地方自治体が行う保健事業の外部委託において、事業の質を確保するための方策に関する研究

文献情報

文献番号
201429026A
報告書区分
総括
研究課題名
地方自治体が行う保健事業の外部委託において、事業の質を確保するための方策に関する研究
課題番号
H25-健危-指定-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
森 晃爾(産業医科大学 産業生態科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 曽根智史(国立保健医療科学院)
  • 鳩野洋子(九州大学大学院 医学研究院保健学部門)
  • 柴田喜幸(産業医科大学 産業医実務研修センター)
  • 永田昌子(産業医科大学 産業医実務研修センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
4,080,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地方自治体が実施する保健事業において、多くの保健事業が外部委託されている。保健事業を外部に委託する際、事業の質を保つためには、企画、実施、評価、見直し全体の流れの中で、保健事業に関する知識を持つ保健師等の保健専門職が関与し、適切な対応をしていくことが必要である。そこで、保健専門職が関与して、委託の判断、委託先の選定、委託先の実施管理、委託先の見直しを行うことによって保健事業全体の水準を向上させるためのガイドを作成することを目的とした。
研究方法
1)前年度に引き続き、機縁法で選出した3自治体に対して好事例調査を行った。
2)前年度に1,738自治体の統括的立場の保健師宛に回答を対象に実施した郵送法による実態調査の実施・分析を行った。
3)好事例調査および実態調査の結果をもとに、委託元である自治体の保健師等の保健医療専門職が行うべきマネジメント項目を整理してチェックリストを作成した。
4)マネジメント項目とその解説を盛り込んだ「地方自治体における保健事業の外部委託実践ガイド」を作成した。ガイドの作成は、研究班で作成したガイド案をもとに構成や内容についてグループディスカッションで聞き取り調査を実施し、聴取された意見をもとに再度研究班で検討し完成とした。
5)外部委託の良好実践事例としてヒアリングを行った自治体の担当者4名、過去、自治体に所属していた際に外部委託を行った経験を有する有識者1名の計5名を調査対象としてグループインタビューを実施し、その結果をもとに、外部委託を含めた保健事業の質の向上に貢献する上で必要な保健専門職の資質を検討した。
結果と考察
1)好事例調査では、プロポーザル方式での業者選定のための評価基準をより客観的なものに改善したり、介護二次予防プログラムの最終カンファレンスに市の保健師が積極的関わり改善点を把握したりしていた中規模の自治体や、限られた事業者を当初は自治体が中心に事業を開始して徐々に外部委託の範囲を増やしながら事業者を育てている小規模の自治体の事例などが収集された。 
2)951通の回答を分析対象とした(有効回答率54.7%)結果、外部委託の多い事業と委託種別の実態が明らかになった。また、現在および今後の委託について、「実施できていないものがある」の理由として、「質の高い委託先がない」「委託金額が高い」が多かった。また、併せて質の高い委託のためのプロセスの展開状況を調査したところ、委託のマネジメント実施状況について、全般的に委託事業が開始される前までは委託事業との関わりを持っていたが、モニタリング段階、評価の段階と進むごとに関わりが薄くなっている状況が見られた。また、自由回答で様々な困りごとについての情報が得られた。
3)良好事例調査および実態調査の結果等をもとに、質の高い外部委託を行うために、委託元である自治体の保健師等の保健医療専門職が行うべきマネジメント項目を整理し、「委託の検討および決定」7項目、「委託方法・委託先の検討」6項目、「仕様書・契約書の作成」3項目、「契約締結から事業開始までの委託先との調整」4項目、「契約締結から事業開始までの自治体内での準備」3項目、「委託事業者によるサービス提供期のモニタリング」4項目、「委託事業者によるサービス提供終了時の評価」6項目、「体制」5項目からなるチェックリストを作成した。
4)研究全体の最終的な成果物として、保健事業の質を確保し、事業全体の目的を達成するために、自治体保健医療専門職が理解しておくべき事項、実施することが望ましい「マネジメント項目」のチェックリストと説明、良好実践事例を盛り込んだ「地方自治体における保健事業の外部委託実践ガイド」を作成した。
5)質の高い外部委託を行うために委託元である自治体の保健専門職が備えるべきコンピテンシーについて外部委託の良好実践事例としてヒアリングを行った自治体の担当者等にグループインタビューを実施した結果、ガイドで示された外部委託のプロセスにおいて保健専門職が役割を果たすために必要なコンピテンシーとして8項目が抽出された。また、中堅期、管理期の保健専門職を対象とした保健活動のPDCAを扱う既存の研修にコンピテンシーを身につけるための講義・演習を組み込むことが効率的かつ効果的であると考えられた。
結論
自治体における地域のニーズに合った外部委託が適切に行われ、保健事業の成果を上げるためには、いくつかの支援が必要と考えられた。そのうち、本研究班では、「地方自治体における保健事業の外部委託実践ガイド」の作成を行うとともに、外部委託に主体的に関与できる保健専門職に必要なコンピテンシーを抽出した。今後、ガイド等の成果物が活用されるとともに、保健専門職の資質向上のための研修が行われることが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2015-10-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-10-22
更新日
-

