文献情報
文献番号
201425018A
報告書区分
総括
研究課題名
じん肺の診断基準及び手法に関する調査研究
課題番号
H26-労働-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
芦澤 和人(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科臨床腫瘍学分野)
研究分担者(所属機関)
- 岸本 卓巳(岡山労災病院 呼吸器内科学)
- 荒川 浩明(獨協医科大学病院 放射線診断学)
- 大塚 義紀(北海道中央労災病院 呼吸器内科学)
- 加藤 勝也(川崎医科大学付属川崎病院 放射線医学(画像診断2))
- 高橋 雅士(医療法人友仁会 友仁山崎病院)
- 仁木 登(徳島大学 大学院ソシオテクノサイエンス研究部)
- 野間 恵之(天理よろづ相談所病院 放射線部 診断部門)
- 本田 純久(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科医学統計学)
- 五十嵐 中(東京大学大学院 医歯学総合薬研究科 放射線診断治療学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動
研究分担者 加藤 勝也
岡山大学(平成26年4月1日~8月31日)→川崎医科大学(平成26年9月1日以降)
所属機関移動
研究分担者 高橋 雅士
滋賀医科大学(平成26年4月1日~8月3日)→友仁山崎病院(平成26年8月4日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
平成22年5月のじん肺法における、じん肺健康診断等に関する検討会の報告書のなかで、胸部CT検査に関する3つの課題(1. 放射線被曝量が、単純X線写真に比べて高いこと、2. 事業者がじん肺健康診断の費用を負担すること、3. 読影技術の普及が必要であること)が示されており、これらについて検討する必要がある。
本研究では、胸部CT検査を行うことで、じん肺の診断の確信度が有意に上昇する症例、或いは胸部CT検査を用いなければ、的確な診断ができない症例の収集・分析を行い、胸部CT検査の有用性を検証し、じん肺健康診断における適切な診断基準及び手法の確立を目的とする。
本研究では、胸部CT検査を行うことで、じん肺の診断の確信度が有意に上昇する症例、或いは胸部CT検査を用いなければ、的確な診断ができない症例の収集・分析を行い、胸部CT検査の有用性を検証し、じん肺健康診断における適切な診断基準及び手法の確立を目的とする。
研究方法
本年度は、今後の研究を進めていく上で重要となるデータベースの構築を主に行う。
2つの労災病院から、複数の種類のじん肺症例と粉じん吸入対照群(PR0/1以下)の胸部単純X線写真およびCT画像の収集を行う。収集された珪肺症例のレビューによりPR0/1,1/0の診断の妥当性を検証する。さらに、珪肺のPR0/1と1/0の鑑別に焦点をおき、CTにおける粒状影の定量化、コンピューター支援診断の応用を試みる。珪肺以外で溶接工肺や、い草染土じん肺、金属じん肺等の多様な陰影に関してもCT 所見を検討する。
質的診断に関しては、珪肺とサルコイドーシス・肺ランゲルハンス細胞組織球症等の鑑別が重要である。読影実験を行って鑑別診断における胸部CTの有用性を検討するために、鑑別診断すべき疾患群の画像も収集する。
さらに、胸部CT検査による被爆リスクに関する知見を収集する。最新CTでは、新たな逐次近似再構成法により、画質を保持したままで、胸部単純X線撮影と同程度の、低線量での撮像が可能となってきた。逐次近似再構成法による、低線量CT画像と通常線量CT画像における診断能に差がないかを、読影実験にて検討するために、両方の画像の収集を行う。
また、じん肺診査へのCT導入を考慮する前段階として、じん肺診査の過程で、地方じん肺診査医が胸部単純写真のみで診断を下している現状で、どの様な問題がどの程度存在するのかを明らかにすることを目的として、来年度より全国の診査医に対してアンケートを採ることを計画した。
2つの労災病院から、複数の種類のじん肺症例と粉じん吸入対照群(PR0/1以下)の胸部単純X線写真およびCT画像の収集を行う。収集された珪肺症例のレビューによりPR0/1,1/0の診断の妥当性を検証する。さらに、珪肺のPR0/1と1/0の鑑別に焦点をおき、CTにおける粒状影の定量化、コンピューター支援診断の応用を試みる。珪肺以外で溶接工肺や、い草染土じん肺、金属じん肺等の多様な陰影に関してもCT 所見を検討する。
質的診断に関しては、珪肺とサルコイドーシス・肺ランゲルハンス細胞組織球症等の鑑別が重要である。読影実験を行って鑑別診断における胸部CTの有用性を検討するために、鑑別診断すべき疾患群の画像も収集する。
