自家用水道の災害時の活用および管理水準の向上に関する研究

文献情報

文献番号
201429020A
報告書区分
総括
研究課題名
自家用水道の災害時の活用および管理水準の向上に関する研究
課題番号
H26-健危-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
早川 哲夫(一般社団法人全国給水衛生検査協会)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤武(一般財団法人 東京顕微鏡院)
  • 奥村明雄(一般社団法人全国給水衛生検査協会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
2,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、貯水槽水道の適切な管理を図るため、貯水槽水道データの一元的な把握、設置者、管理者の管理へのインセンティブを高める手法、適切な管理項目の拡大に関し研究を行うとともに、大震災時の暫定的な対応としての貯水槽水道及び飲用井戸の施設管理基準等を設定し、民間施設を個別に利用することを可能とするシステムを構築することを目的とする。
研究方法
本研究は、3年計画で行われる。
初年度は、
・東日本大震災をはじめとする、これまでの災害時において貯水槽水道や飲用井戸の活用状況を調べるとともに、その際の課題についてデータ収集を行う。
・貯水槽水道や災害時に一般に提供されることになっている個人所有の飲用井戸の数、所在場所の確認、適切な管理のあり方について各都道府県、市町村に対し、アンケート調査を行うことによりその実情を把握する。また登録検査機関、貯水槽の清掃事業者、貯水槽の装置メーカ等による設置者、管理者への普及啓発活動についてアンケートによりその実情を把握する。
・さらに、今後大震災の発生する恐れのある東海、東南海、南海地域の都府県の貯水槽水道の耐震性能、保有水量、水質や、飲用井戸の耐震性や水質を調査する。
2年度は、
・施設の数などのアンケート調査結果について解析等を行うとともに、対策のあり方について研究する。また東海、東南海、南海地域の都府県の貯水槽水道の耐震性能、保有水量、水質や、飲用井戸の耐震性や水質についての調査を継続する。
さらに、震災時の貯水槽、飲用井戸の活用に関する指針作成状況等をアンケート調査により、把握する。また災害時の避難所などになる可能性のある貯水槽の管理の在り方や、民間マンションの貯水槽水の災害時の活用方法について研究し、官民の連携した水供給システムについて検討する。
3年度は、貯水槽水道や飲用井戸の適切な管理方法及び震災時の円滑な活用に関する今後の指導指針のあり方について取りまとめる。また災害時の供給水の水質には特に弱者に対する配慮が必要であり、貯水槽水道の耐震性能、保有水量、水質や、飲用井戸の耐震性や水質についての調査を継続するとともに、被災弱者対応のために管理すべき水質検査項目の拡大についても研究し取りまとめる。
本研究は、一般社団法人全国給水衛生検査協会参与の早川哲夫を主任研究者とし、一般財団法人 東京顕微鏡院理事 伊藤武、一般社団法人全国給水衛生検査協会会長の奥村明雄を分担研究者として実施する。
これら研究者のもとに、専門家による委員会を設置して研究を行う。
委員会は特に東日本大震災において被災地での貯水槽の被害と貯水槽水の活用状況について現地で調査を行った、日本給水タンク工業会、一般社団法人全国給水衛生検査協会の専門家に加え、(公益社団法人)全国建築物飲料水管理協会、(公益社団法人)日本水道協会、東京都衛生局、東京都水道局、からの専門家により構成される。また必要に応じて災害対策の専門家にも協力を求める。

結果と考察
震災時においては、水道が遮断され、一定期間復旧されない事態が生ずる。その際には、応急給水をどうするかが課題となる。過去の震災時には、貯水槽水道や飲用井戸がこの間、一定の役割を果たしてきたことが今回研究の文献調査等で明らかになった。その際には、貯水槽等の適切な管理が行われていること、災害に耐えうる構造となっていることが条件となる。また、蛇口等が整備されていることも必要である。
結論
本年度の調査では、文献調査、自治体ヒアリング、貯水槽等の実地調査等を行い、過去の経験、自治体の基本的方向、実態の把握を行い、震災時に貯水槽等が応急給水源として使用する可能性があるかどうかについて、研究を行った。そこでは、次の点が明らかとなった。
① 過去の経験からいえば、貯水槽、飲用井戸を応急給水源として使うことは可能であること、そのためには、日頃の管理、防災対策の実施、蛇口等の設置が必要であることが分かった。
② 自治体、特に対策の中心となる上下水道局の基本方向としては、貯水槽の活用についてある程度の理解はあるものの、貯水槽水道に関する安心度に問題があるとのことから、やや消極的な考え方が強いこと、特に民間の貯水槽については、自己の管理下にないことから消極的な意向が強いこと等が分かった。しかし、防災当局では、貯水槽、病院、福祉施設などでの井戸に対する期待があることも分かった。
③ 貯水槽等の実態調査では、ある程度の防災対策が取られているものの、必ずしも十分でないことが分かった。
今回は、6自治体のヒアリングにとどまったが、来年度も引き続き自治体ヒアリングと実態調査を行うとともに、震災時の活用を想定した貯水槽水道、飲用井戸の在り方について引き続き検討を行うことが必要と考える。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201429020Z