文献情報
文献番号
201429010A
報告書区分
総括
研究課題名
レジオネラ検査の標準化及び消毒等に係る公衆浴場等における衛生管理手法に関する研究
課題番号
H25-健危-一般-009
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
倉 文明(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
- 神野 透人(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
- 前川 純子(国立感染症研究所 細菌第一部)
- 縣 邦雄(アクアス(株)つくば総合研究所)
- 八木田 健司(国立感染症研究所 寄生動物部)
- 黒木 俊郎(神奈川県衛生研究所 微生物部)
- 緒方 喜久代(大分県衛生環境研究センター 微生物担当)
- 中嶋 洋(岡山県環境保健センター 細菌科)
- 長岡 宏美(静岡県環境衛生科学研究所 微生物部 細菌班)
- 森本 洋(北海道立衛生研究所 感染症センター感染症部細菌グループ)
- 磯部 順子(富山県衛生研究所 細菌部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
重篤な肺炎を引き起こすレジオネラ属菌による、浴槽水等の水環境の汚染が問題となっている。培養検査に1週間を要し、迅速な検査法が求められている。培養検査法の測定値は信頼性が懸念され、外部精度管理が必要とされている。遊離塩素消毒しても安全性の確保困難な浴槽水があり、解決に向け、モノクロラミン消毒を入浴施設において検証する。
研究方法
迅速検査キットLAMP法及び生菌迅速検査キット EMA(Ethidium monoazide)-qPCR法等を用いた。レジオネラ属菌の16S rRNA遺伝子のクローンライブラリーを作製した。
結果と考察
遊離塩素での消毒効果が期待できない鉄泉7源泉水の内4つで、モノクロラミン濃度が安定あるいは一定程度維持されることが判明した。安定に維持される1源泉水を使用する循環式入浴施設浴槽水の実証試験で、浴槽水中からレジオネラやアメーバは検出されず、塩素消毒臭の原因とされるトリクロラミンや消毒副生成物も少なく、モノクロラミンの高い消毒効果と安全性が確認された。循環式入浴施設において、モノクロラミン消毒における濃度管理を濃度測定方式から簡便なタイマー注入方式に変更して、系内濃度3mg/Lを概ね維持することができた。また、系内濃度は補給湯量の増減には影響を受けるが、利用者数には影響を受けなかった。塩化アンモニウムの代用として安価な硫酸アンモニウムが使用できた。塩素剤とアンモニウムのモル比を低減できた。気泡発生装置使用浴槽を有する3施設における実証試験で、レジオネラ属菌およびアメーバは検出されなかった。
レジオネラ属菌培養検査が行われた冷却水6664検体について、殺菌剤の種類ごとにレジオネラ属菌の菌数分布を集計したところ、塩素系殺菌剤は、他の有機系殺菌剤に比べてレジオネラ属菌に対する抑制効果が低かった。
シスメックス社のバイオボールを菌数を指定して導入し、41地衛研を対象に水中レジオネラ属菌数の外部精度管理を実施した。ワーキンググループ推奨法での検査実施をお願いしたところ、目標範囲に入った機関は、昨年度の36%から89%に増加した。国立保健医療科学院短期研修新興・再興研修で5日間レジオネラの検査法実習を行なった。国立感染症研究所希少感染症技術研修会でレジオネラ症と検査法について解説した。
富山県で多く発生するレジオネラ感染症の感染源を探求するため、11浴用施設について、浴用水44検体、シャワー水34検体のレジオネラ属菌の検査を行った。レジオネラ属菌の検出率はそれぞれ22.7%、29.4%であった。県内の河川水7か所34検体、土壌13か所64検体から検体を採取し、1か月アメーバと培養し、酸処理後にGVPCにて培養した。河川水では、レジオネラ属菌の検出率は44.1%、土壌では、レジオネラ属菌の検出率は39.1%であった。H24年度からの検体をまとめると、シャワー水94検体の内34%から菌が分離された。
主たる起因菌L. pneumophila(Lp)について、sequence-based typingを行い、菌の生息環境と関連した疫学状況を調査している。Lp SG1の環境分離株408株のMinimum spanning tree解析を行った。環境分離株は生息環境に応じて9つのグループに分かれることを見出していたが、シャワー水および、噴水・修景水分離株は独自の遺伝的グループを形成しなかった。シャワー水分離株は、冷却塔水分離株同様、最も多い遺伝子型はC1グループに属するST1だった。噴水・修景水分離株は、B(bath)以外のグループに散在した。
