HBV cccDNAの制御と排除を目指す新規免疫治療薬の開発

文献情報

文献番号
201423037A
報告書区分
総括
研究課題名
HBV cccDNAの制御と排除を目指す新規免疫治療薬の開発
課題番号
H24-B創-肝炎-一般-010
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
金子 周一(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
研究分担者(所属機関)
  • 今村 道雄(広島大学病院)
  • 中本 安成(福井大学 医学部)
  • 橋本 真一(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
  • 村上 清史(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
  • 石川 哲也(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 考藤 達哉(国立国際医療研究センター国府台病院 肝炎・免疫研究センター)
  • 高橋 健(京都大学 医学研究科)
  • 加藤 孝宣(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 村口 篤(富山大学大学院医学・薬学研究部)
  • 池田 裕明(三重大学大学院医学系研究科)
  • 石井 健(独立行政法人医薬基盤研究所)
  • 水腰 英四郎(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
90,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
B型慢性肝炎の治療においてはcccDNAを中心とするHBVの再活性化機構を制御することが重要である。再活性化に関わる免疫監視機構はほとんど明らかにされていない。本研究では、cccDNAの制御と排除を行う治療法を開発するためcccDNAの存在様式と遺伝子発現の調節機構といったcccDNAの基本的な動態を解明するとともに、そうした動態にあるcccDNAに対して、どのような免疫が作動しているかを明らかにして研究開発を行っている。cccDNAの制御と排除を行う新規治療薬の開発研究を目指している。
研究方法
本研究では世界最先端の分子生物学、および免疫学の技術を用いたcccDNAの制御と排除をめざす開発研究を行った。本研究は大きく3つの課題、1)cccDNAの存在様式、および遺伝子発現調節機構の研究、2)cccDNA感染細胞に対する免疫監視機構の研究、3)cccDNA感染細胞に対する免疫治療法、の開発を設定した。
結果と考察
3年間の成果に合わせて記載した。
1.核酸アナログによる肝臓内の免疫応答遺伝子の動態はHBcr抗原の量と相関しており、治療中、plasmatoid dendric cellの機能回復が見られないことが明らかとなった。背景に、自然免疫の障害が示された。
2.ヒト肝細胞キメラマウスを用いてreal-time PCRにより肝内HBV cccDNAの定量系を構築した。キメラマウスにおいても免疫系の関与を検討することができるマウスモデルを確立した。
3.肝組織において、ケモカインCCL5/CCR5分子が関連するSTAT3が亢進し、HBV遺伝子を導入した肝細胞株ではCCL5が細胞内のSTAT3をリン酸化してウイルス産生を抑制している可能性が示された。
4.ヒストンメチル化阻害剤及びヒストン脱アセチル化阻害剤を用いてHBV 感染細胞株を処理したところcccDNAのコピー数の増加が観察された。HBVのクロマチン構造を標的とする治療法の可能性が示された。
5.HBVの複製はHBxの抑制により著明に低下を認め、HBxがHBV複製に重要な役割を担っていることを示した。転写因子解析により転写因子をHBx関連活性化転写因子と同定した。
6. K3-SPGをアジュバントとして用い、HBs-CTLの誘導が確認された。HBs抗原とアジュバントを用いて臨床研究を行うことが可能であると思われた。
7. PDCはIFN-α/β、IFN-λを産生することを明らかにした。HBV-Huh7、PDC、NK細胞との共培養系を用いて、HBV複製抑制においてはDCとNKの相互作用が重要であり、PDCはNK細胞のHBV複製抑制効果を増強することを明らかにした。
8.ヒト末梢血単核球およびヒトキメラマウスで自然免疫関連遺伝子を含む多くの遺伝子で発現変動を解析した。自然免疫によるウイルス排除の重要性が示された。
9.遺伝子型HのHBV株導入細胞ではTNF-αレセプター直下のCaspase 8の活性化が抑制されていることが明らかになり感染細胞の排除に関与している可能性があった。
10.TCRを取得できる技術を開発した。TCRを利用した免疫療法の開発を進めている。
11.TCR遺伝子導入リンパ球輸注療法の近交系マウスモデルを確立した。非自己T細胞を用いた抗原特異的T細胞療法を開発した。
12.TLR9リガンドとしてK3-SPGの開発に成功した。新規ワクチン開発に大きく貢献出来る可能性を有していた。安全性および有効性の臨床試験を計画する段階に入っている。
13.HBV genotype Cのアミノ酸配列を基にペプチドを合成し2種類のペプチドにおいてin vitroにおいて細胞傷害性T細胞の誘導が可能であり、HLA-A24 transgenic mouseにおいて強い免疫誘導効果が認められた。
結論
研究計画の3年目にあたる本年度は全体として計画通りに進捗した。本研究は1)cccDNAの存在様式、および遺伝子発現調節機構の研究、2)cccDNA感染細胞に対する免疫監視機構の研究、3)cccDNA感染細胞に対する免疫治療法の開発、を実施している。核酸投与時を含めたcccDNAの存在様式および免疫系を加えた宿主の発現遺伝子、エピゲノム、ケモカインが解析され、新しいマウスモデルの確立とともに、plasmatoid dendric cellを標的とする治療法の重要性が示された。T細胞治療およびペプチド療法の標的とすべき抗原が同定され、用いるアジュバンドの開発、およびT細胞の開発研究が進捗した。研究は当初の計画どおりに進んでいる。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201423037Z