広域・複雑化する食中毒に対応する調査手法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201426035A
報告書区分
総括
研究課題名
広域・複雑化する食中毒に対応する調査手法の開発に関する研究
課題番号
H26-食品-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
砂川 富正(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 小沢 邦寿(群馬県衛生環境研究所)
  • 野田 衛(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 窪田 邦宏(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 八幡 裕一郎(国立感染症研究所 感染症疫学センター )
  • 岡部 信彦(川崎市衛生研究所)
  • 大西 貴弘(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 齊藤 剛仁(国立感染症研究所 感染症疫学センター )
  • 高橋 琢理(国立感染症研究所 感染症疫学センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は1)広域食中毒疫学調査ガイドライン(ガイドライン)の現場での活用に関する検討,2) 腸管出血性大腸菌感染症(EHEC)散発事例を中心とした原因食品リスクと対策の効果に対する推定,3)ユッケの規格基準改定および牛生レバーの提供禁止の効果,4)NESID登録の食品媒介感染症の把握と解析,5)食品媒介感染症被害実態の推定,6)地域レベルにおける広域食中毒対策方法の改善策の研究,7)自治体におけるEHEC散発事例のリスク推定の試行,8)IS-printing system(IS法)のマイクロチップ電気泳動装置(MultiNA)の適応,9)ウイルス解析による広域事例調査手法検討,10)クドア様症状を示す原因不明食中毒の危害物質探査とした.
研究方法
1)ケーススタディ,シミュレーションによるガイドライン活用の検討,2)症例対照研究による人口寄与危険割合(PAR%)の算出,3)2010年及び2012年以降に算出された散発例のオッズ比から継続的な生または半生の牛肉及び牛レバーのリスクの変化について検討,4)NESID及び自治体公表データから食中毒の情報を解析,5)電話調査による食中毒被害実態推定,6)EHECの早期探知・診断方法の開発,7)症例対照研究によるPAR%の算出,8)MultiNAによるIS法の測定に用いる試薬の検討,9)遺伝子情報収集および解析のためのシステム開発,10)シイラ,ウマヅラハギ検体のPCR検査を実施した.
結果と考察
1)ガイドラインは調査項目の改訂,食品衛生監視員の聞き取り方法の伝承が必要である.2)PAR%は「牛肉(十分に加熱)」が最も大きかった.3)2012年はユッケ及び牛生レバーの対策の効果がみられたが2013年,2014年は生または半生の牛肉・牛レバーの喫食がリスクとなった.生または半生の牛肉・牛レバーのリスクについて改めて普及啓発が重要である.4)腸チフスは2000年以降初めて食中毒事例が発生し, EHECは大規模食中毒や広域事例が発生した.西日本を中心に同一遺伝子株のA型肝炎が流行したが原因は不明であった.今後,NESIDデータを中心にモニタリングと早期検出の方法の検討が継続的に必要である.5)食品由来下痢症患者数は食中毒統計や病原微生物検出情報の数値より大幅に多く,経年変動の評価のため継続的にデータ収集が必要である.6) EHECの早期探知・早期診断システムを構築し,今後活用が期待できる. 7)喫食傾向は全国データに類似,食品取扱従事者への定期検便が感染拡大予防になると考えられた.保育従事者に対し,食品取扱従事者同様の衛生教育を行うことが必要である.8) IS法をMultiNAで測定する場合サンプルを希釈して測定するほうが適切.エキストラバンドは検出位置により誤判定を起こす可能性があり,サンプルの希釈によりエキストラバンドが低減される可能性があり,誤判定を改善する可能性が示唆された.9) 自治体で活用できるデータベースソフトを構築,不具合及び有用性の検証を行うことが必要である.10) DGGE法の活用を検討,シイラからK. minithyrsitesを確認,ウマヅラハギからK. septempunctataを確認,K. septempunctata胞子が検出されない有症苦情事例について特異的抗体の免疫染色を観察,細胞分化前の段階でK. seputempunctataの細胞毒性の検討が必要である.
結論
1) ガイドラインは改定に必要な情報収集,e-learning活用の検討が必要である.2) PAR%の算出は早期対策への方策の検討が必要である.3) 散発のO157はリスクの普及啓発が必要である.4) NESIDに報告された食品媒介感染症の問題点抽出,継続的モニタリングが重要である.5) 食中毒の被害推定はCampylobacter,Salmonella,Vibrio parahaemolyticusが起因する食品由来下痢症患者数が実態に則した値を示唆した.6) 広域事例の早期探知・診断システムは感染の蔓延や二次的被害防止に有効で,市販食材の販売ルート,汚染実態の把握が重要な情報であった. 7) 自治体における症例対照研究で散発例のEHEC対策の評価等への利用が可能である.8) MultiNAでIS法の判定を的確に行うために解析サンプルと併せて測定したladder使用が必要である.9)食品媒介ウイルスの散在性アウトブレイク時に迅速な遺伝学的相同性検査システムが開発できた.10) 原因不明食中毒はDNA解析で原因微生物推定,ウマヅラハギのK. septempunctataの人への影響の検討,細胞分化前段階のK. septempunctataの毒性の検討が必要である.

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201426035Z