B型肝炎創薬実用化等研究事業の評価等に関する研究

文献情報

文献番号
201423047A
報告書区分
総括
研究課題名
B型肝炎創薬実用化等研究事業の評価等に関する研究
課題番号
H24-B創-肝炎-指定-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
正木 尚彦(独立行政法人国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
B型肝炎創薬実用化等研究事業は平成24年度から開始され、原則として向こう3~5年間は同一研究班で継続されることになる。本事業を適切かつ円滑で効果的に実施することは、厚生労働省の肝炎対策の推進において必須であり、研究成果の評価等が適切に行われることが必要不可欠である。平成26年度の研究目的として、以下の2項目を重点課題とした。
研究方法
1)研究の企画・評価に関する機能の整備:研究協力者等の研究班会議への参加による研究内容の把握、および、評価委員会への情報提供を綿密に行うこととする。
2)B型肝疾患患者を対象とした全国的な意識調査:研究協力者として、任期付き常勤研究員(医師職)を雇用し、「B型肝炎に対する新しい治療法開発のためのアンケート調査」を実施した。調査票の内容として、患者の各種背景因子、診断名(無症候性キャリア、慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌等)、治療歴、治療効果、有害事象の有無・詳細、抗ウイルス療法に対する患者意識調査等を盛り込んだ。情報収集のツールとして、平成19年度以降全国において整備されてきた都道府県肝疾患診療連携拠点病院(70施設)と肝炎情報センターとのネットワークを全面的に活用した。特に、平成26年度は患者が創薬に寄せる期待についての自由記載を決定木解析、テキストマイニング解析で検討した。
結果と考察
1)研究の企画・評価に関する機能の整備:平成27年4月に日本医療研究開発機構(AMED)が正式設立されることから、平成26年10月に本研究事業のプログラム・ダイレクターを決定、委嘱した(これに伴い、研究評価委員会事務局が移管されるため、本指定研究も平成26年度にて終了した)。本研究事業は平成24年度(初年度)は16班で開始され、その後、平成25年度(2 年目)二次公募で1班、平成25年度(2 年目)三次公募で1班が追加され、現在計18班で進められている。研究者間で開催される班会議は平成26年度は23回(単独13回、合同10回)開催され、POの出席延べ人数は28名(うち9回の班会議に研究代表者が出席)であった。尚、複数の研究班間での情報共有、共同研究の推進がきわめて重要であると考え、研究者のみ閲覧可能なホームページを平成25年10月に開設し、研究者間での意見交換の場(「掲示板」)として、「アナウンス・ディスカッションボード」を設けたが、利用者は限定的であった。また、18研究代表者を対象とした研究発表会、および、評価委員会を平成27年1月27日に開催し、各研究班の研究成果の評価、ならびに次年度への継続が妥当か否かについての議論が行われた。
2)B型肝疾患患者を対象とした全国的なアンケート調査:全国63施設(61拠点病院+国立国際医療研究センターセンター病院・国府台病院)に対して5,784部の調査票を配布し、平成26年1月末までに3,021件の回答が得られた(回収率51.4%)。インターフェロン治療満足度、核酸アナログ製剤満足度、不安に関する規定因子として、「治療効果」の次に「医療者側からの十分な情報提供」が選択された。要望についての自由記述回答は1261人から得られ(回答率42%)、形態素解析ののち68カテゴリに類型化された。研究への期待、希望する治療の効果と特徴、提案、制度への要望等多岐にわたる内容であった。回答と属性についての関連をコレスポンデンス分析にて検討したところ、若年では通院頻度の拘束がないこと、高齢では早期の開発を望む傾向にあった。若年女性では感染予防の要望、高齢男性では肝硬変またはがんの進行抑制への期待に関する記述が認められた。

