医療安全支援センターの業務及び運営の改善のための研究

文献情報

文献番号
201424020A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全支援センターの業務及び運営の改善のための研究
課題番号
H26-医療-一般-014
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
児玉 安司(東京大学大学院医学系研究科 医療安全管理学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 後 信(九州大学病院医療安全管理部及び(公財)日本医療機能評価機構)
  • 小林 美雪(山梨県立大学看護学部成人看護学領域)
  • 杉山 恵理子(明治学院大学心理学部心理学科)
  • 田中 健次(電気通信大学大学院情報システム学研究科)
  • 長谷川 剛(自治医科大学医療安全対策部)
  • 原田 賢治(東京農工大学 保健管理センター)
  • 宮田 裕章(東京大学大学院医学系研究科医療品質評価学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 医療安全支援センター(以下、センター)は、2002(平成14年)の医療法施行規則改正によって設置され、2006年(平成18年)に第5次医療法改正で患者・家族側と医療機関側に対して双方向的な助言を行うという法的な位置づけが明らかにされた。その実施の細目は地方自治事務として各自治体の裁量に委ねられた面が大きかったため、各センターの対応状況は地域差があると考えられる。
 センターに寄せられる相談は医療・介護の状況を映す鏡であると考えられ、(1)各センターの対応状況調査(訪問調査)、や(2)詳細な対応状況の検討や、(3)「医療安全支援センターの運営の現状に関する調査」(運営調査)の検討を通じて、よりよい相談対応のための臨床心理的アプローチ、医療現場とセンターの連携、地域全体でのフィードバックシステム、関連諸制度との連携、医療従事者の人材養成・教育、医療介護連携、医療統計学等の多彩な観点から検討を行い、医療提供施設等を巻き込んだ医療の質向上のためのフィードバックの仕組みをつくれるよう、限られた資源の中で効率的に、センターの業務と運営を向上させることに資する提案を行う。
研究方法
(1)各センターの訪問調査、(2)模擬事例ロールプレイによる相談過程の分析、(3)運営調査の調査票の変更を行い、さらに、行政的な体制確保と相談員の機能強化の両面から、地域包括ケアの発展的課題にも対応できる医療安全支援センターの課題を探求するとともに、センターの業務改善に資する資料として、相談員向け資料の編集を行った。
結果と考察
(1)【訪問調査による現状認識】平成25年度までの研究により、医療安全支援センターには5つの機能(行政指導的機能、紛争解決的機能、対話促進機能、地域啓発機能、精神保健機能)があると考えているが、それぞれのセンターがどういった機能をどの程度有しているかは、地域によっても異なることを再確認した。加えて、行政的な体制の確保、及び患者側と医療機関側双方への問題解決への支援(相談対応の質)の2つの視点から検討したところ、医療安全支援センターの実情は5つの類型(発展型、体制充実型、行政官中心型、相談員中心型、不全型)に整理できるのではないかと考えられた。
(2)【ロールプレイ】相談プロセスを逐語的に記録した上で、模擬相談者と相談員の双方が事後的に振り返りを行い、この結果を、全国のセンター相談員が相談対応について学ぶための資料をとしてまとめ、配布した。この資料の目的は、相談対応の質の向上を図るもので、ロールプレイを行うことの有効性を示すとともに、初心者の担当者に対して相談対応とはどういうものかを理解してもらうために作成した。しかし、模擬事例を基にした反訳では、声のトーンや間の取り方といった重要な点を伝えられないという限界もあった。また、同じような相談であっても地域によってリソースも異なり、また相談者や相談員それぞれの個性によって結論や対応も変わりうるため、一律の正解のようなものはないということを確認した。
(3)【運営調査】運営調査を全国統一の調査としてより良い形で実施するため、過去の研究班から引き続き検討を重ね、平成26年夏(8月及び10月)に最終案を作成した。運営調査は、平成28年度よりこの最終案の内容に修正予定であり、各センターにおいて平成27年度受付分より新しい様式で記録するよう準備を求めた。
結論
高齢化社会の医療の在り方と、医療介護をあわせた地域包括ケアへの移行を視野に入れると、今後、医療安全支援センターはさらに発展的な課題にチャレンジしていく必要に迫られている。この中で、医療安全支援センターが、行政的な体制確保を進めるとともに相談員の機能強化の足場を固められるよう、本研究で引き続き運営及び業務改善に資する資料を作成するよう勤めるとともに、今後のセンターのあり方について行政施策として再検討していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2015-12-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201424020Z