文献情報

文献番号
201429026B
報告書区分
総合
研究課題名
地方自治体が行う保健事業の外部委託において、事業の質を確保するための方策に関する研究
課題番号
H25-健危-指定-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
森 晃爾(産業医科大学 産業生態科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 曽根智史(国立保健医療科学院)
  • 鳩野洋子(九州大学大学院 医学研究院保健学部門)
  • 柴田喜幸(産業医科大学 産業医実務研修センター)
  • 永田昌子(産業医科大学 産業医実務研修センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地方自治体が実施する保健事業において、多くの保健事業が外部委託されている。保健事業を外部に委託する際、事業の質を保つためには、企画、実施、評価、見直し全体の流れの中で、保健事業に関する知識を持つ保健師等の保健専門職が関与し、適切な対応をしていくことが必要である。そこで、そのような流れの中で、保健専門職が関与して、委託の判断、委託先の選定、委託先の実施管理、委託先の見直しを行うことによって保健事業全体の水準を向上させるためのガイドを作成することを目的に調査研究を行うことにした。
研究方法
1)機縁法で選出した9自治体に対して好事例調査を行った。
2)前年度に1,738自治体の統括的立場の保健師宛に回答を対象に実施した郵送法による実態調査の実施・分析を行った。
3)好事例調査および実態調査の結果をもとに、委託元である自治体の保健師等の保健医療専門職が行うべきマネジメント項目を整理してチェックリストを作成した。
4)マネジメント項目とその解説を盛り込んだ「地方自治体における保健事業の外部委託実践ガイド」を作成した。ガイドの作成は、研究班で作成したガイド案をもとに構成や内容についてグループディスカッションで聞き取り調査を実施し、聴取された意見をもとに再度研究班で検討し完成とした。
5)外部委託の良好実践事例としてヒアリングを行った自治体の担当者4名、過去、自治体に所属していた際に外部委託を行った経験を有する有識者1名の計5名を調査対象としてグループインタビューを実施し、その結果をもとに、外部委託を含めた保健事業の質の向上に貢献する上で必要な保健専門職の資質を検討した。
結果と考察
1)9自治体のうち、2自治体が一般競争入札方式で、7自治体が随意契約方式で外部事業者を選定していた。良好な事例として、外部委託前に自治体内で委託事業の詳細なマニュアルを作成し、それに基づいた競争入札時の仕様書の作成を事務職と協働して行っていた事例、限られた外部事業者を育成するような姿勢で積極的に関わっている事例などが収集された。 
2)951通の回答を分析対象とした(有効回答率54.7%)結果、外部委託の多い事業と委託種別の実態が明らかになった。また、現在および今後の委託について、「実施できていないものがある」の理由として、「質の高い委託先がない」「委託金額が高い」が多かった。また、併せて質の高い委託のためのプロセスの展開状況を調査したところ、委託のマネジメント実施状況について、全般的に委託事業が開始される前までは委託事業との関わりを持っていたが、モニタリング段階、評価の段階と進むごとに関わりが薄くなっている状況が見られた。また、自由回答で様々な困りごとについての情報が得られた。
3)良好事例調査および実態調査の結果等をもとに、質の高い外部委託を行うために、委託元である自治体の保健師等の保健医療専門職が行うべきマネジメント項目を整理し、「委託の検討および決定」7項目、「委託方法・委託先の検討」6項目、「仕様書・契約書の作成」3項目、「契約締結から事業開始までの委託先との調整」4項目、「契約締結から事業開始までの自治体内での準備」3項目、「委託事業者によるサービス提供期のモニタリング」4項目、「委託事業者によるサービス提供終了時の評価」6項目、「体制」5項目からなるチェックリストを作成した。
4)研究全体の最終的な成果物として、保健事業の質を確保し、事業全体の目的を達成するために、自治体保健医療専門職が理解しておくべき事項、実施することが望ましい「マネジメント項目」のチェックリストと説明、良好実践事例を盛り込んだ「地方自治体における保健事業の外部委託実践ガイド」を作成した。
5)質の高い外部委託を行うために委託元である自治体の保健専門職が備えるべきコンピテンシーについて外部委託の良好実践事例としてヒアリングを行った自治体の担当者等にグループインタビューを実施した結果、ガイドで示された外部委託のプロセスにおいて保健専門職が役割を果たすために必要なコンピテンシーとして8項目が抽出された。また、中堅期、管理期の保健専門職を対象とした保健活動のPDCAを扱う既存の研修にコンピテンシーを身につけるための講義・演習を組み込むことが効率的かつ効果的であると考えられた。
結論
自治体における地域のニーズに合った外部委託が適切に行われ、保健事業の成果を上げるためには、いくつかの支援が必要と考えられた。そのうち、本研究班では、「地方自治体における保健事業の外部委託実践ガイド」の作成および外部委託に主体的に関与できる保健専門職に必要なコンピテンシーを抽出した。今後、ガイド等の成果物が活用されるとともに、保健専門職の資質向上のための研修が行われることが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2015-10-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

総合研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-10-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201429026C

成果

専門的・学術的観点からの成果
特記事項なし
臨床的観点からの成果
特記事項なし
ガイドライン等の開発
特記事項なし
その他行政的観点からの成果
日本健康会議民間事業者活用WGにおいて、研究成果の趣旨を活用した。
その他のインパクト
公衆衛生看護学会でシンポジウム開催

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-10-22
更新日
2017-06-23

収支報告書

文献番号
201429026Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,300,000円
(2)補助金確定額
5,300,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 240,210円
人件費・謝金 1,193,655円
旅費 984,560円
その他 1,661,575円
間接経費 1,220,000円
合計 5,300,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-10-21
更新日
-