文献情報
文献番号
201424041A
報告書区分
総括
研究課題名
医師臨床研修の到達目標とその評価の在り方に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H26-医療-指定-028
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
福井 次矢(聖路加国際国際大学 聖路加国際病院)
研究分担者(所属機関)
- 大滝 純司(北海道大学大学院 医学研究科 医学教育推進センター)
- 高橋 理(聖ルカ・ライフサイエンス研究所 臨床疫学センター)
- 野村 英樹(杏林大学 医学部 総合医療学)
- 奈良 信雄(東京医科歯科大学 医歯学教育システム研究センター)
- 前野 哲博(筑波大学 医学医療系臨床医学域)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
1,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関して、平成25年12月にまとめられた医道審議会医師臨床研修部会報告書において、次回の改定時には見直すこととされている。本研究は、到達目標とその評価を見直す過程で必要になると考えられる情報を収集し、見直しの議論を建設的かつ効率的に進めるうえで有用と考えられる具体的な提案を行うことを目的とする。
研究方法
Ⅰ 到達目標・評価の見直しのための情報収集
(1)到達目標とその評価の現状について、大学病院を含む臨床研修病院の研修プログラム責任者や指導医、研修医を対象に、定性的方法(フォーカスグループインタビュー)と定量的方法(調査票を郵送ないし電子メールで配信)を用いて情報収集を行った。(2)到達目標と2年間の研修修了時の臨床能力や経験症例との乖離の有無について、平成14年度以降断続的に行われている臨床研修医アンケート調査の結果に基づいて考察した。(3)医師養成過程全体の中で卒後臨床研修到達目標の位置づけを理解する目的で、卒前教育におけるモデル・コア・カリキュラム、医師国家試験出題基準、卒後臨床研修到達目標の各項目に係る対応表を作成した。(4)医師のプロフェッショナリズムについて、このテーマに係る教育について検討している国内外の学術・職能団体の活動内容の情報収集を行った。(5)疾病構造の変化に関する推定は、わが国の人口動態(厚生労働省大臣官房統計情報部)のデータに基づいた。
Ⅱ 見直しの提案策定に向けた議論
本研究の研究代表者、研究分担者、研究協力者が参集した班会議を5回開催し、収集した情報に基づいて、将来の見直しの議論に有用と考えられる提案の策定に向けて意見を交わした。
(倫理面への配慮)
フォーカスグループインタビューや調査票を用いた情報収集については、各研究分担者の所属施設において、研究倫理審査委員会の承認を得た。その他の情報収集は、既存の公開データあるいは他の研究で行われたデータを用いるもので、倫理的な問題はない。
(1)到達目標とその評価の現状について、大学病院を含む臨床研修病院の研修プログラム責任者や指導医、研修医を対象に、定性的方法(フォーカスグループインタビュー)と定量的方法(調査票を郵送ないし電子メールで配信)を用いて情報収集を行った。(2)到達目標と2年間の研修修了時の臨床能力や経験症例との乖離の有無について、平成14年度以降断続的に行われている臨床研修医アンケート調査の結果に基づいて考察した。(3)医師養成過程全体の中で卒後臨床研修到達目標の位置づけを理解する目的で、卒前教育におけるモデル・コア・カリキュラム、医師国家試験出題基準、卒後臨床研修到達目標の各項目に係る対応表を作成した。(4)医師のプロフェッショナリズムについて、このテーマに係る教育について検討している国内外の学術・職能団体の活動内容の情報収集を行った。(5)疾病構造の変化に関する推定は、わが国の人口動態(厚生労働省大臣官房統計情報部)のデータに基づいた。
Ⅱ 見直しの提案策定に向けた議論
本研究の研究代表者、研究分担者、研究協力者が参集した班会議を5回開催し、収集した情報に基づいて、将来の見直しの議論に有用と考えられる提案の策定に向けて意見を交わした。
(倫理面への配慮)
フォーカスグループインタビューや調査票を用いた情報収集については、各研究分担者の所属施設において、研究倫理審査委員会の承認を得た。その他の情報収集は、既存の公開データあるいは他の研究で行われたデータを用いるもので、倫理的な問題はない。
結果と考察
Ⅰ 到達目標・評価の見直しのための情報収集
(1)到達目標とその評価の現状に関する意見
