ロドデノール配合薬用化粧品による白斑症状の原因究明・再発防止に係る研究

文献情報

文献番号
201427051A
報告書区分
総括
研究課題名
ロドデノール配合薬用化粧品による白斑症状の原因究明・再発防止に係る研究
課題番号
H25-医薬-指定-027
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
川西 徹(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 石川 治(群馬大学大学院 医学研究科皮膚科)
  • 最上 知子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 秋山 卓美(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
4,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ロドデノール誘発性白斑患者について、脱色素斑の症状経過別に色素再生率及び治療有効性等を調べ、白斑発症機序の解明を進める。ロドデノールの皮膚メラノサイト傷害の機序として、チロシナーゼによる代謝とチロシナーゼ活性に依存した毒性発現が報告されている。白斑誘導性4-置換フェノール類の文献情報と比較し、この関連を考察する。上記結果等を踏まえ、再発防止の観点から、医薬部外品の承認審査及び製造販売後における安全性に関するデータの収集・解析手法のあり方について提言することを目的とする。
研究方法
1.白斑を主訴として2014年10月までに群馬大学医学部附属病院皮膚科を受診し、ロドデノール誘発性白斑と診断した70症例を典型例、非典型例に分類し、初診およびロドデノール中止後の経過につき詳細な問診、診察、検査を行い、統計学的に分析した。岡山大学病院及び関連病院を受診したロドデノール誘発性白斑症例100例について、患者背景、症状、既往歴、血液検査、病理学的検査、及び経過を比較、解析した。
2.ロドデノールや白斑誘導性の類似化合物によるメラノサイト選択的毒性とその機序について、文献調査を行った。さらにマウスやヒトのメラノーマ細胞、正常ヒトメラノサイト等を用い、毒性発現とチロシナーゼの関与を検証した。またアスコルビン酸による還元反応を利用し、チロシナーゼ代謝物の変化と細胞毒性との関係を解析した。
3.医薬部外品の承認申請時から市販後の安全性管理までの各段階を調査し、承認申請区分の細分化、安全性評価法のあり方、長期投与(安全性)試験の方法(症例数、期間等含む)、製造販売後調査方法について検討した。
結果と考察
1.ロドデノール誘発性白斑症例170例を、使用部位以外には白斑の拡大のない患者(典型例)と、使用部位以外に脱色素斑を生じ中止後も脱色素斑が新生・拡大する進行性白斑病変を生じた患者(非典型例、遠隔拡大例)とに分類し、患者背景、初診時症状、既往歴、ロドデノール使用中止後の臨床経過像、血液検査及び病理学的検査結果を比較、解析した。非典型例は29例認められた。抗甲状腺抗体や抗核抗体の陽性率、メラノファージの有無及びメラノサイトの残存率、CD8陽性細胞優位の細胞免疫応答像及び細胞浸潤度等は、非典型例、典型例および尋常性白斑例において差はなかった。非典型例では白毛やサットン現象など、免疫学的機序を介するメラノサイトの傷害が示唆される症例が確認され、傷害されたメラノサイトに対する自己免疫異常反応の誘導、あるいはロドデノールが尋常性白斑のトリガーとなる可能性が考察された。
2.ロドデノールはメラノサイトに対しチロシナーゼ活性に依存する毒性を発揮することが報告されている。白斑誘導性の類似化合物と同様に、ロドデノールはチロシナーゼにより反応性の高いオルトキノン体へと代謝され、グルタチオン等のSH基と反応するとともにタンパクを修飾することが報告されており、本研究班においてもオルトキノン体の生成を防ぐとメラノサイト毒性が低減する知見を得た。メラノサイトは個体差が大きいことから、適切な感受性を有する細胞系の選択が美白剤の安全性評価に重要と考えられた。
3.昨年度の副作用報告制度の強化及び製造販売後の安全管理の基準の改正に引き続いて、医薬部外品の承認申請区分の改正、使用上の注意の改訂及び製造販売後調査ガイドラインについて提言を行った。医薬部外品の開発段階における前臨床試験方法の拡充を目的に、長期安全性試験を組み込んだ「安全性評価ガイドライン(仮称)」を作成することとし、その方針を決定した。この内容については、引き続き、本研究班メンバーを中心に検討している。
結論
ロドデノール誘発性白斑患者には化粧品使用中止後も脱色素斑が新生・拡大したり、非使用部位に脱色素斑が現れたりする症例が存在した。白毛やサットン現象なども認められ、傷害メラノサイトへの自己免疫異常反応の誘導、及びロドデノールが尋常性白斑のトリガーになっている可能性が示唆された。ロドデノールのメラノサイトへの毒性はチロシナーゼ活性に依存し、代謝されてオルトキノン体を生成、SH付加反応性を持つことが要因と推定される。今回、オルトキノン体をカテコール体に還元するアスコルビン酸の添加で細胞毒性が抑制され、この機序を示唆する知見が得られた。白斑等の健康被害の再発防止の観点から、医薬部外品の承認申請区分の改正、長期投与(安全性)試験の設定、使用上の注意の改訂及び製造販売後調査ガイドラインについて提言を行い、安全性評価ガイドライン(仮称)の作成方針を決定した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-

