B型肝炎ウイルスの持続感染を再現する効率的な培養細胞評価系の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201423040A
報告書区分
総括
研究課題名
B型肝炎ウイルスの持続感染を再現する効率的な培養細胞評価系の開発に関する研究
課題番号
H24-B創-肝炎-一般-013
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
田中 靖人(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 落谷 孝広(国立がん研究センター研究所 )
  • 棟方 翼(公益財団法人東京都医学総合研究所)
  • 中西 広樹(秋田大学生体情報研究センター)
  • 深澤 征義(国立感染症研究所 細胞化学部)
  • 高岡 晃教(北海道大学 遺伝子病制御研究所 分子生体防御分野)
  • 石川 哲也(国立大学法人名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 調 憲(九州大学大学院医学研究院)
  • 水口 裕之(大阪大学大学院薬学研究科 分子生物学分野)
  • 石井 優(大阪大学大学院医学系研究科/生命機能研究科免疫細胞生物学)
  • 土方 誠(国立大学法人京都大学 ウイルス研究所)
  • 池田 正徳(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 難治ウイルス病態制御研究センター)
  • 渡士 幸一(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 坂本 直哉(北海道大学大学院医学研究科)
  • 石田 雄二(株式会社フェニックスバイオ)
  • 松永 民秀(公立大学法人名古屋市立大学 大学院薬学研究科)
  • 近藤 泰輝(東北大学病院 消化器内科)
  • 濱田 剛(国立大学法人長崎大学 先端計算研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
195,240,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
B型肝炎ウイルス(HBV)根絶を目指したB型肝炎創薬実用化研究を効率良く推進するためには、HBV持続感染を再現する培養細胞評価系を開発し、HBV感染感受性・増殖機構から病態メカニズムの解明、薬剤スクリーニングを効率的に実施できる簡便なシステムを構築し、できるだけ早期にHBV創薬候補を見出す。
研究方法
1)組換えDNA実験に関する大臣申請用の書類を作成・分担者へ配布。2)1.2倍長のHBV plasmid (HBV genotype A~C)及び肝細胞株を各分担施設に分配 (MTA提携)。3)大量調製したHBV感染感受性キメラマウス由来の初代肝細胞やNTCP発現HepG2細胞を用いたHBV持続感染培養系を構築し、HBV感染防御試験や薬剤感受性試験を実施。他班(満屋班、小嶋班)や富山化学との共同研究を展開し、新規薬剤の探索、評価、前臨床試験を実施。4)保存性の高いHBVプレゲノムRNAの3領域を標的としたsiRNAを設計し、pH応答性MEND/siRNAmixのHBV増殖と抗原量抑制効果を評価。5)ヒト人工多能性幹細胞iPS細胞由来肝細胞 (iPS-Hepa)へ分化誘導し、HBV感染実験を実施。6)HBV持続感染培養系を用いて、ヒト肝細胞の機能を保持する環境因子の解明(miRNA、脂質代謝、トランスポーター、免疫反応)、および最適なHBV感染感受性環境の構築(HBVライフサイクル解明から創薬)を目指す。
結果と考察
今年度の主な成果:①他班(満屋班、小嶋班)や富山化学との共同研究により、複数のシーズを同定。一部、キメラマウスを用いた前臨床試験まで実施、論文化。②HBVのmRNAを標的にしたsiRNAにより、HBV関連蛋白及びウイルス産生の効果的抑制に成功した。③新規HBV治療薬の候補となる可能性のあるmiRNAを複数同定。④22(S)-hydroxycholestero、cyclosporin A、proanthocyanidineをHBV感染阻害化合物として同定した。⑤RIG-IがpgRNAのεを認識し、自然免疫応答を惹起。さらにRIG-Iの新しい機能としてHBV P proteinのε構造への結合を阻害した。⑥GPGPU型スーパーコンピューターによるインシリコ理論計算創薬の基盤整備、SphK1を標的としたインシリコスクリーニングによる1000化合物の抽出、SphK1酵素活性測定システムの構築。候補化合物の合成展開、薬効評価を開始した。⑦HBV感染阻害が見られる多価不飽和脂肪酸(DHA)により増加が抑制される脂質分子(PIP2)を同定した。⑧蛍光標識したHBV、BNC、及びHuS-E/2などのヒト肝細胞の性質が保存された細胞株を用いることにより、HBVの細胞内侵入機構の解析が可能となり、さらに2光子励起顕微鏡を用いることで、肝臓内の免疫細胞の動態、肝細胞傷害を生きた個体内で可視化することに成功した。さらに感染経路、感染細胞への免疫応答について実体的な解析により、免疫応答を誘導・調節する画期的な治療法の開発につながることが強く期待される。
結論
これまでに複数のHBV複製系及びHBV持続感染培養系を構築し、薬剤スクリーニングを開始した。抗HBV活性を有する複数の候補分子(シーズ)をすでに同定しており、今後も継続してキメラマウスを用いた前臨床試験を実施する。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201423040Z