文献情報
文献番号
201425002A
報告書区分
総括
研究課題名
大学等における効果的な安全教育プログラムに関する研究
課題番号
H24-労働-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
大久保 靖司(東京大学 環境安全本部)
研究分担者(所属機関)
- 刈間 理介(東京大学 環境安全研究センター)
- 森 晃爾(産業医科大学 産業生態科学研究所)
- 福田 隆文(長岡科学技術大学 技術経営研究科)
- 大島 義人(東京大学 新領域創成科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
3年間の研究によって高等教育機関において安全意識・感度の高い人材の育成と社会への輩出を行うための、在学期間中の安全に関する教育の方策について検討を行うことを目的とする。
研究方法
安全な社会の基礎となる人材を育成するためには、①有効な安全教育プログラム、②安全教育の効果の評価方法の確立、③国際化への対応が求められる。本研究では、①学生を対象とした安全教育の実態(平成25年度)と好事例の収集(平成24、25、26年度)、②安全教育を受けた学生の安全意識・感性に与える短期影響調査(平成24、25年、26年度)、③社会人となった既卒生の後ろ向き追跡調査(平成24年度)、④企業の大学教育に求めるニーズの聞き取り調査、⑤大学における安全教育の日・欧米比較検討(平成24、25年度)、⑥安全衛生専門職育成における安全教育の実態(平成25年度)を調査し、加えて安全教育の効果と評価についての系統的文献調査により、安全教育についての情報及びエビデンスを集約する。この結果を基に、高等教育機関における安全教育のあり方と安全管理の基礎教育プログラムについて提言をとりまとめ、モデルとなる教育プログラム等の公開を行う
結果と考察
①平成25年度に引き続き、大学における安全教育としの好事例の収集のために5大学に対して聞き取り調査を行った。その結果、社会人としての安全意識の素養育成を目的とした教育カリキュラムの体系的な構築が可能であることが示された。教育にいてはカリキュラムや資格制度との連動等の工夫が受講者数増加に効果的であることが示唆された。教育は教養課程の基礎、教育博士課程等の実践力養成、マネジメント力を育成する体系的教育に類別され、教育内容・方法は、受講者参加型、Project Based Learning(PBL)が多数認められた。教育の評価は、少なかった。②企業から見た安全教育に対する認識の聞き取り調査の結果では安全衛生法の基礎知識の期待があり、災害の模擬体験装置による教育の結果、事故とその被害の大きさについての理解を誘導できることが示された。また、職業人教育における安全基礎として教えるべき事項を抽出し授業構成案を作成した。③専門職に対する教育として、現在行われている大学等での安全教育が実務上の有効性について調査した結果、有効であったものとして「リスクアセスメントや安全関連法令、マネジメントシステムの知識」、「ヒューマンファクターやヒューマンエラーの概念理解」の2テーマ、学んでおくべきものとして「安全対策の効果の可視化の技術」、「教育手法や意識づけの手法」、「工学知識や工程理解」、「安全分野に関連した英語」の4テーマが抽出された。④労働衛生職に対して実務上必要となる労働安全に関する知識技能の調査の結果、実務において使用した経験のある及び必要性が高いと考える労働安全に関する知識・技能は、労働衛生や医学との関連性が高いものと発生頻度の高い事項であった。また、労働安全に関する知識や技能は重要と考えていたが、労働安全に関する教育の経験がないことが示された。⑤英国の大学におけるリスクアセスメント教育の効果についての検討の結果、リスクアセスメントを基礎とした安全教育が、研究の安全確保に寄与し、安全に対する素養を有した人材育成にも貢献していることを示唆された。⑥化学物質の構造と危険有害性との関係に関する体系的な学習が教育期間に比例して知識の獲得や感性の醸成に影響していることが示された。これらの調査結果を検討し、日本の大学等における安全教育のであることから大学等における学生の安全教育のためのガイドラインを作成した。
結論
安全な社会の構築のための人材育成としての大学における安全衛生教育については、その効果が期待され、そのカリキュラムの構築の可能性は示唆されたが、実際に大学教育に含めて行っている大学は少ない。その中でも、教育手法の工夫や企業からのニーズなどを取り込んだカリキュラムを作成している大学もあり、国立大学協会など大学経営の観点からカリキュラムの整備が進められている。これらを参考に、モデルとなるカリキュラムを提案した。これらを参考として全国の大学において安全衛生教育の充実が図られることが期待される。
公開日・更新日
公開日
2015-06-12
更新日
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