HBVの感染初期過程を評価する系の開発とそれを用いた感染阻害低分子化合物およびレセプター探索

文献情報

文献番号
201423033A
報告書区分
総括
研究課題名
HBVの感染初期過程を評価する系の開発とそれを用いた感染阻害低分子化合物およびレセプター探索
課題番号
H24-B創-肝炎-一般-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
下遠野 邦忠((独)国立国際医療研究センター 肝炎免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 杉山 真也((独)国立国際医療研究センター 肝炎免疫研究センター )
  • 落谷 孝広((独)国立がん研究センター研究所)
  • 長田 裕之((独)理化学研究所基幹研究所)
  • 近藤 小貴(東京大学・医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
70,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臨床的にHBVの複製増殖を阻害するには、ウイルス複製をポリメーラーゼ阻害剤等の投与により出来るだけ低く抑えつつ、宿主免疫機能を活性化する事により、中和抗体産生を誘導し、生体機能により増殖を押さえ込む方法が採用されている。現状ではウイルス複製を抑えるポリメーラーゼ阻害剤のみが上市されているだけで、それ以外にHBV増殖複製を抑える薬剤がない。培養細胞を用いて簡便にHBV複製増殖系を評価する系がないために、抗HBV剤の開発が遅れているといえる。本研究では蛍光遺伝子、蛍光発光遺伝子(NanoLuc遺伝子を用いた)をゲノムに組み込んだHBVを構築し、感染過程を簡便に評価する系の開発、それを用いた阻害剤探索への道を開くための研究をおこなう。また、HBV感染系を用いた抗HBV阻害剤の開発には、HBVが感染増殖する細胞の選択が重要である。そこで感染効率の高い細胞株を得る事、あるいは肝幹細胞や成体幹細胞からの肝細胞分化技術を駆使するなどして感染効率の高い培養細胞の獲得をおこなう事も目指す。得られた評価系を用いてHBV感染を阻害する低分子化合物の探索等を行う。
研究方法
(1) NanoLuc(NL)遺伝子を組み込んだHBV(HBV/NL)の調製。
NL遺伝子を組み込んだゲノムからウイルス産生を行い、感染効率や感染評価を行う細胞の選択をおこなう。
(2) HBV/NL感染/複製を制御する宿主因子を探索する。
(3) 感染し易い細胞としにくい細胞を,一細胞レベルで分別して膜蛋白質の発現の違いを基にして、新たな受容体の解析を行う。
(4) HBV感染し易い細胞の開発。ラット肝細胞からHBV感染する細胞の樹立を試みる。
(5)理研天然化合物バンクNPDepo化合物ライブラリーについて抗HBV作用を示す化合物の同定を行う。
結果と考察
(1) NL遺伝子を組み込んだHBVゲノムの調製と改良。
組み換えウイルスの産生を野生型のウイルスにほぼ匹敵する効率で産生させる事が可能になった。この系を用いたHBV感染初期過程を評価しつつ、その過程を阻害する薬剤の開発に寄与すると期待される。
(2) NL活性を指標にしたHBV感染の検証。HBV阻害剤存在条件下で、HBV RNAの量はNL活性と呼応している事が分かった。
(3) HBV/NLを用いた感染効率や感染評価の検討。
NTCPを形質導入したHepG2あるいはHuH7を用いる事で、簡便に評価が可能になる事が分かった。
(4) HBVの生活環を制御する遺伝子の探索。siRNAライブラリーを用いた宿主因子の探索を行い、約100種類の遺伝子を得た。数回に亘る評価実験を行い,HBV複製を制御する約100種類の宿主遺伝子を明らかにした。これらの遺伝子が実際にHBV感染複製に作用しているか否かについて現在解析中である。
(5)ラット肝細胞を初期化して、さらにNTCP遺伝子を導入することによるHBV感染能を解析する試みをした。ラット肝幹細胞の性質を持つ細胞の最適培養条件を設定した。
(6) HBVプレゲノムRNA, HBV遺伝子を各々発現する組み換えアデノウイルスの作製を行い、これらの細胞で発現を調べた。
(7) HBV感染のスクリーニング系の確立
理研NPDepo化合物について抗ウイルス活性を評価し、環状ペプチドやカルボリン系化合物など複数のヒットを得た。またこれらの化合物については宿主に対して毒性を示さないことを確認した。
(8) アデノウイルスベクター(AdV)を用いたHBV感染機構の解析と、ウイルス蛋白質の機能解析。AdVは特に肝臓由来細胞への導入効率が高いため、薬剤誘導やトランスフェクション法など一般的に用いられている手法と比べて迅速かつ定量的にHBVゲノム複製を検出することが可能であることから抗HBV薬のスクリーニング等にも有用性が高いと考える。
結論
蛍光を発色する遺伝子(NanoLuc)を内包するHBV様粒子の産生を行い、これを用いて96 well規模での感染評価の実験条件を整えた。上の評価条件下において、siRNAライブラリーを用いた宿主因子の探索を行い、HBV複製に重要と思われる宿主因子を明らかにした。これまでに開発したHBV感染複製評価系が、抗HBV剤の開発に有効である事が示せた。エピジェネティクス制御因子が、肝がん細胞を正常な肝細胞様細胞にリプログラミング可能な事を明らかにした。HBV/NL粒子,HepG2/NTCP細胞を用いたハイスループットスクリーニング系を確立し,大規模スクリーニングを開始する準備を整えた.

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201423033Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
84,000,000円
(2)補助金確定額
84,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 51,890,338円
人件費・謝金 12,285,853円
旅費 1,691,989円
その他 4,131,820円
間接経費 14,000,000円
合計 84,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-05-23
更新日
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