行し、その安全性・有効性(適応症例の判断を含む)を慎重に評価し、新規歯周組織再生療法の開発を目指すものである。平成26年度は、安定的に試験物を作製するためのプロトコールを確立するとともに、同プロトコールを用いてADSC移植による新規歯周組織再生療法の臨床研究を遂行し、症例を集積することを目的とした。加えてADSCの歯周組織再生効果を増強させる方法の探索を目指し、ADSC移植による歯周組織再生過程における分子機序のさらなる解明を試みた。
研究方法
(1)ADSC培養方法の検討
ウシ胎仔由来血清(FCS)を用いたADSCの培養が試験物の品質および安全性に及ぼす影響について検討を行った。すなわち、ADSCの培養培地に用いる血清を被験者由来血清あるいはFCSとし、ADSCの増殖能や細胞形態、細胞表面抗原の発現に及ぼす影響について比較検討を行った。さらに、試験物へのFCS成分の混入を可及的に除去・低減するために、細胞の遠心洗浄回数について検討を行った。
(2)ADSCを用いた新規歯周組織再生療法の臨床研究の遂行
大阪大学歯学部附属病院口腔治療・歯周科にて歯周基本治療を終了し歯周組織再生療法の適応と判断された歯周病患者を対象とした。研究参加の同意を取得した後、同病院内近未来歯科医療センターにて腹部より皮下脂肪組織を採取した。同センター内に設置された細胞培養加工施設内にてADSCを単離、培養し、フィブリンゲルを足場材とし試験物を作製、同センター内にて歯槽骨欠損部に自己移植を行った。その後、全身所見や口腔内所見に加え各種臨床検査を実施することにより安全性、有効性の評価を行った。
(3)試験物改良への取り組み
ADSCの歯周組織再生効果の増強法の探索を目指し、ADSC移植による歯周組織再生過程における分子機序をさらに解明するために、本年度はADSCが分泌する液性因子が歯根膜細胞の硬組織形成細胞への分化を制御するか否かについて検討した。すなわち、ADSCの培養上清(ADSC-CM)を回収し、同培養上清をヒト歯根膜細胞の硬組織形成細胞への分化過程に添加し、アルカリフォスファターゼ活性および石灰化ノジュール形成を指標として解析を行った。さらに、ADSC-CM中に含まれる増殖因子について同定し、それらの歯根膜細胞の分化制御に及ぼす影響について検討を加えた。
ウシ胎仔由来血清(FCS)を用いたADSCの培養が試験物の品質および安全性に及ぼす影響について検討を行った。すなわち、ADSCの培養培地に用いる血清を被験者由来血清あるいはFCSとし、ADSCの増殖能や細胞形態、細胞表面抗原の発現に及ぼす影響について比較検討を行った。さらに、試験物へのFCS成分の混入を可及的に除去・低減するために、細胞の遠心洗浄回数について検討を行った。
(2)ADSCを用いた新規歯周組織再生療法の臨床研究の遂行
大阪大学歯学部附属病院口腔治療・歯周科にて歯周基本治療を終了し歯周組織再生療法の適応と判断された歯周病患者を対象とした。研究参加の同意を取得した後、同病院内近未来歯科医療センターにて腹部より皮下脂肪組織を採取した。同センター内に設置された細胞培養加工施設内にてADSCを単離、培養し、フィブリンゲルを足場材とし試験物を作製、同センター内にて歯槽骨欠損部に自己移植を行った。その後、全身所見や口腔内所見に加え各種臨床検査を実施することにより安全性、有効性の評価を行った。
(3)試験物改良への取り組み
ADSCの歯周組織再生効果の増強法の探索を目指し、ADSC移植による歯周組織再生過程における分子機序をさらに解明するために、本年度はADSCが分泌する液性因子が歯根膜細胞の硬組織形成細胞への分化を制御するか否かについて検討した。すなわち、ADSCの培養上清(ADSC-CM)を回収し、同培養上清をヒト歯根膜細胞の硬組織形成細胞への分化過程に添加し、アルカリフォスファターゼ活性および石灰化ノジュール形成を指標として解析を行った。さらに、ADSC-CM中に含まれる増殖因子について同定し、それらの歯根膜細胞の分化制御に及ぼす影響について検討を加えた。
結果と考察
(1)ADSC培養方法の検討
