文献情報
文献番号
201426046A
報告書区分
総括
研究課題名
流行の恐れがある病原大腸菌の遺伝学的調査とその食中毒予防・迅速対応に資する情報ネットワーク基盤構築に関する研究
課題番号
H25-食品-若手-018
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
井口 純(国立大学法人宮崎大学 農学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、事例報告数は少ないものの散発事例や食品汚染が報告されている非典型的EHECに注目し、食品や家畜、ヒトなどのフードチェーンに関わる横断的なサンプルから分離された菌株について、『病原因子』と『血清型』の遺伝学的特徴を網羅的に解析し、その情報をデータベース化するとともに、検査現場で実用可能な遺伝学的検査法の整備を行い、包括的な病原大腸菌の食中毒予防・迅速対応に資する情報共有ネットワーク基盤の構築を目指した。
研究方法
標的は家畜・野生動物糞便、食品、ヒト糞便(下痢症などの有症患者および無症状保菌者を含む)から分離された非典型的EHEC、EPEC、EAECとした。平成25年度の研究で実施した584株に、本年度実施した233株を加えた計817株を用いて、既知病原関連遺伝子の分布解析およびO血清群遺伝子型(O-genotype)の判定を行った。
結果と考察
726株の非典型的EHECから98種類のO-genotypeが確認されたことにより、その多様性が認められた。一方で、重症者由来株と動物由来株間で同じ病原関連遺伝子保有パターンを示す10種類のO-genotypeが確認された。これらはそれぞれ同一クローンである可能性があり、広く動物-ヒト間で分布(伝播)している可能性が示唆された。さらに、従来の手法ではO-genotypeが決定しなかった非典型的EHECのO抗原合成遺伝子領域の解析を行い、5種類の新規O-genotypeを特定した。それぞれを特異的に判定するPCR法を開発し、新規O-genotype株の汚染実態も明らかとなった。
結論
本研究で得られた結果は、我が国におけるEHECの汚染状況や動向を把握する上での重要な基盤データになる。O-genotypeの判定は、菌株間のクローン性(系統的関連性)の推測に有効であり、上述した基盤データと分離菌株の判定結果を基に、その病原因子や分離履歴を推測・照合することが可能となる。さらに事例発生時には原因細菌の汚染源や汚染範囲を特定する為の有効な検査手法になる。本研究では検査体制の整備と継続的な情報収集を目指し、E. coli O-genotyping PCRなどの遺伝学的検査法を広く公開し、複数機関で実施できる体制を整備した。以上の成果は、流行の恐れがある病原大腸菌の汚染状況を把握すると共に、事例発生時の迅速な対応をサポートする有効な手法になると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2015-06-09
更新日
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