結論
B型肝炎患者の治療満足度を上げるためには、治療効果の向上のみならず医療者からの十分な情報提供が必要である。患者の背景因子に依って新規薬剤に対するニーズは異なる可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201423047B
報告書区分
総合
研究課題名
B型肝炎創薬実用化等研究事業の評価等に関する研究
課題番号
H24-B創-肝炎-指定-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
正木 尚彦(独立行政法人国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
B型肝炎は、核酸アナログ製剤およびインターフェロンによる既存の治療では体内からの完全なウイルス排除を期待できず、新規薬剤の開発が望まれていた。平成23年12月肝炎治療戦略会議において策定された肝炎研究10か年戦略のなかで、B型肝炎創薬実用化研究が新規課題として採択され、分担研究者はB型肝炎創薬実用化研究事業研究評価委員会事務局を担当することとなった。本研究事業は、化合物の探索・ウイルスおよび宿主因子の解析・実験手法の開発等広範な分野からなる。そこで、事業全体の適切かつ効果的な遂行および治療薬としての実用化に際し、B型肝炎創薬への患者からの要望を把握することが必要となった。
さらに、B型肝炎は、検査や治療のための長期の通院を余儀なくされる。治療意志の継続に有用な支援など、『受け入れやすい治療のあり方や方法を明らかにすることで、B型肝炎に対する新しい治療法の開発に役立てる』ことを本調査の目的とした。本調査は、「B型肝炎創薬実用化等研究事業の評価等に関する研究(指定研究)」において実施した。
研究方法
(1) 調査対象:肝疾患診療連携拠点病院61施設、ならびに当センター国府台病院、センター病院へ外来通院または入院中のB型肝炎患者を対象とした。各施設において調査票(無記名自記式)を配布し、郵送にて回収した。調査票の配布は平成25年8月1日から12月31日、回収は平成26年1月31日までとした。各施設で5,784部が配布され、3,021件の回答が得られた(回収率51.4%)。
(2) 調査内容:調査票は、基本属性のほか、生活に関する因子、診断・治療歴(治療内容、効果、副作用ほか) など疾患に関する因子を背景因子として、経験した治療への意識および新規薬剤への要望について、自由記述を含めて126項目を設問した。
(3) 集計・解析
1)集計:調査データについて、単純集計、クロス集計およびカイ二乗検定を行った。数値回答の一部はカテゴリ化ののち集計を行った。
2) 決定木法:対象項目の背景となる患者特性を明らかにし、診療環境改善のための介入可能な因子を抽出することを目的に、決定木法(インテリジェント・マイナー、IBM)により、選択肢回答から得られた333変数を用いて背景因子の構造について検討した。年齢または性別に無回答であった回答票は、解析対象から除外した。決定木解析結果において、回答数がおおむね10%以下になる場合には解析を止め、また目的変数と同義性が強い変数が説明変数として候補として挙がる場合は、当該の変数を除外したうえで再度解析した
3) テキストマイニング
選択肢回答では得られない患者の存意を把握するため、新薬に期待する要望として自由記述回答を得た。SPSS Text Analytics for Surveys4.01 (IBM)を用いて形態素解析を行い、さらに概念によるカテゴリ分類を行った。単純集計および年齢、性別、病態等属性によるクロス集計を行った。次いで、コレスポンデンス分析により背景因子との関連を検討した。
結果と考察
経験した抗ウイルス療法に対する満足度は、インターフェロン療法、核酸アナログ製剤治療ともに、治療効果が最重要因子であった。また、満足度および治療中の不安に対し、治療による仕事や生活への影響、および医師による説明の多寡が影響していた。集計結果は概ねわれわれの予想を裏付けるものであったが、特に、B型慢性肝炎では、近年治療目標が急速に変化してきており、判断の経緯や不確実性を含め、治療手段の負担に相応した配慮と説明が重要と思われた。尚、本研究は肝疾患診療連携拠点病院の協力を得て実施しており、アンケートに回答した患者の大部分が肝臓専門医の診療を受けていると想定されることから、わが国における最先端の治療を受けているB型肝疾患患者の意識を反映した結果であることを強調しておきたい。
要望に関する選択肢回答、自由記述回答において、ウイルス排除および創薬研究への期待が高いことは、ウイルス排除を目指した新規薬剤開発のための意識調査という本調査の目的によるバイアスだけではなく、背景因子、特に性別・年代による検討により、病態や仕事への影響等各人の生活の中に占める疾患に伴う負担の大きさの関与が示唆された。
結論
抗ウイルス療法におけるウイルスマーカーの解釈、発がん抑制効果等について継続的な検証を行うとともに、その結果に基づいた患者の意思決定や患者報告アウトカム等患者からの発信を、治療ガイドライン作成、創薬研究や診療環境改善における課題として取り組む必要がある。

公開日・更新日

公開日
2015-08-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201423047C

収支報告書

文献番号
201423047Z