被験者由来自己血清あるいはFCS存在下にて培養した際のADSC細胞形態を観察するとともに、細胞増殖について検討した結果、FCS存在下での培養では紡錘形の細胞形態を示すとともに、より安定的にADSCの増殖が認められた。なお、純度の低下は認められなかった。次にFCSを用いてADSCを培養した際の、FCS成分の試験物への混入を可及的に除去・低減するために、細胞の洗浄回数について検討を行った結果、3回の遠心洗浄にて洗浄液中のBSA濃度が5ng/ml未満に低減できることが明らかとなった。以上の結果に基づいて、ADSCの培養工程に用いる血清の被験者由来自己血清からFCSへと変更と、試験物作製に際しての細胞の洗浄回数の変更について、ヒト幹細胞臨床研究のプロトコール変更申請を行い、変更許可を得た。
(2)ADSCを用いた新規歯周組織再生療法の臨床研究の遂行
一名の被験者の歯周組織欠損部にADSC・フィブリンゲル複合体を移植した。移植4週後までの観察で、試験物の移植が原因で発生したと考えられる有害事象は発生していない。
(3)試験物改良への取り組み
ADSC-CMの添加によりヒト歯根膜細胞の分化誘導過程におけるアルカリフォスファターゼ活性の有意な上昇に加え、石灰化ノジュール形成の亢進を観察した。次に、ADSC-CM内に含まれる増殖因子について検討したところ、IGFBP6、VEGF、HGF等が含まれていることが明らかとなった。そこで、これまで歯根膜細胞に対する作用が十分に検討されていなかったIGFBP6に着目し、検討を行ったところ、ADSC-CMによる歯根膜細胞の分化促進作用に同分子が関与していることが明らかとなった。
被験者由来自己血清あるいはFCS存在下にて培養した際のADSC細胞形態を観察するとともに、細胞増殖について検討した結果、FCS存在下での培養では紡錘形の細胞形態を示すとともに、より安定的にADSCの増殖が認められた。なお、純度の低下は認められなかった。次にFCSを用いてADSCを培養した際の、FCS成分の試験物への混入を可及的に除去・低減するために、細胞の洗浄回数について検討を行った結果、3回の遠心洗浄にて洗浄液中のBSA濃度が5ng/ml未満に低減できることが明らかとなった。以上の結果に基づいて、ADSCの培養工程に用いる血清の被験者由来自己血清からFCSへと変更と、試験物作製に際しての細胞の洗浄回数の変更について、ヒト幹細胞臨床研究のプロトコール変更申請を行い、変更許可を得た。
(2)ADSCを用いた新規歯周組織再生療法の臨床研究の遂行
一名の被験者の歯周組織欠損部にADSC・フィブリンゲル複合体を移植した。移植4週後までの観察で、試験物の移植が原因で発生したと考えられる有害事象は発生していない。
(3)試験物改良への取り組み
ADSC-CMの添加によりヒト歯根膜細胞の分化誘導過程におけるアルカリフォスファターゼ活性の有意な上昇に加え、石灰化ノジュール形成の亢進を観察した。次に、ADSC-CM内に含まれる増殖因子について検討したところ、IGFBP6、VEGF、HGF等が含まれていることが明らかとなった。そこで、これまで歯根膜細胞に対する作用が十分に検討されていなかったIGFBP6に着目し、検討を行ったところ、ADSC-CMによる歯根膜細胞の分化促進作用に同分子が関与していることが明らかとなった。
結論
1. ADSCの培養に用いる血清をFCSとすることにより、より安定的に試験物を作製できることが明らかとなった。
2. 移植一例目の被験者においては、ADSCボルヒール複合体の歯周組織への移植後4週までに移植に関連すると考えられる有害事象は認められなかった。
3. ADSC移植による歯周組織再生の分子機序にADSC由来液性因子中に含まれるIGFBP6が関与する可能性が明らかとなった。
2. 移植一例目の被験者においては、ADSCボルヒール複合体の歯周組織への移植後4週までに移植に関連すると考えられる有害事象は認められなかった。
3. ADSC移植による歯周組織再生の分子機序にADSC由来液性因子中に含まれるIGFBP6が関与する可能性が明らかとなった。
公開日・更新日
公開日
2015-06-01
更新日
-