効果的な熱中症予防のための医学的情報等の収集・評価体制構築に関する研究

文献情報

文献番号
201429025A
報告書区分
総括
研究課題名
効果的な熱中症予防のための医学的情報等の収集・評価体制構築に関する研究
課題番号
H24-健危-指定-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
三宅 康史(昭和大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 横田 裕行(日本医科大学大学院 侵襲生体管理学)
  • 鶴田 良介(国立大学法人山口大学大学院 医学系研究科 救急・生体侵襲制御医学分野)
  • 北原 孝雄(横浜旭中央総合病院 脳血管センター)
  • 登内 道彦((財)気象業務支援センター 振興部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
7,280,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
3年の研究期間の最終年となる平成26年度の目標は、①2012年(平成24年度)に行った全国調査Heatstroke を参考として、2014年(平成26年度)に3種類のHeatstroke STUDY(Heatstroke STUDY2014、Heatstroke Fax2014、Heatstroke Advanced2014)を行い、本邦における全国的な熱中症の実態調査を、コスト面を含め継続的に可能とする情報収集システムの構築、②混乱している熱中症の診断分類、重症度分類の見直しと、国際基準とし照らし合わせた整合性の検討の最終決定、③①、②を生かした臨床現場で役立つ熱中症の診断と診療に関するガイドラインの完成、④診断や治療に寄与する分子マーカーを同定するための詳細な観察研究調査の実施とその結果の確定、⑤Heatstroke Fax 2014から公開された前日の熱中症患者の発生数、性別、年齢、重症度。発生場所などの情報から、正確な熱中症注意報発令を可能とするための気象予報と連動した成果の確定である。
研究方法
本邦における熱中症の実態を把握するために、医療機関にほぼ100%設置されているFAXを用いた熱中症の症例登録を2012年の夏季30日間、2013年夏季3か月間にわたって行い、その問題点や改善点を検討した上で、最終年の2014年夏季3か月間、改めて全国の救急医療機関に依頼した上で熱中症症例の診察後に、入院例に限りA4版1枚の前もって作成されたデータシートに年齢、性別、重症度、発生地域などをチェック方式で記入し、当日24時までにFAXし、結果を翌日午前までに集計、午後には厚生労働省の熱中症情報のHPに掲載できる手法を将来にわたって継続的に行えるようなすステムを確立する。
また2014年夏期3ヵ月間の第5回目の日本救急医学会熱中症に関する委員会が主導する全国的な熱中症症例の詳細な疫学調査を行う。その際、前年冬の低体温症の全国実態調査でも用いて安全性、利便性に優れた症例データのweb登録システムを採用する。
その症例の中で、診断、重症度予測に寄与する分子マーカーとしてエンドトキシン、トロンボモジュリン採血の承諾を得られた症例について、その関連を検討する。
新たな熱中症の診断・重症度分類とガイドラインの策定については、原則としてPubMedを用いて、過去20年間の系統的な文献検索を行い、特に重要と思われる文献を抽出し、既存の教科書および参考書、uptodateなどのweb上のデータベースを参考にした検索ワードを用いて、包括的に文献を検索し、重症度、診断分類と診療ガイドラインを完成させる。
環境省熱中症予防情報サイトから全国の平均WBGT、総務省消防庁の救急車熱中症患者搬送数、厚生労働省の熱中症患者の即時発生状況、気象庁を含む気象情報を統合し、翌日の熱中症患者の発生危険性を予測し、危険情報を発信できるシステム開発を試みる。
結果と考察
Heatstroek STUDY2014、Heatstroek FAX2014、Heatstroke Advanced2014の結果、新たな重症度分類・診断基準、診療ガイドラインの策定、診断と予後予測に効果的な分子マーカーの発見に関しては、各分担研究者による報告を参照いただきたい。

