作業実態に応じた効果的なVOC発散防止・抑制方法に関する調査研究

文献情報

文献番号
201425009A
報告書区分
総括
研究課題名
作業実態に応じた効果的なVOC発散防止・抑制方法に関する調査研究
課題番号
H25-労働-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
米持 真一(埼玉県環境科学国際センター 大気環境担当)
研究分担者(所属機関)
  • 名古屋 俊士(早稲田大学理工学術院)
  • 村田 克((財)労働科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,080,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1.平成24年から施行された有機溶剤中毒予防規則等の一部改正省令に係る施策について、『局所排気装置等以外の発散防止・抑制措置』の効果的な導入推進のため、米国における換気装置等の性能要件や安全衛生保全技術・手法について情報を整理した。
2.昨年度検討したシリカゲル光触媒による処理効率の高い分解装置設計を目的とした実験を行った。反応容器接続方法や複数のシリカゲル光触媒の充填により処理効率を検討した。
3.開発した光触媒分解装置による循環式処理について、吸着・分解特性を把握し、現場適用に向けた知見を得るため有機溶剤の分解実験を行った。
4.金属酸化物触媒を用いた分解性能を確認するため、各種有機物質の分解処理を検討した。
研究方法
1:(1)平成26年5月30日~6月6日に、テキサス州サンアントニオへ出張し、5月31日~6月5日に行われたAIHceに参加し、最新の研究事例と情報収集を行った。(2)平成27年1月5日~10日に、オハイオ州シンシナティとペンシルベニア州ピッツバーグのNIOSHを訪問し、ヒアリングや施設見学を行い、米国の安全衛生保全技術・手法等について情報を得た。
2:(1)複数の反応容器を用いたCH2Cl2の処理実験により、吸着・分解性能、完全分解率を検討した。(2)反応容器の接続方法をCH2Cl2とトルエンの分解により検討した。(3) 直列接続した反応容器に、複数のシリカゲル光触媒を充填し、CH2Cl2処理実験を行った。
3:開発した分解装置を用いた循環式処理について、各種有機溶剤に対する分解実験を行った。
4:TiO2-ZrO2-MoO3複合金属酸化物触媒を用いた触媒燃焼法について、昨年度検討していない有機溶剤およびホルムアルデヒド、塩素系有機溶剤に対する分解実験を行い、またCO2転化率測定と分解後ガスの定性分析により分解状況を確認した。
結果と考察
1:米国では、OSHAによるStandardと、ACGIHによるRecommended Practiceが存在する。更に合衆国連邦政府レベルのStandardと各州政府が独自に制定するStandardがあり、ACGIHのRecommended Practiceは数年おきに改定される。米国のVentilation Systemは、我が国と比べ特段に技術的優位ではないと考えられる。
2:仕切り板を5枚とした場合に180分後の残存率は最も低く、完全分解率は高い値を示した。反応容器の接続方法は、処理効率では直列が適し、光触媒はQ-3とQ-15が濃度低下量の点で最適であった。3:トリクロロエチレンを除く5物質に対し、6時間以内に廃ウエス入れ容器内の濃度を管理濃度未満まで低減でき、完全分解率も安定していた。イソプロピルアルコールなどの吸着しやすい物質では、容器内の初期濃度が高くても短時間で管理濃度未満に低減し、時間を掛ければ完全分解が可能と考えられる。
結論
1:勧告などに示された事例は、我が国の局所排気装置等以外の発散防止・抑制措置の導入上参考になる。英国の労働安全衛生制度に比して、米国の基準類整備や人材養成の方向性や考え方は、我が国でも導入が容易と考えられる。
2:シリカゲル光触媒を活かし、印刷工場の廃ウエス入れに接続する分解装置を作製した。光触媒を充填する処理容器は、仕切り板を増やすことで有機溶剤ガスとの接触効率が高まり処理効率が増大した。A型シリカゲルとB型シリカゲルをそれぞれ用いた触媒を組合せて充填すると最も処理効率が高くなった。
3:シリカゲル光触媒を用いて開発した分解装置は、印刷工場での廃ウエス入れの有機溶剤処理に有効と考えられる。シリカゲル光触媒の特性から、工場稼働中はシリカゲルの吸着力で気相中有機溶剤濃度を低減させ、稼働後に光触媒の分解力でCO2まで無害化できるシステムが最適である。今後、適用可能な有機溶剤数を増やし、現場に近い状況での検討が重要である。
4:金属酸化物触媒を用いた分解処理について、昨年度検討しなかった溶剤を対象として管理濃度の10倍から1/10倍未満までの分解を達成できた。ホルムアルデヒドに対しても有用な分解条件を検討し、ギ酸などの副生成物の発生がなく、8時間にわたり0.01ppm未満の濃度で安定した分解を実現できた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201425009B
報告書区分
総合
研究課題名
作業実態に応じた効果的なVOC発散防止・抑制方法に関する調査研究
課題番号
H25-労働-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
米持 真一(埼玉県環境科学国際センター 大気環境担当)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1.平成24年7月から施行された有機溶剤中毒予防規則等の一部改正省令に係る施策について、『局所排気装置等以外の発散防止・抑制措置』の今後の効果的な導入と推進等に資するため、英国において約40年前に性能要件基準を導入した経緯や課題を、米国において換気装置等の性能要件や安全衛生保全技術等の情報を収集する。
2.中小規模の工場に対して導入可能な「局所排気装置以外の発散防止抑制措置」として、光触媒および金属酸化物触媒を用いた処理効率の高い溶剤系VOC分解処理装置の開発を行う。
研究方法
