文献情報
文献番号
201426015A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中残留農薬等の安全性確保に関する研究
課題番号
H25-食品-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
根本 了(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究分担者(所属機関)
- 坂井 隆敏(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
- 志田 静夏(齊藤 静夏)(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
4,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
食品に残留する農薬等に関するポジティブリスト制度の導入に伴い、約800品目の農薬等が規制対象となった。食品中の残留農薬等の安全性を確保するためには、これら多数の残留農薬等を分析し、精確かつ効率的に分析値を求める必要がある。また、食品中の残留農薬等分析では、食品由来の夾雑成分の影響により精確な分析値を求めることが困難な場合がある。そこで本研究では、残留農薬等の分析に適した1)精確な定量法の確立及び2)効率的・網羅的な分析法の開発について検討した。1)では安定同位体標識標準品(安定同位体)を用いた内標準法を残留農薬等分析に適用する際の標準的使用方法及び評価方法について検討した。2)では①LC-TOF-MS法による残留動物薬分析の検討及び②LC-TOF-MS法による残留農薬一斉分析法の妥当性評価について検討した。
研究方法
1)精確な定量法の確立
安定同位体を用いた内標準法の検討では、スルファジアジン等4化合物とそれらの重水素(d)標識及び炭素13(13C)標識安定同位体を用いて、牛肝臓試料から調製したマトリックス添加標準溶液を絶対検量線法及び内標準法で定量して両者を比較することにより、測定時の試料マトリックスの影響を精確に補正するために留意すべき条件等について考察した。
2)効率的・網羅的な分析法の開発
LC-TOF-MS法による残留動物薬分析の検討として、動物薬89化合物を用いて、残留一斉分析に適したTOF-MS測定条件、LC条件及び定量解析条件について検討し、確立したLC-TOF-MS条件でピーク面積の再現性及び検量線の直線性について評価した。また、LC-TOF-MS法による残留農薬一斉分析法の妥当性評価では、平成25年度に確立した残留農薬一斉分析のLC-TOF-MS条件を用いて、玄米及び大豆を対象に、151農薬について添加濃度0.01 ppmで1日2併行、5日間の妥当性評価試験を行い、LC-TOF-MS法の残留農薬一斉分析へ適用生について検討した。
安定同位体を用いた内標準法の検討では、スルファジアジン等4化合物とそれらの重水素(d)標識及び炭素13(13C)標識安定同位体を用いて、牛肝臓試料から調製したマトリックス添加標準溶液を絶対検量線法及び内標準法で定量して両者を比較することにより、測定時の試料マトリックスの影響を精確に補正するために留意すべき条件等について考察した。
2)効率的・網羅的な分析法の開発
LC-TOF-MS法による残留動物薬分析の検討として、動物薬89化合物を用いて、残留一斉分析に適したTOF-MS測定条件、LC条件及び定量解析条件について検討し、確立したLC-TOF-MS条件でピーク面積の再現性及び検量線の直線性について評価した。また、LC-TOF-MS法による残留農薬一斉分析法の妥当性評価では、平成25年度に確立した残留農薬一斉分析のLC-TOF-MS条件を用いて、玄米及び大豆を対象に、151農薬について添加濃度0.01 ppmで1日2併行、5日間の妥当性評価試験を行い、LC-TOF-MS法の残留農薬一斉分析へ適用生について検討した。
結果と考察
1)精確な定量法の確立
絶対検量線法で定量した場合には、対象化合物や測定時のグラジエント条件によっては、回収率が100%とならず、測定の際に試料マトリックスの影響を受けていることが推察された。安定同位体を用いた内標準法で定量した場合、13C標識安定同位体を使用した際には、各グラジエント条件下、各対象化合物についてほぼ100%の回収率が得られた。一方、d標識安定同位体を使用した際には、用いるグラジエント条件や対象化合物によっては、回収率が100%にならない場合があることが確認され、このような場合には精確な定量値が得られないことが示唆された。
2)効率的・網羅的な分析法の開発
