エステティックの施術による身体への危害についての原因究明及び衛生管理に関する研究

文献情報

文献番号
201429011A
報告書区分
総括
研究課題名
エステティックの施術による身体への危害についての原因究明及び衛生管理に関する研究
課題番号
H25-健危-一般-010
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
関東 裕美(公益財団法人日本エステティック研究財団)
研究分担者(所属機関)
  • 舘田 一博(東邦大学医学部微生物・感染症学講座)
  • 古川 福実(和歌山県立医科大学皮膚科学教室)
  • 山本 有紀(和歌山県立医科大学皮膚科学教室)
  • 鷲崎 久美子(東邦大学医学部皮膚科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
4,340,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
エステティックにおける施術は,消費者ニーズの高まりとともに普及している。一方で,エステティックには法的な規制がなく,実態が十分に把握されていないため,衛生管理や施術に関係する健康被害が懸念される。そこで本研究は,エステティックの健康被害を防止するための原因究明及びエステティック施設の衛生環境の向上を目指し、安全に施術が提供される環境を整備することを目的とした。
研究方法
A施設の衛生管理の徹底について
1 被施術者の皮膚に付着している細菌類が施術者の手指にどの程度移動するかについて、初年度調査に続き施術前後の施術者の手指をハンドスタンプにより採取、被験者の顔面を綿棒で拭い調査を行った。
2 H25年度の研究から施設内で伝播している可能性が考えられたことから、エステティック施設で使用されている雑巾類を収集、細菌類の調査を行った。
3 啓発ツールの作成
Bエステティックによる健康被害の実態把握及び原因の究明
1 国民生活センターに全国から寄せられる消費者相談のうち,「エステティック」に分類されている健康被害の詳細情報を収集した。
2 施術に使用されている顔用化粧品10種類について、48時間閉塞パッチテストにより皮膚への刺激性を調査した。
3 業界団体が安全性確保のために定めた自主基準に適合した美容ライト脱毛機器について、施術時の皮膚表面温度と皮膚バリア機能の変化について調査した。
4 顔への施術が皮膚に与える影響について皮膚バリア機能を中心に調査を行った。
結果と考察
A施設の衛生管理の徹底について 
H25年度のエステティック施設環境調査で病巣や病院内から検出される細菌が各種環境から検出される施設が見られ、菌種が施設内各環境で同一であったことから,汚染された一つの雑巾での複数環境の清掃等が原因であることが考えられた。H26年度の研究では、エステティック施設で使用されている雑巾類の汚染調査を行った。各施設から収集された雑巾類1cm2あたりに検出された菌数について,湿潤条件下の雑巾類は乾燥状態条件下の雑巾類よりも検出される菌数が多い結果となった。この結果を踏まえ,施設での雑巾等による環境汚染を防止するために,雑巾の汚染状況を現場の技術者に対し視覚的に伝えるとともに,対処法について周知できるようにする必要があると考え、啓発資料を作成した。
Bエステティックによる健康被害の実態把握及び原因の究明
エステティックは,手技,化粧品,機器を使用して健康な人に施術を提供する事であり,その組み合わせは,顧客ごとに異なることが多い。国民生活センターに報告されるエステティックの健康被害は,皮膚障害,熱傷が主であるが,相談者の個人情報保護の観点から施術用化粧品や機器が原因なのか,手技による刺激なのか,日常使用の化粧品が原因なのかは判明しない。今回の研究で,より具体的に被害調査をする目的で皮膚科医師にアンケートを行い,健康被害の症例を収集した。症例における所見は,皮膚障害と熱傷が多く,医師が原因と判断したのは,皮膚障害では,化粧品及び手技,熱傷は,機器が多かった。H26年度の研究ではエステティック施設で標準的に使用されている脱毛機器4機種を試験した。温度変化と皮膚バリア機能の測定結果を検討し安全性を確認できたと考えている。皮膚障害については,体調の変化や体質によっておこりうるので,直接的な因果関係を把握することは難しいが,皮膚への刺激が強い化粧品類を使用する際に安全を確認するなどきちんとした知識を持ち注意深く施術を行う事により防止あるいは悪化を防ぐことができるのではないかと考える。実際に使用されている化粧品類についてパッチテスト実施患者に了承を得てパッチテストしたところ72時間で3種類の外国製化粧品で軽微な刺激反応が出たが,48時間では「刺激性が低い」に分類されたことから通常の使用では大きな問題はないと考えられた。
結論
エステティックの施術による健康被害の防止及び施設の衛生環境の向上は,消費者利益の向上に必要不可欠であることから本研究では,施設の衛生管理及び被害の原因について研究を行った。衛生管理については,エステティック施設は必ずしも無菌状態になることを要求されないが,施設内での細菌の伝搬が確認された。技術者が他者の皮膚に触れる施術であることから,一定以上の衛生管理が必要であると考え,本研究の成果をもとに啓発資料を作成し公開した。健康被害については,今回調査した業界自主基準に適合した美容ライト脱毛機器には問題がなかった。エステティックで広く使用されている海外化粧品についてはぜい弱皮膚には刺激反応が出ることが予想され、なお追加調査が必要と考えた。施術者は,公的な資格が無くスキルに格差がある実態を踏まえ,より一層の教育と実践を徹底することで健康被害の防止につながると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201429011B
