革新的な動物モデルや培養技術の開発を通じたHBV排除への創薬研究

文献情報

文献番号
201423043A
報告書区分
総括
研究課題名
革新的な動物モデルや培養技術の開発を通じたHBV排除への創薬研究
課題番号
H24-B創-肝炎-一般-016
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
茶山 一彰(広島大学 大学院医歯薬保健学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 志馬 寛明(北海道大学大学院)
  • 加藤 博己(京都大学ウイルス研究所)
  • 立野 知世 (向谷知世)((株)フェニックスバイオ)
  • 山本 卓(広島大学大学院)
  • 田原 栄俊(広島大学大学院)
  • 丸澤 宏之(京都大学大学院)
  • Aly Hussein Hassan (アリ フセイン ハッサン) (国立感染症研究所)
  • 坂口 剛正(広島大学大学院)
  • 阿部 弘美(広島大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
190,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝炎モデルを改良しヒト肝炎をマウス内で再現する慢性B型肝炎モデルを作製し、HBV感染細胞の排除機構、cccDNAの排除、HBV粒子分泌抑制、HBV蛋白に対する抗体産生促進などに関与する因子の探索を行いHBVの完全な排除を目指す創薬研究を行うことを目的とする。
研究方法
重度免疫不全であるNOGマウスにthymidine kinase遺伝子をtransgeneしたTK-NOGマウスにガンシクロビルを投与することによりマウス肝細胞を傷害し、形成されるニッチを利用してヒト肝細胞を増殖させることができるマウスモデルを用いてヒト肝細胞を移植したヒト肝細胞キメラマウスを作製した。このマウスにHBV感染患者由来の血清を用いてHBV感染させた。HBV DNA量がプラトーに達したHBV接種8週後に、B型急性重症肝炎治癒後の患者から得られたヒト末梢血単核球(PBMC)を腹腔経由で移入した。PBMC移入2週後にマウス肝組織および肝潅流液中のヒトPBMCの表現型、血清中のALTレベル、各種サイトカインレベル、HBs抗原、抗体、HBV DNAの定量を行った。また、有効な治療法が確立していないB型劇症肝炎に対して、T細胞を標的とした薬剤であるCTLA4Igを用いてT細胞の活性化を抑制することによりHBV感染肝細胞の傷害が抑制できるか否かについて検討を行った。

HBVのウイルス産生を阻害する標的マイクロRNAの同定するため、uPA/scid肝細胞移植マウス由来のHBVを感染させた初代培養細胞を用いてスクリーニングを実施した。HBs抗原を指標に、ウイルス量が減少するマイクロRNAを検索した。また、HBV排除の治療効果を定量的に評価できるようなマイクロRNAのバイオマーカーの開発のため、血清及び組織から抽出したRNAを用いて、次世代シーケンサーIon PGMで小分子RNAの配列を解析した。
HepG2-AD38.7細胞のtet-on/off システムを用いて、ヒトキナーゼ分子におけるHBVライフサイクルに影響を及ぼす分子のスクリーニングを行った。

HBVのコアプロモーター領域の転写調節因子FTFやHNF4の結合するTALEタンパク質およびHBVのコアタンパク質を切断する人工ヌクレアーゼのTALENを作製し、HepG2細胞におけるHBVの増殖抑制効果について調べた。さらに、HBVのコアタンパク質を標的とするCRISPR/Cas9システム(ヌクレアーゼ型、ニッカーゼ型、FokI-dCas9型を構築し、ヒト培養細胞での活性評価を行った後に、HBVの増殖抑制効果をHepG2細胞およびT23細胞において調べた。
結果と考察
改良型モデルマウスに重症B型急性肝炎治癒後の患者から得られたヒト末梢血単核球を投与した結果、肝組織中へのリンパ球浸潤、HBV感染肝細胞の細胞死、血清中のALT上昇、Granzyme AやIFN-γレベルの上昇が認められた。また、肝臓内にはHBV特異的なCTLが検出され、本モデルはHBV特異的CTLによるHBV感染肝細胞死が誘導されたヒト劇症肝炎モデルであると考えられた。また、HBs抗原は陰性化し、HBs抗体が陽性となった。さらにT細胞を標的とした薬剤であるCTLA4Igを用いてT細胞の活性化を抑制することでHBV感染肝細胞の傷害が抑制できるか検討を行った結果、HBV感染肝細胞死は阻害された。CTLA4はリウマチに安全に使用されている薬剤であることから、B型重症肝炎の治療として使用できる可能性が示された。また、肝炎モデルは細胞障害性T細胞を利用したB型肝炎ウイルスの排除を行う上での安全策などに利用可能であり、幅広い応用研究が可能である可能性があると考えられる。また、HBV感染が可能なNTCP-HepG2細胞を用いて各HBVのライフサイクルにおいて相互作用がある分子、ヒトTSSK2を同定した。さらに、新規のCRISPR/Cas9システム(ヌクレアーゼ型、ニッカーゼ型、FokI-dCas9型)を構築し、HBVゲノムに対する抑制効果を検討した。その結果、ヌクレアーゼ型、ニッカーゼ型では抗HBV効果が認められた。
結論
ヒト肝細胞キメラマウスにB型急性重症肝炎治癒後の患者から得られたPBMCを移入することで、HBV特異的なCTLによるヒトの劇症肝炎を再現するモデルを作製した。本モデルマウスにより免疫学的機序によるウイルス排除によるHBVの持続感染から治癒を目指す治療を開発することが可能となった。また、HBVのライフサイクルと相互作用のある宿主因子の検討から新規治療薬となり得る分子が見いだされた。さらに、新規のゲノム編集技術である3種のCRISPR/Casシステムを用いることでcccDNAの排除によるHBV完全排除に向けた創薬研究が可能となった。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201423043Z