冷却水11検体および浴槽水3検体についてクローンライブラリーを作製して解析したところ、浴槽水はLpのクローンの比率が高かったが、冷却水においては既存種に属さない未知のレジオネラ属菌クローンの塩基配列が大部分を占めた。培養法・PCR・EMA-qPCRを比較した結果、冷却塔水では培養不能のレジオネラ属菌の存在が示唆され、浴槽水では、EMA-qPCR法が培養法結果の予測に有効であった。
一般家庭14軒125検体を調査して、水試料75検体のうち3検体;水槽、給湯水、蛇口水(アメーバ培養)からレジオネラを分離した。LAMP法は、直接実施した場合は水試料75検体中24検体(32.0%)からLegionella属菌の遺伝子が検出され、アメーバによる増菌後では31検体(41.3%)と検出率が増加した。
レジオネラ属菌培養検査が行われた冷却水6664検体について、殺菌剤の種類ごとにレジオネラ属菌の菌数分布を集計したところ、塩素系殺菌剤は、他の有機系殺菌剤に比べてレジオネラ属菌に対する抑制効果が低かった。
シスメックス社のバイオボールを菌数を指定して導入し、41地衛研を対象に水中レジオネラ属菌数の外部精度管理を実施した。ワーキンググループ推奨法での検査実施をお願いしたところ、目標範囲に入った機関は、昨年度の36%から89%に増加した。国立保健医療科学院短期研修新興・再興研修で5日間レジオネラの検査法実習を行なった。国立感染症研究所希少感染症技術研修会でレジオネラ症と検査法について解説した。
富山県で多く発生するレジオネラ感染症の感染源を探求するため、11浴用施設について、浴用水44検体、シャワー水34検体のレジオネラ属菌の検査を行った。レジオネラ属菌の検出率はそれぞれ22.7%、29.4%であった。県内の河川水7か所34検体、土壌13か所64検体から検体を採取し、1か月アメーバと培養し、酸処理後にGVPCにて培養した。河川水では、レジオネラ属菌の検出率は44.1%、土壌では、レジオネラ属菌の検出率は39.1%であった。H24年度からの検体をまとめると、シャワー水94検体の内34%から菌が分離された。
主たる起因菌L. pneumophila(Lp)について、sequence-based typingを行い、菌の生息環境と関連した疫学状況を調査している。Lp SG1の環境分離株408株のMinimum spanning tree解析を行った。環境分離株は生息環境に応じて9つのグループに分かれることを見出していたが、シャワー水および、噴水・修景水分離株は独自の遺伝的グループを形成しなかった。シャワー水分離株は、冷却塔水分離株同様、最も多い遺伝子型はC1グループに属するST1だった。噴水・修景水分離株は、B(bath)以外のグループに散在した。
冷却水11検体および浴槽水3検体についてクローンライブラリーを作製して解析したところ、浴槽水はLpのクローンの比率が高かったが、冷却水においては既存種に属さない未知のレジオネラ属菌クローンの塩基配列が大部分を占めた。培養法・PCR・EMA-qPCRを比較した結果、冷却塔水では培養不能のレジオネラ属菌の存在が示唆され、浴槽水では、EMA-qPCR法が培養法結果の予測に有効であった。
一般家庭14軒125検体を調査して、水試料75検体のうち3検体;水槽、給湯水、蛇口水(アメーバ培養)からレジオネラを分離した。LAMP法は、直接実施した場合は水試料75検体中24検体(32.0%)からLegionella属菌の遺伝子が検出され、アメーバによる増菌後では31検体(41.3%)と検出率が増加した。
結論
入浴施設のモノクロラミン消毒を実用化した。レジオネラ生菌検出キットを改良した。標準試料の作製と配布を委託し、外部精度管理を行なった。平成27年3月に健衛発0331第7号「『循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアル』の改正について」が厚生労働省健康局生活衛生課長より通知され、成果が盛り込まれた。
公開日・更新日
公開日
2016-06-20
更新日
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