院内製造PET薬剤の合成装置を用いた核医学診断技術の臨床応用に関するレギュラトリーサイエンスの研究

文献情報

文献番号
201427049A
報告書区分
総括
研究課題名
院内製造PET薬剤の合成装置を用いた核医学診断技術の臨床応用に関するレギュラトリーサイエンスの研究
課題番号
H25-医薬-指定-014
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
井上 登美夫(横浜市立大学 大学院医学系研究科放射線医学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
PET検査(Positron Emission Tomography、陽電子放射断層撮影法)は臨床現場で実用化されている唯一の分子イメージング技術であり、投与したPET薬剤の生体内分布や挙動、代謝状態やメカニズムを可視化し観察することができる。こうした利点がある一方、短半減期放射性物質であることや投与量がマイクロドーズ用量であるといった、PET薬剤の特性を考慮した適切な製造管理体制や評価の枠組みが無いことにより、不必要に副作用などのリスクが懸念されたり、研究段階から日常診療へと組み込まれる道筋が不明瞭であったり、有効性の不確実な未承認PET薬剤が不用意に広がることが懸念されてもいる。こうした認識に基づき、欧米においては、cGMP(Current Good Manufacturing Practice)等のPET薬剤の特性に着目した薬剤製造基準を策定し、各PET薬剤合成施設全体のプロセスを承認し管理することによりPET薬剤の品質を担保している。一方、我が国におけるPET薬剤の製造に関しては、合成装置に対し薬事承認をとることによりPET薬剤の品質を担保する扱いとなっている。この日本独自の方式により多くのPET施設において保険診療導入が可能となり、PET診療の普及に大きく貢献してきた。しかしながら、新たなPET薬剤合成装置の治験を行う際は、元来販売台数が少ないので、コストの観点から合成装置の製造企業は治験に積極的でなく、メチオニンなど医療ニーズの高い新規PET薬剤の早期導入においても、合成装置の薬事承認に関連してさまざまな問題が指摘されている状況である。本研究では、関連する学会と連携して日本版cGMPの教育プログラムを実施かつ充実させ、日本版cGMPに則した監査、認定制度の導入など、技術水準向上のために有効な制度を実施し、今後国内で実施するために必要な体制の構築を目指す。
研究方法
諸外国の状況調査と論点整理、院内製造PET薬剤に関する基準案の熟成(PET薬剤合成基準、PET薬剤の非臨床安全性基準、PET薬剤の臨床評価基準)、イメージングの品質管理・標準化案など技術水準向上のために有効な制度を提案することに主眼をおき、日本核医学会分子イメージング戦略会議の活動と連携して研究を進めた。それらの研究過程にて得られた知見や成果を踏まえ、院内製造PET薬剤の合成装置を利用した核医学検査に関わる制度として、日本版cGMPの教育プログラムを関連する学会と連携して実施した。また、日本版cGMPに則した監査、認定制度を導入した。
結果と考察
1.PET薬剤合成基準、PET薬剤の非臨床安全性基準、PET薬剤の臨床評価基準に対する関連する学会員からの意見を集約し、各基準に反映させ、必要な追補を行った。2.個別のPET薬剤製造基準としてC-11メチオニンの薬剤基準を作成した。3.PET薬剤製造施設の監査・認証制度を実施し、今後国内で実施するために必要な体制、必要な人員などを検討した。4.PET薬剤製造施設の技術水準向上のために、関連学会との協力のもと、製造・品質管理技術者の育成のための教育プログラムを実施し、内容を充実させた。5.PET薬剤製造並びに撮像に関する標準化を普及させるために、PET薬剤の臨床応用やPET検査の撮像法などに関する情報の共有・データベース作成が有用であることを明らかにした。
学会版PET薬剤cGMP基準に則した教育セミナー、及び教育訓練には関連する医療機関・研究機関から予想より多くの参加があり、また施設認証に関しても積極的に希望される施設があるなど、本研究班で提唱する制度設計に実現可能性があることが確認された。しかしながら、より多くの施設を包含した制度としていくためには、経費面を含めたさらに具体的な検証が必要と思われる。
結論
日本版cGMPの教育プログラムを実施かつ充実させ、日本版cGMPに則した監査、認定制度を導入した。今後国内で実施するために必要な経費や体制構築などの検証が必要である

