文献情報
文献番号
201424011A
報告書区分
総括
研究課題名
地域格差是正を通した周産期医療体制の将来ビジョン実現に向けた先行研究
課題番号
H26-医療-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
田村 正徳(埼玉医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 戸苅 創(名古屋市立西部医療センター 新生児医療センター)
- 中林 正雄(母子愛育会総合母子保健センター)
- 中井 章人(日本医科大学 産婦人科)
- 板橋 家頭夫(昭和大学医学部 小児科)
- 鮫島 浩(宮崎大学医学部 産婦人科)
- 楠田 聡(東京女子医科大学 母子総合医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
6,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
適切な評価指標を用いて全国の周産期医療体制の現状と周産期医療センターの機能を分析し、地域の実情に応じた施設の機能整備の指針を作成する。地域格差の是正策としての広域連携システムの構築と人材育成・適正配置の方法を提示する。
研究方法
1.日本産科婦人科学会全会員の年齢、性別、所属施設と日本産婦人科医会施設情報調査の施設機能、診療実績を連結し、全国の産婦人科医師の勤務実態を調査した。
2.厚生労働省と全国MFICU連絡協議会が実施している100施設へのアンケート調査内容に地域格差に関連する項目を加え回答を分析した。
3.全国の総合・地域周産期医療センター計のNICU施設長に対し医師充足度に関するアンケート調査を行った。
4.全国の総合・地域周産期母子医療センターから報告されている施設評価票の新生児医療機能の評価項目点数と周産期ネットワークデータベースに登録されている極低出生体重児の予後とを比較した。
5. 日本小児科学会が1990年以降、5年毎に実施している超低出生体重児死亡率調査を活用して、2010年出生児の調査結果から、超低出生体重児死亡率の地域格差を明らかにした。
6. 全国の総合(100箇所)と地域周産期医療センター(222箇所)と日本小児科学会研修指定施設521箇所に対して新生児医療研修の実態調査を行った。
7. 全国の大学病院の新生児医療担当者のメーリングリストを利用し人材育成の現状調査を行った。
8.全国の総合・地域周産期母子医療センター施設への臨床心理士、NICU入院児支援コーディネーター、医師事務作業補助者の配置の現状とそれが医師業務にどの程度貢献しているかを施設長へのアンケートにて調査した。
9.日本未熟児新生児学会主催教育セミナー既参加者の、現時点での新生児医療従事状況を日本未熟児新生児学会の会員名簿ならびに日本周産期・新生児医学会の新生児専門医獲得状況を調査した。
2.厚生労働省と全国MFICU連絡協議会が実施している100施設へのアンケート調査内容に地域格差に関連する項目を加え回答を分析した。
3.全国の総合・地域周産期医療センター計のNICU施設長に対し医師充足度に関するアンケート調査を行った。
4.全国の総合・地域周産期母子医療センターから報告されている施設評価票の新生児医療機能の評価項目点数と周産期ネットワークデータベースに登録されている極低出生体重児の予後とを比較した。
5. 日本小児科学会が1990年以降、5年毎に実施している超低出生体重児死亡率調査を活用して、2010年出生児の調査結果から、超低出生体重児死亡率の地域格差を明らかにした。
6. 全国の総合(100箇所)と地域周産期医療センター(222箇所)と日本小児科学会研修指定施設521箇所に対して新生児医療研修の実態調査を行った。
7. 全国の大学病院の新生児医療担当者のメーリングリストを利用し人材育成の現状調査を行った。
8.全国の総合・地域周産期母子医療センター施設への臨床心理士、NICU入院児支援コーディネーター、医師事務作業補助者の配置の現状とそれが医師業務にどの程度貢献しているかを施設長へのアンケートにて調査した。
9.日本未熟児新生児学会主催教育セミナー既参加者の、現時点での新生児医療従事状況を日本未熟児新生児学会の会員名簿ならびに日本周産期・新生児医学会の新生児専門医獲得状況を調査した。
結果と考察
分娩に携わる医師数が不足し、地域偏在が拡大していることが明らかになった。分娩取扱い施設の勤務医師の就労環境は過酷で、新人医師の60%、50歳以下の50%を占める女性医師が勤務を継続し易い労働環境整備が急務である。MFICU病床数にも10倍の地域格差が認められた。総合周産期センターのNICUには15床あたり、10人の周産期(新生児)専門医の配置が望ましいと考えられた。厚生労働省の周産期医療センター評価項目点数と極低出生体重児の重症度で補正した標準化死亡率の間には相関関係があり、施設の新生児機能をある程度反映していると考えられた超低出生体重児の地域格差が明らかとなった。人材育成に関する全国調査では、NICUの研修指導担当医のほとんどが専任ではなく臨床との兼任であった。後期研修プログラムの整備状況に比較し、初期研修プログラムは総合61%、地域45%と低い状況であった。専任の指導医の増加は魅力的な初期研修プログラムの充実に結びつくので、人材の育成にとって重要な課題である。都道府県別の後期研修医の割合に関して3つの指標、①小児科医中の後期研修医割合、②NICU常勤医中の後期研修医割合、③NICU勤務後期研修医数を用いて示したが、地域間格差が大きく、今後NICUの現場での医師不足の地域間格差が広がることが危惧される。
結論
産科医師の減少および若手医師の大都市集中により周産期医療の地域格差は拡大している。総合周産期医療センターのNICU医師充足度も地域格差が顕著であった。総合周産期医療センターのNICUには15床あたり、10人の周産期(新生児)専門医の配置が望ましい。厚生労働省医政局作成の評価票の新生児医療機能評価の妥当性が地域周産期医療センターでは示されたが、総合周産期母子医療センターに関しては再検討が必要である。地域格差是正のためには、大学入学時の地域枠の増加、広域ブロックでの人材育成、大学・周産期センター間での医師交換プログラム、集約化・重点化による地域基幹病院の過重労働防止、それに伴う遠隔医療システム導入などが必要である。今後、学会・行政・大学が協力し効率的な医療研修システムの構築が急務である。文部科学省周産期医療整備事業だけでは、その地域の人材不足解消、より深刻な地域への人材供給は困難と考えられる。今後もさらなる大学の人材育成機能の強化が必要である。NICUに臨床心理士や支援コーディネーターや医師事務作業補助者等の他職種が配属されることは医師の業務軽減につながるが、現状ではまだ不十分であり、診療報酬上の加算などを更に考慮すべきである。日本未熟児新生児学会が毎年開催しているワークショップ方式の教育セミナーは、学会が主催する若手専門医育成セミナーのモデルとなりうると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2015-06-11
更新日
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