家庭用品から放散される揮発性有機化合物/準揮発性有機化合物の健康リスク評価モデルの確立に関する研究

文献情報

文献番号
201428010A
報告書区分
総括
研究課題名
家庭用品から放散される揮発性有機化合物/準揮発性有機化合物の健康リスク評価モデルの確立に関する研究
課題番号
H25-化学-一般-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
香川 聡子(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部第一室)
研究分担者(所属機関)
  • 東野 晴行(独立行政法人 産業技術総合研究所 安全科学研究部門環境暴露モデリンググループ)
  • 神野 透人(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部第一室)
  • 河上 強志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部第四室)
  • 田原麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部第一室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
15,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では室内環境での化学物質曝露に関する精緻な健康リスク評価モデルを確立することを目的として、放散試験により得られる化学物質放散速度に関する情報や実態調査で得られる室内空気中の化学物質濃度に関する情報に基づいたシミュレーション手法を確立するとともに、『時間』に関する情報を包含する曝露シナリオを構築する。
研究方法
瞬時放散型家庭用品として家庭用スプレー製品を対象に分析法を確立するとともに、その実態調査結果から実際の室内空間への負荷量を推定した。さらに、スプレー噴霧を対象としたシミュレーション手法として、スプレー型消費者製品の曝露評価に必要なスプレー噴霧量およびスプレー噴霧の粒子径分布などを調査して曝露係数を設定し、粒子径分布が不明な場合でも適用可能な濃度推定手法を構築した。また、呼吸器の近傍で使用される家庭用品から放散・放出される化学物質の曝露濃度を評価するためのシミュレーションモデルを開発する目的で、先ず、呼吸域で使用されるアクリル系樹脂製の接着剤やスプレー等の家庭用品30製品を対象として、マイクロチャンバーによる放散試験を実施し、使用者の最高曝露濃度を推定した。さらに、呼吸器の近傍で使用される家庭用品から放散・放出される化学物質の曝露濃度を適切に評価するためのシミュレーションモデルを開発する目的で、NISTが開発したMultizone Airflow and Contaminant Transport Analysis SoftwareであるCONTAMを用いて、呼吸域曝露濃度シミュレーションへの適用可能性について検討を行った。
結果と考察
家庭用スプレー22製品を対象として、本研究で確立した分析法を用いて測定を行ったところ、分析対象とした18化合物中8種類の化合物が検出され、室内空気汚染全国調査で検出が報告されている指針値未策定物質も多く含まれていた。従って、今回測定した家庭用スプレー製品も、室内汚染物質の発生源になり得ることが明らかとなった。
スプレー噴霧を対象としたシミュレーション手法の開発においては、測定値と検証されている粒子径分布を考慮した既存モデルを簡略化し、粒子径分布が不明な場合でも適用可能なモデルを作成した。開発したモデルの計算結果は参考とした既存モデルの計算結果とほぼ一致することが確認できた。
呼吸域で使用される家庭用品30製品を対象とした放散試験結果では、アクリル系基材および粘着剤を用いた両面テープや合成樹脂塗料の水性スプレーにおいて特に高濃度でアクリル酸エステル類が検出さることが判明した。
CONTAMを用いる呼吸域曝露濃度シミュレーションに関する研究結果では、化学物質が一過性に放出された場合、呼吸域の最高濃度は室内最高濃度の約14倍、24時間平均濃度の160倍にまで達する可能性があることが明らかになった。「室内空気中化学物質の測定マニュアル」に則った実態調査等では24時間平均濃度が求められるが、家庭用品からの化学物質の放散・放出様式によっては、実態調査で得られた値と実際の曝露濃度が乖離するおそれがあることが判明した。
結論
本研究によって、室内で使用する家庭用品が、室内汚染環境化学物質の重要な発生源であることが明らかになった。さらに、呼吸域曝露濃度シミュレーション手法を確立し、家庭用品の使用によって、一過性に放出された化学物質は、室内最高濃度の約14倍、24時間平均濃度の160倍の濃度で作業者が曝露される可能性があることが明らかになった。特に健康影響として刺激性が問題となる化学物質については、それが含まれる家庭用品の使用形態も加味した調査結果の評価を進めるとともに、呼吸域濃度を考慮した曝露評価が必要不可欠であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201428010Z