文献情報
文献番号
201429012A
報告書区分
総括
研究課題名
災害時における医療チームと関係機関との連携に関する研究
課題番号
H25-健危-一般-011
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
小井土 雄一(独立行政法人国立病院機構災害医療センター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
- 山田 憲彦(航空自衛隊 航空医学実験隊)
- 大友 康裕(東京医科歯科大学)
- 井上 潤一(山梨県立中央病院)
- 定光 大海(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター)
- 松本 尚(日本医科大学)
- 本間 正人(鳥取大学医学部)
- 森野 一真(山形県立救命救急センター)
- 中山 伸一(兵庫県災害医療センター)
- 近藤 久禎(独立行政法人国立病院機構災害医療センター 臨床研究部)
- 阿南 英明(藤沢市民病院)
- 石原 哲(白鬚橋病院)
- 高橋 毅(独立行政法人国立病院機構熊本医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
6,510,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班は、災害医療体制のガイドライン、マニュアル等を提示することを目的とする。日本の災害医療体制は、阪神・淡路大震災(以下1.17)の教訓に基づき大きく進歩した。しかし、東日本大震災(以下3.11)においては、1.17と医療ニーズが全く違ったこともあり、新たな課題が多く生まれた。3.11以降の災害医療の方向性は、「災害時における医療体制の充実強化について」(厚生労働省医政局長通知)において、9項目の目標として提示されている。本研究班の目的は、これらの目標の具現化に資することである。
研究方法
3.11において、生まれた下記の課題を初年度に引き続き検討した。本邦初めて広域医療搬送が行われた。その結果、地域医療搬送における指揮調整系統、SCU(航空搬送拠点臨時医療施設)の柔軟な運用が課題として挙げられた。また、広域医療搬送については、南海トラフや首都直下の新たな想定が提示されている。これにより政府の広域医療搬送の具体的な計画を更新する必要が生じている。そこで、本研究では、新たな想定に基づいた広域医療搬送の具体的な計画を策定する際の基礎資料を整理するとともに、SCU、広域医療搬送、ドクヘリを含めた地域医療搬送の運用ガイドライン、マニュアルを提示する。EMISは災害拠点病院ではある程度機能したが、情報収集にばらつきが生じた。また、被災状況入力、DMAT管理についても実践からいくつかの課題が提示された。これらの課題を踏まえ、災害医療コーディネーターにとっても有用なEMISのあり方を検討する。災害医療のロジスティックに係わる様々な問題が提示された。そこで、本部機能のあり方、DMATロジスティックチームのあり方、中長期的な医療のロジスティックのあり方について検討する。急性期から亜急性期への医療チームの引継ぎにおけるギャップが問題となった。急性期医療チーム(DMAT等)から、如何に一般救護班へ継続的に引き継ぐか具体的な手法を開発する。標準災害診療記録、トリアージタッグ等に関しても検討を行う。
結果と考察
平成26年度政府総合防災訓練における広域医療搬送訓練は、南海トラフ大地震を想定して行われた。本研究班は、南海トラフ大地震を見据えた新しい概念の検証を行った。検証事項としては、1)SCUを設置場所と立地条件により4分類とし、それぞれのSCUパターンの役割を検証、2)南海トラフ大地震の巨大な医療ニーズに対して、後方搬送以外の手段の方法を検証、3)ドクターヘリの新しい指揮命令系の試み、他機関ヘリとの調整など地域医療搬送の検証、4)ロジスティックス強化のためのロジスティックス拠点の具現化、通信環境強化、道路状況把握の検証等を行った。地域医療搬送については、「被災地に参集したドクターヘリの統制方法―指揮系統―の最終案」を提示した。「ドクターヘリ調整部」、「ドクターヘリ本部」を設置することとし、それぞれの役割を明確にした。情報システムについては、昨年度の本研究の提言をもとに、災害医療コーディネートを支援するツールに進化させるべく、EMIS機能の改訂を実施し、その検証を行なった。改定は、これまでのEMISを時間的、空間的に広げた。時間的には、災害医療コーディネーターが急性期から慢性期まで情報を一元化できるように、DMAT以外の医療チームの情報、また病院だけでなく避難所、救護所等の情報も発信・共有できるようにした。空間的には、被災地から離れた関係各所で情報が共有できるように、今回総合地図ビューアーの搭載を行った。ロジスティクスに関しては、高速道路SA等を活用したロジスティック拠点の設置・運営、関係業界団体と連携しての医療ガスや医薬品・医療資器材の確保、レンタカー・タクシー・福祉タクシー等の民間事業者と連携した移動手段・搬送手段の確保、衛星通信・無線を用いた通信網の確保等について広域医療搬送訓練やDMAT地方ブロック訓練を通して検証した。関係機関連携の研究については、他機関が連携して、継続的な支援を行うために、日本赤十字社(日赤)は、日赤災害医療コーデイネーターを設置、国立病院機構は初動医療班を設置、日本医師会は、JMATの隊員研修の標準化を試みた。情報整理ツールについては、標準災害診療記録を完成し、関連学会を通じて広く意見を聴取するとともに訓練で検証した。
結論
今後は、SCU、広域医療搬送、ドクヘリを含めた広域・地域医療搬送の運用ガイドライン、マニュアルを提示することにより、南海トラフや首都直下の広域医療搬送の具体的な計画更新に貢献する。EMISに関しては、今回のバージョンアップにより、災害医療コーディネートをより理想的に運ぶことが可能となるが、そのためには、システムの洗錬化を行う。ロジスティクスに関しては、ロジステーション構想具現化のためのガイドラインを作成し、協定・合同訓練を行う。
公開日・更新日
公開日
2016-06-20
更新日
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