地球温暖化、急速な高齢化と孤立化の進行により、本邦における熱中症症例が急増している。日本救急医学会「熱中症に関する委員会」が2006年より隔年で実施してきた救急医療機関における熱中症症例の集積とその分析調査をベースとして、①熱中症の入院症例をFAXにより登録し実態を早期に把握することで即時登録のシステムの構築と早期の熱中症警報の発令に寄与するための研究、②2014年の熱中症症例の詳細登録をweb上で行うための準備、③これまでの疫学調査の分析結果をもとにした新たな診断基準と重症度分類の策定、④それに寄与する分子マーカーの発見、⑤過去の熱中症に関する基礎、臨床双方の文献を検索し、エビデンスレベルを設定したうえで推奨度を分けて標準的な治療法を記した本邦初のガイドラインの策定、⑥即時登録と他の機関が実施している熱中症症例登録および地域の天気予報を突合し、短期的な熱中症発生危険度の予測手法の確立に向けての比較検討、⑦臨床研究全体のまとめと自己評価が3年目の課題である。


結論
今後もこのような研究を継続し、持続できる症例登録の手法を確立することで、熱中症そのものの病態把握、診断能力の向上、予防・応急処置、治療などへの寄与が十分見込まれる。

公開日・更新日

公開日
2015-10-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201429025B
報告書区分
総合
研究課題名
効果的な熱中症予防のための医学的情報等の収集・評価体制構築に関する研究
課題番号
H24-健危-指定-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
三宅 康史(昭和大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 横田 裕行(日本医科大学大学院 侵襲生体管理学)
  • 鶴田 良介(国立大学法人山口大学大学院 医学系研究科 救急・生体侵襲制御医学分野)
  • 北原 孝雄(横浜旭中央総合病院 脳血管センター)
  • 登内 道彦((株)気象業務支援センター 振興部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成24年度より3年間をかけて、①熱中症の入院症例をFAXにより登録し、実態を早期に把握することによる即時登録のシステムの構築と早期の熱中症警報の発令に寄与するための研究、②一定以上の重症度を持つ熱中症症例の詳細データの登録をweb上で簡便・正確・安価・安全に行うためのシステム構築、③国際的に通用する重症度分類(診断基準)の策定、④それらに寄与する分子マーカーの発見、⑤過去の国内外の熱中症に関する臨床医学文献を検索し、エビデンスレベルを設定したうえで推奨度を分けて標準的な診療法を記した本邦初のガイドラインの策定、⑥即時登録と他の機関が実施している熱中症症例登録および地域の天気予報を突合し、短期的な熱中症発生危険度の予測手法の確立に向けての比較に関する研究を行うことを目標とする。
研究方法
①本邦における熱中症の実態を早期に把握するために、医療機関にほぼ100%設置されているFAXを用いた熱中症の入院当日の症例登録を2012年の夏季30日間、2013年夏季3か月間、2014年夏季3か月間にわたり3回実施し、その問題点や改善点を検討し、翌日午後には厚生労働省の熱中症情報のHPに結果を掲載できる手法を、将来にわたって継続的に行えるようなシステムを確立する。
②2012年夏季3か月、2014年夏期3ヵ月間の2回の全国的な熱中症症例の詳細な疫学調査を行う(Heatstroke STUDY2012,2014)。2012年は紙ベースのデータシートを採用し、2014年はweb登録システムを採用し、そのコスト、手間、利便性を比較検討するとともに、そのデータ分析の結果を段階的に公開し、今後の熱中症診療に生かす。
③欧米で広く使用されている診断基準、重症度分類と、本邦独自の熱中症診断分類を、これまでの全国調査の結果を基に比較検討し、最適な重症度分類・診断基準を策定する。加えて国際的に発信できるように英語バージョンを作り、HPにて公開する。
④熱中症に関する『診療ガイドライン』を策定する。PubMedを用いて、過去10年間の系統的な文献検索を行い、その中から特に重要と思われる文献を抽出し、既存の教科書および参考書、uptodateなどのweb上のデータベースを参考にした検索ワードを用いて、包括的に文献を検索し、それらをエビデンスレベル別に分類し、推奨度を二段階で設定した上で、それを基に診療ガイドラインを完成させる。
④これまでの2012年、2014年の2回の詳細調査に加え、2014年は参加各医療機関の中で特に倫理委員会の承諾を得た施設におい、診断、重症度、予後予測に寄与する分子マーカーとしてエンドトキシン、トロンボモジュリン採血を行いHheatstroke Advanced2014)、そのデータを加えて、分子マーカーとしての重要性を検討し、今後の実診療、診断基準や重症度分類、ガイドライン作成に反映する。
⑤①で行っているFAXを用いたHeatstroke Fax2014厚生労働省の熱中症患者の即時発生状況に、環境省熱中症予防情報サイトから全国の平均WBGT、気象庁を含む気象情報を統合し、翌日の熱中症患者の発生危険性を予測し、危険情報を発信できるシステム開発を試みる。
結果と考察
日本救急医学会「熱中症に関する委員会」が平成18年より2年おきに実施してきた全国の救急医療機関における熱中症症例の集積とその分析調査をベースとして、平成24年度より3年間をかけて、①全国救急医療機関の熱中症入院症例のデータをFAXにより登録し、実態を早期に把握することによる即時登録のシステム構築と早期の熱中症警報の発令に寄与するための研究、②一定以上の重症度を持つ熱中症症例の詳細データの登録をweb上で簡便・正確・安価に行うためのシステム構築、③国際的に通用する重症度分類(診断基準)の策定、④それらに寄与する分子マーカーの発見、⑤過去の国内外の熱中症に関する臨床的な文献を検索し、エビデンスレベルを設定したうえで推奨度を分けて標準的な治療法を記した本邦初のガイドラインの策定、⑥即時登録と他の機関が実施している熱中症症例登録および地域の天気予報を突合し、短期的な熱中症発生危険度の予測手法の確立に向けての比較に関する研究を行った。

