血液製剤及び献血血の安全性確保と安定供給の維持のための新興・再興感染症に関する総合的研究

文献情報

文献番号
201427055A
報告書区分
総括
研究課題名
血液製剤及び献血血の安全性確保と安定供給の維持のための新興・再興感染症に関する総合的研究
課題番号
H26-医薬A-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
倉根 一郎(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 横山 直明(帯広畜産大学原虫病研究センター)
  • 沢辺 京子(国立感染症研究所 昆虫医科学部)
  • 五十嵐 滋(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 岡田 義昭(埼玉医科大学 )
  • 高崎 智彦(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 大隈 和(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、ヒトや物の国際間の頻繁な移動によって感染症が拡大し、これまで日本には存在しなかった病原体が国内に持ち込まれる可能性がある。国内でウエストナイル熱やデング熱等が発生した場合、スクリーニング法の導入の他に、早期に適切な献血制限地域を設定する必要が出る可能性がある。これらの感染症は蚊が媒介するため、蚊の種類や行動範囲、蚊の生態などを基盤に献血制限地域を設定する必要も出てくる。シャーガス病は南米で流行する慢性の感染症である。リーシュマニア症は、地中海沿岸やインド、南米に存在する。当地からの旅行者や当地での長期滞在者により日本に持ち込まれる可能性がある。バベシア症については検査法の確立を進める必要が生じている。本研究は、種々の病原体に関して、検査法開発や検査情報を科学的知見から検討することによって献血血の安全性確保と安定供給に貢献することを目的とした。
研究方法
献血血の安全性確保と安定供給のため、シャーガス病、リーシュマニア症、バベシア症、ウエストナイルウイルス等のフラビウイルス、HTLV-2 を対象として検査・スクリーニン グ法等の開発、さらに媒介蚊に関する研究を行った。
結果と考察
シャーガス病については、シャーガス病の可能性のある中南米出身者と日本人から検体を得て、検査方法を評価しつつキャリアの状態を把握した。輸血用血液製剤にトリパノゾーマクルージを接種して動態を解析した。濃厚血小板中では減少したが感染性は認められた。新鮮凍結血漿は一度の凍結融解により検出限界以下となった。リーシュマニアについては血液製剤中での生存率を検討した。血小板を想定した5%アルブミンでの生存率は、経時的に減少したが、7日目で約百分の1になった。赤血球を想定した全血の4℃保存では、現在の有効期間である3週間後は、室温保存のアルブミンと同様の減少率であった。バベシア症については人感染血清による組換え抗原を用いたELISAの有用性について検討した。アメリカの流行地の人陽性血清60検体用いてELISAを行ったところ、アメリカで得られている感染結果と非常に高い相関を示した。ウエストナイル熱の献血対応に関する研究については試薬の感度と遺伝子型別の評価を行った。デングウイルスと類似のジカウイルス遺伝子高感度検出法の開発と評価を行った。住宅街におけるヒトスジシマカ等の移動分散に関する研究については、調査区内にある5つの茂みを採集場所として,マークしたヒトスジシマカ301個体を放逐した。放逐後4日間再捕獲を行い、ヒトスジシマカ84個体が再捕獲された。再捕獲されたヒトスジシマカ84個体のうち放逐場所と異なる場所で捕獲されたのは2個体であり地図上で求めた最長移動距離は95mであった。輸血血液におけるHTLV-2の検出法開発に関する研究については、PCR用のプライマーセットを作成し、検出感度の検討を行った。
結論
本研究班では研究代表者とウイルス、衛生昆虫、寄生虫、血液製剤の専門家である7名の研究分担者が参加し、それぞれの専門分野を有機的に結合させた形で共同研究を行なった。献血血の安全性確保と安定供給のため、シャーガス病、リーシュマニア症、バベシア症、HTLV-2および蚊媒介性ウイルスを対象として検査法・スクリーニング法等の開発、媒介蚊に関する研究を行った。リーシュマニア症については輸血による感染症を防止するためにリーシュマニア遺伝子の検出法を検討した。シャーガス病については中南米出身者抗体陽性7名中、その内6名がPCR陽性、3名からトリパノゾーマクルージが分離された。日本人には陽性者は確認されなかった。バベシア症については、ELISAおよびICT作製を目的として検討を行なった。ヒトのバベシア感染を血清学的に診断するための純度と濃度の高い組換え抗原の産生が可能となった。蚊媒介性ウイルス感染症として、ウエストナイルウイルスについて輸血用血液スクリーニング用の核酸増幅検査システムを活用した国内感染発生時におけるウイルススクリーニングの追加実施方法について確認した。ジカ熱がデング熱同様日本国内で発生し、デング熱流行と誤判断される場合を想定し、高感度遺伝子検出法を確立した。ウイルス媒介蚊については、調査区画内における蚊の移動分散の様子を調査した。実験期間中の平均気温19.2℃の条件で、ヒトスジシマカは放逐場所から少なくとも95 m移動した個体が確認された。HTLV-2については、PCR プライマーセットを新規に複数準備し、PCRを用いたHTLV-2核酸検査法を確立した。最も増幅効率の良いプライマーセットを選択し、細胞1万個あたり10コピーの感度を確認できた。輸血関連病原原体に関して、検査法開発や検査情報を科学的知見から検討することによって献血血の安全性確保と安定供給に寄与する科学的基盤が進展した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

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公開日・更新日

公開日
2017-05-22
更新日
-

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文献番号
201427055Z