1-1.英国における情報収集:平成25年11月20日にマンチェスター大学のAdrian A.Hirst博士を訪問し、1974年の労働安全衛生法制定、1988年のCOSHH制定の経緯や運用上の課題、専門家育成について、11月21日には、安全衛生研究所(HSL)のJohn Saunders氏を訪問し、労働衛生専門家育成や事故調査と原因究明、作業環境モニタリング、現場での有害物質低減手法についてヒアリングを行った。
1-2. 米国における情報収集:(1)平成26年5月31日~6月5日に、米国テキサス州サンアントニオで開催されたAIHceに参加し、米国の産業換気技術について最新の研究報告や展示会場における技術情報収集を行った。(2)平成27年1月5日~10日にオハイオ州シンシナティおよびペンシルベニア州ピッツバーグのNIOSHを訪問し、専門家へのヒアリングや研究施設見学を行い、安全衛生保全技術・手法等の情報収集を行った。
2-1. シリカゲル光触媒を用いた溶剤系VOCの処理:光触媒の処理効率を改善するため、光触媒の分解作用とシリカゲルの吸着作用を併せ持った「シリカゲル光触媒」の開発を行い、種々の条件検討を経て、循環式処理によるVOC分解実験を行った。
2-2. 金属酸化物触媒を用いた溶剤系VOCの処理:TiO2-ZrO2-MoO3複合金属酸化物を用いて、VOCの完全分解処理を行うための実験を主に有機塩素系溶剤を対象に行った。
結果と考察
1-1. 英国の労働安全衛生法は、制定後すぐに状況が変わった訳では無く、以前の規制が残り続けCOSHH制定後から徐々に変化した。これは新しい概念が社会に浸透する時間が必要であったためであった。
1-2. 米国の産業換気技術は、OSHAによるStandardとACGIHによるRecommended Practiceが存在する。更に、合衆国連邦政府レベルのStandardと各州政府が制定するStandardがあり、ACGIHのRecommended Practiceは数年おきに改定される。数千名以上のIndustrial Hygienistが、活動している。換気システムは、日本のものと比べて特段に優位ではなかった。
2-1. シリカゲルに光触媒を担持した「シリカゲル光触媒」をゾルゲル法で作製した。シリカゲル表面は、光触媒担持により約50%程度減少した。単層充填により、吸着力、分解力が高まった。仕切り板を5枚配置すると180分後のVOC残存率が最も低くなり、完全分解率は高くなった。VOCは主にジクロロメタン、アセトン、トルエンを用いた。
2-2. TiO2-ZrO2-MoO3複合触媒を用いて、分解温度550℃、流量1.0L/min、分解時間60分で検討を行い、VOCは管理濃度の10倍から1/10未満まで低減できた。CO2転化率を測定した結果、四塩化炭素、クロロホルムについては完全分解を確認した。またホルムアルデヒドでは、ギ酸等の副生成物の生成が無く、長時間にわたり安定した分解が可能であった。
結論
1.英国・米国における情報収集
平成25年度に実施した英国マンチェスター大学及びHSL訪問により、英国の労働安全衛生大意型を大きく変えた、労働安全衛生法およびCOSHHの制定の経緯や、運用上に課題、専門家育成、事故原因究明、リスクアセスメントについて情報ができた。また、平成26年度に実施した米国NIOSH訪問により、米国の産業換気手法について最新の情報を収集することができた。
2. 中小規模工場に導入可能な「局所排気装置以外の発散防止抑制措置」
シリカゲル光触媒および複合金属酸化物触媒を用いた溶剤系VOCの分解処理について検討を行った。それぞれの特徴を明らかにすることで、充填方法、接続方法、分解条件等について最適化を進めた。分解処理において課題となる副生成物の確認と完全分解について評価を行った結果、前者では工場稼働中にはシリカゲルの吸着力により気相中濃度の低減をはかり、稼働後は光触媒の分解力で二酸化炭素にまで無害化できるシステムを提案できる可能性が示された。今後はVOCの種類を増やすとともに、現場での適用性について更に評価を進めていくことが必要と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201425009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
"英国の労働安全衛生法、COSHHに関する情報を収集した。米国NIOSH訪問により、米国の産業換気手法の最新情報を収集した。
中小規模工場を対象とする「局所排気装置以外の発散防止抑制措置」を検討し、シリカゲル光触媒、複合金属酸化物触媒を用いたVOC処理を検討した。工場稼働中にシリカゲルにより濃度の低減を図り、稼働後に光触媒によりCO2まで無害化できる可能性が示された。以上の研究により論文12報を発表した。"
臨床的観点からの成果
該当なし
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
平成24年に有機則等が一部改正され、局排等以外の発散防止・抑制装置の導入が可能とされた。本研究は、本改正に対応した発散防止・抑制システムを検討したものであり、今後の実証試験の成果が提案できる可能性がある。
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
11件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2016-04-18
更新日
-

収支報告書

文献番号
201425009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,000,000円
(2)補助金確定額
4,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,285,357円
人件費・謝金 0円
旅費 1,432,142円
その他 362,779円
間接経費 920,000円
合計 4,000,278円

備考

備考
交付額を超える278円の出所は預金利子、貯金利息

公開日・更新日

公開日
2016-05-23
更新日
-