文献情報
文献番号
201424008A
報告書区分
総括
研究課題名
地域住民の視点からみた有床診療所の役割・機能に関する研究
課題番号
H26-医療-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
濃沼 信夫(東北薬科大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
1,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
最近、有床診療所は施設数、病床数とも著しい減少傾向をたどっているが、有床診療所の無床化や廃院は、その代替機能が他の医療施設で担われることがない限り、地域医療に少なからぬ影響を与えると考えられる。有床診療所が急速に減少している理由としては、医師の高齢化、看護職員確保の困難性、施設の老朽化、経営の悪化などがあるが、同時に利用者(患者)の意識や受療行動の変化が挙げられる。そこで、有床診療所に期待される役割を地域住民(利用者)の視点から明らかにし、有床診療所が今後担うべき役割と、地域の医療提供体制における有床診療所の位置づけを検討する。
研究方法
全国の住民を対象にインターネットを用いて意識調査を実施した。調査項目は、有床診療所という名称の認知度、病院との違いの認識、最近における家族・知人を含む利用の有無、利用の目的、医療サービスの満足度、現行の有床診療所が担う機能、有床診療所に期待される役割などとした。得られた回答を性別、年齢階級別、職業別、地域(大都市~群部)別、地域ブロック別、有床診療所の名称認知の有無別、近所立地の有無別等で分析し、住民の意識と受療行動について検討した。各区分による回答の差異については、ピアソンのカイ自乗検定により有意差の検定を行った。
結果と考察
7,000名から回答が得られた。性別は男性50.4%、女性49.6%、平均年齢は52.5歳であった。年齢階級は18歳~45歳未満が33.4%、45歳~65歳未満が33.8%、65歳以上が32.8%であった。すべての都道府県から30名以上の回答が得られ、地域では大都市が26.2%、中都市が26.2%、小都市が26.2%、郡部が21.3%であった。職業は、会社員等の被雇用者が25.5%、自営業者が15.8%、パート・アルバイトが15.3%、専業主婦(主夫)が12.9%、医療関係者が8.0%、学生が1.2%、無職が21.2%であった。
有床診療所という名称の認知度は3割に満たず、特に若年者、農村部で有意に低かった。「名称に有床診療所を冠した方がよい」とする回答が半数を占めていたが、認知度の低さは、名称に有床診療所が冠されることが少ないことが影響していると考えられる。有床診療所を受診した理由は「近くにあるから」と、「かかりつけ医だから」が多かった。受診理由で「入院もできるから」は1割に満たない一方、「今後も入院施設があった方がよい」は7割を超えていた。医療施設を選ぶ時に重視するのは、「医師の専門性や技術」、「自宅や職場に近い」、「医師や看護師の親切な対応」が3大理由となっている。回答者の1割で、過去3年間に本人、家族、知人のいずれかが有床診療所受診していたが、入院1:外来9と、外来での利用が多かった。有床診療所の利用は、35歳未満の若年者、専業主婦(主夫)や学生、九州や東北・北海道ブロックで多い傾向にあった。有床診療所の役割としては、比較的軽い病気の診療が最も多く、次いで、急性疾患の診療、慢性疾患の診療であり、出産や終末期医療・看取りは数%であった。今後、有床診療所が強化してほしい役割として最も多いのが、急性疾患の診療と救急医療であり、多くの地域で応需体制が十分とはいえない救急医療に対する住民の不安が反映されたものと考えられる。現在の役割として最も多かった、比較的軽い病気の診療は、強化すべき役割としては大幅に少なかった。在宅医療の拠点、在宅・介護施設への橋渡し、終末期医療・看取りへの期待は、年齢が進むにつれ多くなる傾向が見られた。7割以上が有床診療所に関する情報が少ないとし、特に高齢者、女性、医療関係者や専業主婦(主夫)で多かった。
有床診療所という名称の認知度は3割に満たず、特に若年者、農村部で有意に低かった。「名称に有床診療所を冠した方がよい」とする回答が半数を占めていたが、認知度の低さは、名称に有床診療所が冠されることが少ないことが影響していると考えられる。有床診療所を受診した理由は「近くにあるから」と、「かかりつけ医だから」が多かった。受診理由で「入院もできるから」は1割に満たない一方、「今後も入院施設があった方がよい」は7割を超えていた。医療施設を選ぶ時に重視するのは、「医師の専門性や技術」、「自宅や職場に近い」、「医師や看護師の親切な対応」が3大理由となっている。回答者の1割で、過去3年間に本人、家族、知人のいずれかが有床診療所受診していたが、入院1:外来9と、外来での利用が多かった。有床診療所の利用は、35歳未満の若年者、専業主婦(主夫)や学生、九州や東北・北海道ブロックで多い傾向にあった。有床診療所の役割としては、比較的軽い病気の診療が最も多く、次いで、急性疾患の診療、慢性疾患の診療であり、出産や終末期医療・看取りは数%であった。今後、有床診療所が強化してほしい役割として最も多いのが、急性疾患の診療と救急医療であり、多くの地域で応需体制が十分とはいえない救急医療に対する住民の不安が反映されたものと考えられる。現在の役割として最も多かった、比較的軽い病気の診療は、強化すべき役割としては大幅に少なかった。在宅医療の拠点、在宅・介護施設への橋渡し、終末期医療・看取りへの期待は、年齢が進むにつれ多くなる傾向が見られた。7割以上が有床診療所に関する情報が少ないとし、特に高齢者、女性、医療関係者や専業主婦(主夫)で多かった。
結論
回答した住民の7割までが「有床診療所という名前を聞いたことがない」、「有床診療所に関する情報が少ない」としており、有床診療所の認知度を高めることは極めて重要と考えられる。有床診療所が近くにあるとの回答は3分の1であり、小都市や農村部、高齢者や無職の多い地域では近くにないとする割合が多く、有床診療所は必ずしも身近な存在になっているとは限らない状況がうかがえる。有床診療所の現在の役割は、比較的軽い病気の診療と受け取られている一方、強化が期待されるのは、急性疾患の診療と救急医療であり、在宅医療の拠点や、在宅・介護施設への橋渡しの期待も少なくなかった。年齢が高くなるにつれ、終末期医療・看取りへの期待が高まっていた。住民の医療ニーズは、年齢や地域特性などで大きく異なり、有床診療所はその認知度を高めるとともに、立地する地域の医療ニーズを的確に捉え、救急医療、在宅医療、介護の橋渡し、看取りを含む、住民の多様な期待に対応した役割を果たすことが重要と考えられる。
公開日・更新日
公開日
2015-06-10
更新日
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