さらに、胸部CT検査による被爆リスクに関する知見を収集する。最新CTでは、新たな逐次近似再構成法により、画質を保持したままで、胸部単純X線撮影と同程度の、低線量での撮像が可能となってきた。逐次近似再構成法による、低線量CT画像と通常線量CT画像における診断能に差がないかを、読影実験にて検討するために、両方の画像の収集を行う。
また、じん肺診査へのCT導入を考慮する前段階として、じん肺診査の過程で、地方じん肺診査医が胸部単純写真のみで診断を下している現状で、どの様な問題がどの程度存在するのかを明らかにすることを目的として、来年度より全国の診査医に対してアンケートを採ることを計画した。
結果と考察
じん肺症例と粉じん吸入対照群(PR0/1以下)の胸部単純X線写真およびCT画像の後ろ向き収集が終了した。溶接工肺や、い草染土じん肺、金属じん肺等のその他のじん肺に関しては、中国労働衛生協会の協力により、溶接工肺の収集がほぼ終了した。質的診断に関しては、じん肺と鑑別すべき疾患群を検討し、サルコイドーシス・肺ランゲルハンス細胞組織球症、粟粒結核等の疾患を挙げ、それらの症例の収集を行った。また、岡山労災病院のじん肺症例で、逐次近似再構成法による低線量CT画像と通常線量CT画像を撮像し、前向きに画像データを収集した。これらの画像データの内、1mm再構成厚のデータに関しては、コンピューター支援診断の応用を試みた。
じん肺症例(PR0/1)と粉じん吸入対照群(PR0/1)の胸部単純X線写真における上肺野主体の粒状影の差はわずかであり、判定は容易ではない。胸部CTでは、いずれも粒状影は認められるものの、その違いは胸部単純写真よりは大きい。今後、PR0/1,1/0症例を用いて読影実験を行い、PR0/1,1/0の判定における胸部CT検査の有用性を検討する。
じん肺と鑑別診断すべき症例に関する研究では、今後、読影実験を行って質的診断における胸部CTの有用性を検討する。
じん肺症例で、逐次近似再構成法による低線量CT画像と通常線量CT画像を撮像し、前向きに画像データを収集した。ごく少数例の検討では、いずれの画像でも粒状影は確認できるが、低線量の方が背景のノイズが多いため認識しづらい傾向がみられた。今後は多数例で読影実験を施行し、低線量CTのじん肺診断能を検証する予定である、また、これらの画像データの内、1mm再構成厚のデータに関しては、コンピューター支援診断の応用を試みた。コンピューター支援診断は、3mm以上の粒状影に対しては良好な検出能を示した。今後は、より小さな径1-3mmの粒状影の検出法を確立してシステム化を目指すつもりである。
地方じん肺診査医へのアンケート調査に関しては、各都道府県の労働局に対して本年2月にアンケートの依頼状を送付した。本年4月より1年間の予定で開始し、6ヶ月に一度、回収することにしている。
じん肺症例(PR0/1)と粉じん吸入対照群(PR0/1)の胸部単純X線写真における上肺野主体の粒状影の差はわずかであり、判定は容易ではない。胸部CTでは、いずれも粒状影は認められるものの、その違いは胸部単純写真よりは大きい。今後、PR0/1,1/0症例を用いて読影実験を行い、PR0/1,1/0の判定における胸部CT検査の有用性を検討する。
じん肺と鑑別診断すべき症例に関する研究では、今後、読影実験を行って質的診断における胸部CTの有用性を検討する。
じん肺症例で、逐次近似再構成法による低線量CT画像と通常線量CT画像を撮像し、前向きに画像データを収集した。ごく少数例の検討では、いずれの画像でも粒状影は確認できるが、低線量の方が背景のノイズが多いため認識しづらい傾向がみられた。今後は多数例で読影実験を施行し、低線量CTのじん肺診断能を検証する予定である、また、これらの画像データの内、1mm再構成厚のデータに関しては、コンピューター支援診断の応用を試みた。コンピューター支援診断は、3mm以上の粒状影に対しては良好な検出能を示した。今後は、より小さな径1-3mmの粒状影の検出法を確立してシステム化を目指すつもりである。
地方じん肺診査医へのアンケート調査に関しては、各都道府県の労働局に対して本年2月にアンケートの依頼状を送付した。本年4月より1年間の予定で開始し、6ヶ月に一度、回収することにしている。
結論
本研究のデータベース構築のため、じん肺症例と粉じん吸入対照群、じん肺と鑑別すべき疾患群の胸部単純X線写真およびCT画像の収集を行った。今後は、データベースを用いて、複数の読影実験やコンピューター支援診断の応用を試み、胸部CT検査の有用性を検証する予定である。
公開日・更新日
公開日
2015-06-08
更新日
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