①LC-TOF-MS法による残留動物薬分析の検討では、幅広い動物薬に適用可能なTOF-MS測定条件として、キャピラリー電圧1000V、コーン電圧20V、コリジョンエネルギー5eV、脱溶媒ガス(N2)流量800L/h、脱溶媒温度450℃が得られた。LC条件については、最適な注入溶媒としてアセトニトリル/水(20:80)が、注入量として3μLが得られた。定量の抽出質量幅については、より選択性の高い10 mDaを選択した。
②LC-TOF-MS法による残留農薬一斉分析法の妥当性評価では、検討した151農薬のうち十分な測定感度が得られなかった農薬及び残留が見られた農薬を除いた約145農薬のうち、玄米では約94%、大豆では約93%の農薬で、妥当性評価ガイドラインの目標値を満たした。また、試料マトリックスの測定への影響(溶媒標準溶液のピーク面積に対するマトリックス添加標準溶液のピーク面積の比)を求めたところ、玄米及び大豆いずれも、検討農薬の9割以上で0.8~1.1となり、大きな影響は認められなかった。
絶対検量線法で定量した場合には、対象化合物や測定時のグラジエント条件によっては、回収率が100%とならず、測定の際に試料マトリックスの影響を受けていることが推察された。安定同位体を用いた内標準法で定量した場合、13C標識安定同位体を使用した際には、各グラジエント条件下、各対象化合物についてほぼ100%の回収率が得られた。一方、d標識安定同位体を使用した際には、用いるグラジエント条件や対象化合物によっては、回収率が100%にならない場合があることが確認され、このような場合には精確な定量値が得られないことが示唆された。
2)効率的・網羅的な分析法の開発
①LC-TOF-MS法による残留動物薬分析の検討では、幅広い動物薬に適用可能なTOF-MS測定条件として、キャピラリー電圧1000V、コーン電圧20V、コリジョンエネルギー5eV、脱溶媒ガス(N2)流量800L/h、脱溶媒温度450℃が得られた。LC条件については、最適な注入溶媒としてアセトニトリル/水(20:80)が、注入量として3μLが得られた。定量の抽出質量幅については、より選択性の高い10 mDaを選択した。
②LC-TOF-MS法による残留農薬一斉分析法の妥当性評価では、検討した151農薬のうち十分な測定感度が得られなかった農薬及び残留が見られた農薬を除いた約145農薬のうち、玄米では約94%、大豆では約93%の農薬で、妥当性評価ガイドラインの目標値を満たした。また、試料マトリックスの測定への影響(溶媒標準溶液のピーク面積に対するマトリックス添加標準溶液のピーク面積の比)を求めたところ、玄米及び大豆いずれも、検討農薬の9割以上で0.8~1.1となり、大きな影響は認められなかった。
結論
1)精確な定量法の確立
牛の肝臓試料から調製したマトリックス添加標準溶液を3つの異なるグラジエント条件で測定し、絶対検量線法及び内標準法で定量して比較することで、内標準法を用いて精確な分析値を得るために必要な条件等を検討した。その結果、d標識安定同位体と13C標識安定同位体とでは補正効果に違いが見られる場合があること、またその原因について考察した。
2)効率的・網羅的な分析法の開発
①LC-TOF-MS法による残留動物薬分析法の検討では、一斉分析に適したTOF-MS測定条件(キャピラリー電圧、コーン電圧、コリジョンエネルギー、脱溶媒ガス流量、脱溶媒温度)、LC条件(注入溶媒及び注入量)及び定量解析条件(抽出質量幅)を確立した。
②LC-TOF-MS法による残留農薬一斉分析法の妥当性評価では、LC-TOF-MS法は、一律基準濃度において、残留農薬一斉分析(農産物:穀類・豆類)へ適用可能であることが示された。
牛の肝臓試料から調製したマトリックス添加標準溶液を3つの異なるグラジエント条件で測定し、絶対検量線法及び内標準法で定量して比較することで、内標準法を用いて精確な分析値を得るために必要な条件等を検討した。その結果、d標識安定同位体と13C標識安定同位体とでは補正効果に違いが見られる場合があること、またその原因について考察した。
2)効率的・網羅的な分析法の開発
①LC-TOF-MS法による残留動物薬分析法の検討では、一斉分析に適したTOF-MS測定条件(キャピラリー電圧、コーン電圧、コリジョンエネルギー、脱溶媒ガス流量、脱溶媒温度)、LC条件(注入溶媒及び注入量)及び定量解析条件(抽出質量幅)を確立した。
②LC-TOF-MS法による残留農薬一斉分析法の妥当性評価では、LC-TOF-MS法は、一律基準濃度において、残留農薬一斉分析(農産物:穀類・豆類)へ適用可能であることが示された。
公開日・更新日
公開日
2015-05-18
更新日
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