報告書区分
総合
研究課題名
エステティックの施術による身体への危害についての原因究明及び衛生管理に関する研究
課題番号
H25-健危-一般-010
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
関東 裕美(公益財団法人日本エステティック研究財団)
研究分担者(所属機関)
  • 舘田 一博(東邦大学医学部微生物・感染症学講座)
  • 古川 福実(和歌山県立医科大学皮膚科学講座)
  • 山本 有紀(和歌山県立医科大学皮膚科学講座)
  • 鷲崎 久美子(東邦大学医学部皮膚科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
エステティックにおける施術は,消費者ニーズの高まりとともに普及している。一方で,エステティックには法的な規制がなく,実態が十分に把握されていないため,衛生管理や施術に関係する健康被害が懸念される。そこで本研究は,エステティックの健康被害を防止するための原因究明及びエステティック施設の衛生環境の向上を目指し、安全に施術が提供される環境を整備することを目的とした。
研究方法
Ⅰ 施設の衛生管理の徹底について
H25年度全国のエステティック施設に対し、必要な衛生管理の項目の実施状況等についてアンケートを行った。
H25年度エステティック21施設内数箇所をふき取り法による細菌培養検査で調査した。
2年間施術者の手指細菌調査
H25年度エステティック21施設の技術者計26名の手洗い前後の手指細菌調査を行った。
H26年度施術者4名が被験者10名に施術を行い,施術前後に施術者のハンドスタンプを採取し,被験者からの細菌類の伝播を確認するため、被験者の顔面3か所から細菌を採取した。
H26年度: 雑巾による伝播の可能性を検討するため,エステティック9
施設で使用中の雑巾類を収集し,細菌の繁殖状況を調査した。
Ⅱ エステティックサービスによる健康被害の実態把握及び原因の究明
H25年度皮膚科医師1779名に、エステティックによる健康被害に関するアンケートを行った。
2年間:平成25,26年度国民生活センターPIO-NETに寄せられたエステティックに関する健康被害の詳細情報を集計した。
2年間48時間閉塞パッチテストによる皮膚安全性試験
H25年度:植物由来の香料成分10種類
H26年度:エステティック施設で施術に使用されている顔用化粧品10種類
H26年度:脱毛の熱傷が多く報告されたことから,業界団体の自主基準に適合した美容ライト脱毛機器を被験者に照射しその影響について表面温度の変化,皮膚バリア機能を測定した。
H26年度:エステティック施術により,皮膚バリア機能が施術前後で変
化するかどうかを被験者10名の顔面3ヵ所について検証した。
結果と考察
エステティックは,手技,化粧品,機器を使用して健康人に施術を提
供する事である。
国民生活センターに報告されるエステティックの健康被害は,皮膚障害,熱傷が主であるが,相談者の個人情報保護の観点から原因が判明しない。今回の研究で,より具体的に調査をする目的で皮膚科医師からエステティックによる健康被害の症例を収集した。症例における所見は,皮膚障害と熱傷が多く,医師が原因と判断したのは,皮膚障害では,化粧品及び手技,熱傷は,機器が多かった。フリーコメントでは,技術者に対する教育の徹底及び事故発生時の原因検索や情報共有の体制づくりなどの指摘があった。
今回試験を行った脱毛機器4機種においては温度変化と皮膚バリア
機能測定結果から安全性を確認できたと考えている。また、施術で使用するアロマオイル,化粧品類についてパッチテストしたところ刺激反応は軽微であることを確認できた。皮膚障害は、体調の変化等によっておこりうるので,直接的な因果関係を把握することは難しいが,皮膚への刺激が強い化粧品類を使用する際に安全を確認するなど正しい知識を持ち注意深く施術を行う事により防止、悪化を防ぐことができると考える。
衛生学的調査については院内感染の起因菌を中心に施設環境から検出されるかどうかの検査を行った。21施設のふき取りを行った結果,薬剤感性の黄色ブドウ球菌,緑膿菌等は検出されるものの,耐性菌による施設の汚染は見られなかった。また,複数の箇所から同じ菌が検出される等,手指や布巾などにより施設内で伝播している可能性もうかがえた。施術者の手指細菌検査では,初年度検査で手指から市中型MRSAが検出された。2年目検査では施術者の手洗いが完全であるとしても施術後に被検者由来と思われる細菌が培養されるケースを確認した。ここまでの調査で抽出された問題点について,原因と対処法について周知できるようにする必要があると考え、啓発資料を作成した。
結論
エステティックの施術による健康被害の防止及び施設の衛生環境の向上は,消費者利益の向上に必要不可欠であることから本研究では,施設の衛生管理及び被害の原因について研究を行った。衛生管理については,エステティック施設は必ずしも無菌状態であることを要求されないが,施設内での細菌の伝搬が確認された。技術者は他者の皮膚に触れる施術であることから,一定以上の衛生管理教育が必要であると考え,本研究の成果をもとに啓発資料を作成し公開した。健康被害については,今回調査した化粧品や機器には問題がなかった。施術者は,公的な資格が無くスキルに格差がある実態を踏まえ,より一層の教育と実践を徹底することで健康被害の防止につながると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201429011C

収支報告書

文献番号
201429011Z