公開日・更新日

公開日
2015-07-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201427049B
報告書区分
総合
研究課題名
院内製造PET薬剤の合成装置を用いた核医学診断技術の臨床応用に関するレギュラトリーサイエンスの研究
課題番号
H25-医薬-指定-014
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
井上 登美夫(横浜市立大学 大学院医学系研究科放射線医学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
PET検査(Positron Emission Tomography、陽電子放射断層撮影法)は臨床現場で実用化されている唯一の分子イメージング技術であり、投与したPET薬剤の生体内分布や挙動、代謝状態やメカニズムを可視化し観察することができる。こうした利点がある一方、短半減期放射性物質であることや投与量がマイクロドーズ用量であるといった、PET薬剤の特性を考慮した適切な製造管理体制や評価の枠組みが無いことにより、不必要に副作用などのリスクが懸念されたり、研究段階から日常診療へと組み込まれる道筋が不明瞭であったり、有効性の不確実な未承認PET薬剤が不用意に広がることが懸念されてもいる。こうした認識に基づき、欧米においては、cGMP(Current Good Manufacturing Practice)等のPET薬剤の特性に着目した薬剤製造基準を策定し、各PET薬剤合成施設全体のプロセスを承認し管理することによりPET薬剤の品質を担保している。一方、我が国におけるPET薬剤の製造に関しては、合成装置に対し薬事承認をとることによりPET薬剤の品質を担保する扱いとなっている。この日本独自の方式により多くのPET施設において保険診療導入が可能となり、PET診療の普及に大きく貢献してきた。しかしながら、新たなPET薬剤合成装置の治験を行う際は、元来販売台数が少ないので、コストの観点から合成装置の製造企業は治験に積極的でなく、メチオニンなど医療ニーズの高い新規PET薬剤の早期導入においても、合成装置の薬事承認に関連してさまざまな問題が指摘されている状況である。本研究では、関連する学会と連携して日本版cGMPの教育プログラムを実施かつ充実させ、日本版cGMPに則した監査、認定制度の導入など、技術水準向上のために有効な制度を実施し、今後国内で恒久的に実施するために必要な体制の構築を目指す。
研究方法
本研究においては、諸外国の状況調査と論点整理、院内製造PET薬剤に関する基準案の熟成(PET薬剤合成基準、PET薬剤の非臨床安全性基準、PET薬剤の臨床評価基準)、イメージングの品質管理・標準化案など技術水準向上のために有効な制度を提案することに主眼をおき、日本核医学会分子イメージング戦略会議の活動と連携して研究を進めた。それらの研究過程にて得られた知見や成果を踏まえ、院内製造PET薬剤の合成装置を利用した核医学検査に関わる制度として、日本版cGMPの教育プログラムを関連する学会と連携して実施した。また、日本版cGMPに則した監査、認定制度を導入した。
結果と考察
1.PET薬剤合成基準、PET薬剤の非臨床安全性基準、PET薬剤の臨床評価基準に対する関連する学会員からの意見を集約し、各基準に反映させ、必要な追補を行った。2.個別のPET薬剤製造基準としてC-11メチオニン、の薬剤基準を作成した。医療ニーズの高いPET薬剤であるC-11メチオニンを対象とし、「L-メチオニン(11C)注射液標準規格」を策定した(「日本核医学会院内製造PET 薬剤基準第2版(2014年2月4日)」)。さらに、本規格について提起された課題を解決した改定案を策定した(「日本核医学会院内製造PET 薬剤基準 第3.1版(2015年3月24 日)」)。3.PET薬剤製造施設の監査・認証制度を実施し、今後国内で実施するために必要な体制、必要な人員などを検討した。4. PET薬剤製造施設の技術水準向上のために、関連学会との協力のもと、製造・品質管理技術者の育成のための教育プログラムを実施し、内容を充実させた。5.PET薬剤製造並びに撮像に関する標準化を普及させるために、PET薬剤の臨床応用やPET検査の撮像法などに関する情報の共有・データベース作成が有用であることを明らかにした。
学会版PET薬剤cGMP基準に則した教育セミナー、及び教育訓練には関連する医療機関・研究機関から予想より多くの参加があり、また施設認証に関しても積極的に希望される施設があるなど、本研究班で提唱する制度設計に実現可能性があることが確認された。また、PET施設認証と懇談会は学会によって運営されており、本研究終了後も継続維持され、わが国における新たなPET薬剤合成装置の開発と医療への普及、さらにはPETを用いた治療薬の開発を促進すると考えられる。しかしながら、より多くの施設を包含した制度としていくためには、経費面を含めたさらに具体的な検証が必要と思われる。
結論
院内製造PET薬剤の日本版cGMPの教育プログラムを実施かつ充実させ、日本版cGMPに則した監査、認定制度を導入した。また、イメージング認証及び臨床評価基準などの作成を行った。今後国内で広く実施するために必要な経費や産学官が連携する体制の構築などの検証が必要である。