文献情報

文献番号
201427051B
報告書区分
総合
研究課題名
ロドデノール配合薬用化粧品による白斑症状の原因究明・再発防止に係る研究
課題番号
H25-医薬-指定-027
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
川西 徹(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 石川 治(群馬大学大学院 医学研究科皮膚科)
  • 最上 知子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 秋山 卓美(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ロドデノールによる白斑発症の原因究明と再発防止を目的とした新たな医薬部外品の承認審査・製造販売後安全対策の方策を検討する。ロドデノール含有化粧品により白斑を生じたと考えられる患者について、診断方法、治療方法の確立を目的とした解析を行い、その特徴を明らかにする。ロドデノールの皮膚メラノサイト傷害作用の検証を行うともに、白斑を引き起こすことが報告されている類似化学物質の文献情報を調査し、白斑発症機序について考察する。以上の調査、試験結果も踏まえ、再発防止の観点から、医薬部外品の承認申請・審査及び製造販売後における安全性に関するデータの収集・解析手法のあり方、さらには添付書類等への記載内容について提言することを目的とする。
研究方法
1.群馬大学医学部附属病院皮膚科においてロドデノール誘発性白斑と診断した症例、及び岡山大学病院及び関連病院を受診したロドデノール誘発性白斑症例について、患者背景、既往歴、病理学的検査所見及び症状経過等を解析した。2.ロドデノールを含む化学物質のメラノサイト傷害性に関する論文、並びにカネボウ化粧品による非臨床試験報告書を調査した。ロドデノールの分析化学的試験、ヒトメラノサイト、メラノーマ細胞や角化細胞等に対する細胞毒性、及びチロシナーゼによる代謝試験を行い、毒性発現と代謝物との関係を検討した。3.医薬部外品の承認申請時から市販後の安全性管理までの各段階を調査し、ロドデノール配合化粧品の承認申請時に提出された資料や白斑発生頻度も参照した上で、承認申請時の安全性評価試験法、表示による注意喚起、製造販売後調査や副作用に関する報告制度等について検討した。
結果と考察
1.ロドデノール配合化粧品により白斑を生じたと考えられる患者の約半数は使用開始1年以内に脱色素斑を生じ、表皮内のメラノサイトが消失した。白斑症例を使用部位以外には白斑の拡大のない典型例と使用部位以外に進行性白斑病変を生じた非典型例に分類できた。顔面頸部は色素が再生しやすいものの、非典型例の躯幹四肢では拡大増悪例が半数を占めた。白斑発症機序として少なくとも2つ推定される。1つはロドデノール代謝物による直接的メラノサイト傷害によるもの、もう1つは免疫学的機序を介する持続的な間接的メラノサイト傷害である。非典型例を臨床上尋常性白斑と鑑別することは困難であり、皮膚障害の重症度等によって救済の重み付けをする必要があると考える。発症機序の解明が治療法確立には不可欠である。
2.ロドデノールの品質について分析化学的に問題は認めなかった。職業的白斑を起こす4-tert-ブチルフェノールやヒドロキノンモノベンジルエーテル、抗メラノーマ薬はメラノーマ細胞や皮膚メラノサイトに選択的毒性を発揮する。ロドデノールも同様に、チロシナーゼにより代謝され、より強い細胞毒性を示すことを明らかにした。これらのオルトキノン体は活性酸素種の産生、及びシステインやグルタチオンなどのSH化合物に付加反応しタンパクを修飾することが報告されており、ロドデノールについても免疫誘導につながる応答が示唆された。チロシナーゼと白斑発症との関係を検証するには適切な細胞系の選択が必要であり、その評価系の確立が美白剤の安全性評価法の策定に貢献するものと考えられる。
3.医薬部外品の開発から承認審査、製造販売後までの各段階における安全性確保の枠組み改善のため、承認申請区分の見直し、各添付資料、製造販売後調査内容の整備、副作用報告制度の強化、使用上の注意の改訂に関する提言を行い、申請時に必要な安全性評価項目、長期安全性試験内容を検討した。引き続き、「安全性評価ガイドライン(仮称)」の具体的な内容について取りまとめる。
結論
1.ロドデノールを褐色モルモットに高用量塗布するとメラノサイトが著しく減少し、ヒトにおける臨床症状(白斑)と類似の結果が得られることを確認した。2.ロドデノール原薬には不純物等品質面に問題はなかった。3.細胞実験および文献調査により、ロドデノールはメラノサイトのチロシナーゼによりオルトキノン体により代謝活性化されSH基との付加反応性を獲得するとともに、より強力な細胞毒性を発現することを確認した。4.ロドデノール誘発性白斑症患者では、化粧品の使用中止後も脱色素斑が新生・拡大する症例や非使用部位に脱色素斑が現れる症例が存在した。これらの非典型例では免疫学的機序を示唆する所見も認められた。5.白斑誘導を起こす4置換フェノール類の作用メカニズムに関する文献調査を行い、ロドデノールとの類似性を考察した。6.白斑等の再発防止の観点から、医薬部外品の開発から承認審査、製造販売後までの各段階における安全性確保のための枠組み改善のための各種提言を行った。

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201427051C

収支報告書

文献番号
201427051Z