中小企業用産業保健電子カルテの開発とそれによる効果的・効率的な産業保健手法に関する検討

文献情報

文献番号
201425010A
報告書区分
総括
研究課題名
中小企業用産業保健電子カルテの開発とそれによる効果的・効率的な産業保健手法に関する検討
課題番号
H25-労働-一般-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
大神 明(産業医科大学 産業生態科学研究所作業関連疾患予防学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 喜多村紘子(産業医科大学 産業生態科学研究所作業関連疾患予防学研究室 )
  • 只野 祐(公社)全国労働衛生団体連合会)
  • 小林祐一(産業医科大学・産業生態科学研究所・産業保健経営学研究室)
  • 櫻木園子(一般財団法人京都工場保健会)
  • 永田智久(産業医科大学・産業生態科学研究所・産業保健経営学研究室)
  • 塩田直樹(産業医科大学・小児科学)
  • 中尾 智(産業医科大学・産業生態科学研究所・産業保健管理学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、国内中小企業における健康診断の活用実態を調査し、中小企業に提供可能な健康診断統合電子カルテあるいはツールを開発し、より実効的な産業保健サービスの定着と産業保健活動の充実を図る事を目的とする。
研究方法
(1)事業所における健康診断システム活用に関する実態調査:本研究の基礎情報の確保及び産業保健サービスの重要な手法である保健指導の中小企業における実施の促進を図る方策の開発の基礎資料を得るため、企業外健診機関における健康診断及び保健指導の実態等について質問票による調査を行った。
(2)保健指導マニュアルの製作と汎用性・低コスト性を重視した産業保健電子カルテおよびツール(インダストリアルパーソナルヘルスレコード:iPHR)・システムの開発:汎用性・低コスト性を重視したiPHR・システムの開発を行った。iPHRは、特に中小企業における嘱託産業医が従業員個々の就業判定・健診事後措置を行うにあたり容易に扱えることを目的とした。また、(1)における調査結果から、健診機関は保健指導について安衛法に基づく保健指導は十分には実施されておらず、保健指導実施のためのマニュアルがない、などの環境整備の課題など、健診事後措置に関するいくつかの課題が明らかになった結果を踏まえ、平成26年度では労働者を対象とした健診結果に基づく保健指導マニュアルの作成を試みた。
結果と考察
 電子カルテのパイロット版としては、汎用性を重視し、産業保健業務を支援するデータベースを中小企業でも使用可能なように市販のアプリケーション(FileMaker Pro)を使用した。上記(1)の調査結果より、汎用性の高いスタンドアローンのソフトウエア使用をベースにしながら、PHRおよび産業保健版電子カルテのプロトタイプをデザインした。
 形態としては、企業内にスタンドアローン形式で設置する方法と、共有サーバにアップロードしてクラウド形式で使用できる方法で運用できるようにした。現在のデータベースは、1ファイルの容量について、システム上の限界があるため、大容量を運用可能なデータベースを再設計する将来に備えて、ユーザーニーズの集約物を集約しながら、汎用性のある形式に具現化しておくことが近々の課題であると思われた。特に、嘱託産業医が使用可能なように、標準的な産業医意見書の記載内容や操作手順がスムーズに流れるように改善することで、中小企業の産業保健サービス自体の品質向上も期待できると思われる。今後は、テストユーザーの声を聞きながら改善していく必要性があると思われる。
 データベースへのセキュリティを考慮したネットワークについては、産業医主導型のiPHRの実証実験を想定し、中小企業と産業医の間を安価、簡便、セキュアに接続するVPNによるネットワークの構築を試みた。Raspberry PiおよびSoftether VPNを用いることによりサーバーについては安価で構築が可能であった。セキュリティについてもAES256bit方式を採用することで安全性の確保に努めた。Softether VPNによりIT管理者がいないような中小企業においてもNATやファイアーウォールを超えてVPN接続が可能であり、導入の簡便性に貢献すると思われた。
 また、前年度研究を踏まえ、「労働者を対象とした保健指導の手引」の作成に取り組んだ。今年度は、保健指導マニュアルのパイロット版を完成させ、最終年度においては、産業保健電子カルテシステムとの連動を想定して、保健指導マニュアルの内容をさらに検討しコード化し、健診事後措置としての保健指導を経時的に記録することを企画している。この保健指導に当たっては、管理する側(事業者、産業保健専門職)と管理される側(本人)とが、同じ目的と認識の下でリスク対応可能なように、健診自体の未受診、精密検査等の未受診、過重労働面談の未実施等の現状を、事業所としてのリスクピラミッドとして見える化することも目指している。
結論
 1.汎用性・低コスト性を重視した産業保健電子カルテおよびツール(iPHR)・システムの開発を行い、パイロット版とセキュリティ対策を講じたネットワーク作成を行った。
 2.「労働者を対象とした保健指導の手引」の作成のパイロット版作成を行い、健診事後措置としての保健指導を経時的に記録することを企画した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201425010Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,900,000円
(2)補助金確定額
3,900,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 176,390円
人件費・謝金 120,000円
旅費 1,354,000円
その他 1,349,610円
間接経費 900,000円
合計 3,900,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2016-03-01
更新日
-