文献情報
文献番号
201427019A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬部外品・化粧品に含有される成分の安全性確保に関する研究
課題番号
H24-医薬-指定-014
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
手島 玲子(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究分担者(所属機関)
- 安達 玲子(国立医薬品食品衛生研究所 代謝生化学部 )
- 伊東 祐二(鹿児島大学大学院理工学研究科 )
- 福冨 友馬(国立病院機構相模原病院臨床研究センター)
- 板垣 康治(北海道文教大学人間科学部)
- 海老澤 元宏(国立病院機構相模原病院臨床研究センター)
- 五十嵐 良明(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部 )
- 松永 佳世子(藤田保健衛生大学医学部皮膚科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
18,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、まず小麦加水分解物に注目し、その製造工程の違いによって生じるアレルギー反応の惹起性について、動物モデルによる生体反応の解析と、ファージディスプレイ法等による網羅的抗原性解析等を実施し検討を行う。次いで、小麦同様、他の原材料による健康被害の発生も予想されることから、国内外の健康被害の状況を調査の上、小麦加水分解物で得られた知見を基に、アレルギー反応の誘起性や成分規格の改定についての検討を行うことを目的とした。
研究方法
本年度は、小麦加水分解の方法による成分の物性変化に関する研究を手島班員が担当し、免疫学的反応についての動物モデルに関する研究を安達班員が担当し、ファージディスプレイを用いた網羅的抗原性の解析を伊東班員が担当し、小麦加水分解物(HWP)を含有する石鹸の使用によるアレルギー発症の事例調査並びに事後の経過観察を松永班員及び福富班員が担当し、医薬部外品等の国内のアレルギー発症のアンケート調査を板垣班員が、医薬部外品等の国内外のアレルギー発症事例の文献調査を海老澤班員が担当し、医薬部外品の物性を考慮した成分規格の検討を五十嵐班員が担当した。
結果と考察
加水分解条件が異なるHWPとして、酸加水分解、アルカリ加水分解に加え酵素加水分解グルテンを調製し、処理方法の違いがタンパク質の物性に及ぼす影響を分析化学的に評価した。分子量に関しては、酵素加水分解物では、酸及びアルカリ加水分解に比べ、低分子化、脱アミド化の程度が低いことが判明した。また、小麦の酵素処理物は酸加水分解物と交差反応性を示したが、アルカリ処理物とは反応しないことが動物実験で明らかとなった。
小麦加水分解物を含有する石鹸の使用によるアレルギー発症の事例調査並びに事後の経過観察による結果からは、2014年10月20日時点、確実例は2111例で、女性2025例(95.9%)、男性 86例(4.1%)であった。なお、当該石鹸は、2011年5月に自主回収が行われ、加水分解コムギ患者群においては石鹸使用中止後、小麦、グルテン特異的IgE抗体価の減少傾向を認め、約4年半で半数が略治となることが期待できたが、抗体が下がらず、症状の再燃をみる症例もみられ、今後の長期にわたる経過観察が必要であることが示された。
小麦加水分解物を含有する石鹸の使用によるアレルギー発症の事例調査並びに事後の経過観察による結果からは、2014年10月20日時点、確実例は2111例で、女性2025例(95.9%)、男性 86例(4.1%)であった。なお、当該石鹸は、2011年5月に自主回収が行われ、加水分解コムギ患者群においては石鹸使用中止後、小麦、グルテン特異的IgE抗体価の減少傾向を認め、約4年半で半数が略治となることが期待できたが、抗体が下がらず、症状の再燃をみる症例もみられ、今後の長期にわたる経過観察が必要であることが示された。
結論
人体に影響を及ぼす化合物やアレルゲンを含有する医薬部外品・化粧品が国内外で製造されており、国内での小麦加水分解物含有石鹸等の使用によるアレルギー発症の事例調査によっても、これらによる健康被害の起きる場合のあることが明らかになった。本年度において、発症後の予後の悪い事例の原因究明並びに感作性の低い小麦加水分解物に特化できる試験法の医薬部外品原料規格への導入を提案することができ、新たなアレルギー発症事例を防止するための方策に進歩がみられた。
公開日・更新日
公開日
2015-04-28
更新日
-