到達目標については、「項目数が多すぎる」「行動目標は評価しにくく形骸化」など、評価については、「経験目標のチェックに終始している」「レポート提出で妥当な評価が可能か疑問」など、多数の意見が挙げられた。(2)2年間の研修修了直前のアンケート調査では、平成22年の見直し以降、妊娠分娩の経験、小児喘息の経験などの達成率が低下し、基本的臨床知識・技術・態度の修得状況は、平成22年度以降も7分野のローテーションを必須としている継続プログラムの方が、弾力化されたプログラムよりも、評価された98項目中18項目で自信をもってできる割合が高かった。経験症例数については、85項目中51項目で、継続プログラムの方が弾力プログラムよりも経験症例数が多かった。(3)医師養成課程全体の教育目標対応表から、到達目標のほとんどが卒前教育でのモデル・コア・カリキュラムに規定されており、医師国家試験出題基準にも掲げられていることが明らかとなった。(4)日本医学教育学会倫理・プロフェッショナリズム委員会による検討では、医師のプロフェッショナリズムとして、患者や生活者との関係における医師など7つの下位概念が設定され、各下位概念について、医学部入学時、臨床実習開始時、医学部卒業時、臨床研修修了時の4つの節目における到達目標が作成されている。(5)わが国における死因統計では、上位死因の死亡者数は(括弧内は平成14年と比較した平成24年の変化率)、悪性腫瘍(18.5%)、心疾患(30.4%)、肺炎(41.8%)、老衰(167.7%)が増加していた。患者調査ではうつ病、アルツハイマー病、敗血症、老衰などの増加が著しい。
Ⅱ 見直しの提案策定に向けた議論
①アウトカム評価の重視、②医道審議会医師分科会報告書の方針の継承、③到達目標としての能力(コンピテンシー)の構造化、④経験目標の構造化、などにつき意見が交わされた。
考察
到達目標のほとんどが卒前教育でのモデル・コア・カリキュラムに規定されていて、医師国家試験出題基準にも掲げられていることは、卒後臨床研修では、目標の高さが異なる(知識よりも実践が求められている)ことを意味しており、マイルストーンと達成度を判断する基準(ルーブリック)を明示する必要がある。到達目標の項目数を減らす、経験目標と行動目標は別々に扱う方向での対応が必要となろう。
(1)到達目標とその評価の現状に関する意見
到達目標については、「項目数が多すぎる」「行動目標は評価しにくく形骸化」など、評価については、「経験目標のチェックに終始している」「レポート提出で妥当な評価が可能か疑問」など、多数の意見が挙げられた。(2)2年間の研修修了直前のアンケート調査では、平成22年の見直し以降、妊娠分娩の経験、小児喘息の経験などの達成率が低下し、基本的臨床知識・技術・態度の修得状況は、平成22年度以降も7分野のローテーションを必須としている継続プログラムの方が、弾力化されたプログラムよりも、評価された98項目中18項目で自信をもってできる割合が高かった。経験症例数については、85項目中51項目で、継続プログラムの方が弾力プログラムよりも経験症例数が多かった。(3)医師養成課程全体の教育目標対応表から、到達目標のほとんどが卒前教育でのモデル・コア・カリキュラムに規定されており、医師国家試験出題基準にも掲げられていることが明らかとなった。(4)日本医学教育学会倫理・プロフェッショナリズム委員会による検討では、医師のプロフェッショナリズムとして、患者や生活者との関係における医師など7つの下位概念が設定され、各下位概念について、医学部入学時、臨床実習開始時、医学部卒業時、臨床研修修了時の4つの節目における到達目標が作成されている。(5)わが国における死因統計では、上位死因の死亡者数は(括弧内は平成14年と比較した平成24年の変化率)、悪性腫瘍(18.5%)、心疾患(30.4%)、肺炎(41.8%)、老衰(167.7%)が増加していた。患者調査ではうつ病、アルツハイマー病、敗血症、老衰などの増加が著しい。
Ⅱ 見直しの提案策定に向けた議論
①アウトカム評価の重視、②医道審議会医師分科会報告書の方針の継承、③到達目標としての能力(コンピテンシー)の構造化、④経験目標の構造化、などにつき意見が交わされた。
考察
到達目標のほとんどが卒前教育でのモデル・コア・カリキュラムに規定されていて、医師国家試験出題基準にも掲げられていることは、卒後臨床研修では、目標の高さが異なる(知識よりも実践が求められている)ことを意味しており、マイルストーンと達成度を判断する基準(ルーブリック)を明示する必要がある。到達目標の項目数を減らす、経験目標と行動目標は別々に扱う方向での対応が必要となろう。
結論
到達目標と評価について、調査結果や既存データの分析により、見直しに向けた課題・方向性が明確になってきた。到達目標の項目数を減らし、マイルストーンやルーブリックの導入、行動目標から能力(コンピテンシー)への表現型の変更などについて、さらなる議論が必要である。
公開日・更新日
公開日
2015-05-20
更新日
-