公開日・更新日

公開日
2015-07-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201427049C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究による調査結果で、院内PET薬剤製造の規制体制は、米国がPET特有のcGMP製造基準を中心とした制度であり、他の諸外国も類似の制度であるのに対し、我が国はPET薬剤合成装置を医療機器として承認することで、診療上の安全性を担保する体制となっていることが確認された。現状の体制は、サイクロトロン保有施設の多い我が国において、効率的な体制であり、今後も規制体制の基本的な骨格として維持すべきであると考えられる。
臨床的観点からの成果
本研究班が日本核医学会分子イメージング戦略会議の活動と連携し、学会ガイドラインの作成やPET薬剤製造施設認証・PET撮像施設認証、施設監査などの体制の試験的施行、さらには学会基準を普及するための教育プログラムの実践などを通じ、PETを用いた臨床研究の質を担保することが可能となった。さらにC-11メチオニンPETなどを用いた先進医療においても本研究の成果が活用された。
ガイドライン等の開発
既に作成されていたPET薬剤合成基準、PET薬剤の非臨床安全性基準、PET薬剤の臨床評価基準に対し追補を行った。個別のPET薬剤製造基準としてC-11メチオニン、の薬剤基準を作成した。医療ニーズの高いPET薬剤であるC-11メチオニンを対象とし、「L-メチオニン(11C)注射液標準規格」を策定した(「日本核医学会院内製造PET 薬剤基準第2版(2014年2月)」)。さらに改定案を策定した(「日本核医学会院内製造PET 薬剤基準 第3.1版(2015年3月)」)。
その他行政的観点からの成果
本研究班が日本核医学会と連携して構築したPET薬剤製造施設認証とPET撮像施設認証の仕組みは、11C -メチオニン合成装置の先進医療Bにて実施されているほか、平成26年7月に承認された18F-florbetapir合成装置を診療に用いる場合にもこの仕組みが適用されるむね、関係3学会によるガイドラインに記載されることになり、薬事行政的に活用された。
その他のインパクト
アカデミアと企業と規制当局とが情報や意見を交換する場として「PET治験企業懇談会」を設けた。これらは日本核医学会によって運営され、PET薬剤合成装置の承認と普及、およびPET検査の治療薬開発への利用促進に役立つと考えられる。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
9件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
栗原千絵子
米国におけるPET医薬品規制に関する動向.
PET Journal ,  (29) , 65-67  (2015)

公開日・更新日

公開日
2018-02-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201427049Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
5,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 234,359円
人件費・謝金 0円
旅費 1,624,201円
その他 1,988,440円
間接経費 1,153,000円
合計 5,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-