結論
重症例のデータを中心に収集することは、熱中症の診断基準、重症度分類、治療ガイドラインの正確な策定・改訂につながると思われる。診断根拠となる分子マーカー、重症度分類の鍵となるバイタルサインや採血結果などの病態を把握し、治療ガイドラインの根拠となりうるエビデンスの蓄積は今後も必要である。

公開日・更新日

公開日
2015-10-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201429025C

成果

専門的・学術的観点からの成果
一定以上の重症度を持つ熱中症症例の詳細データの登録をweb上で簡便・正確・安価に行うためのシステム構築
国際的に通用する重症度分類(診断基準)の策定
それらに寄与する分子マーカーの発見
臨床的観点からの成果
全国救急医療機関の熱中症入院症例のデータをFAXにより登録し、実態を早期に把握することによる即時登録のシステム構築と早期の熱中症警報の発令に寄与するための研究
過去の国内外の熱中症に関する臨床的な文献を検索し、エビデンスレベルを設定したうえで推奨度を分けて標準的な治療法を記した本邦初のガイドラインの策定
ガイドライン等の開発
過去の国内外の熱中症に関する臨床的な文献を検索し、エビデンスレベルを設定したうえで推奨度を分けて標準的な治療法を記した本邦初のガイドラインの策定
その他行政的観点からの成果
即時登録と他の機関が実施している熱中症症例登録および地域の天気予報を突合し、短期的な熱中症発生危険度の予測手法の確立
その他のインパクト
今回策定した熱中症診療ガイドラインに関しては、2015年3月の発行以来、各大手新聞、医療系雑誌で紹介記事が掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
1件
熱中症重症度スコアと予後の関係(ICUとCCU38(6);411-417,2014
原著論文(英文等)
1件
Crit Care Med41;11,2013
その他論文(和文)
19件
その他論文(英文等)
1件
JMAJ56(3);1-7,2013
学会発表(国内学会)
12件
日本救急医学会総会2013,2014 日本集中治療医学会総会2013,2014 日本臨床救急医学会総会2013,2014
学会発表(国際学会等)
3件
SCCM2013,2014 ACEM2013
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-10-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201429025Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
8,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,388,258円
人件費・謝金 601,398円
旅費 454,440円
その他 3,849,559円
間接経費 720,000円
合計 8,013,655円

備考

備考
自己資金 13,655円

公開日・更新日

公開日
2015-10-21
更新日
-