次世代生命基盤技術を用いたB型肝炎制圧のための創薬研究

文献情報

文献番号
201423030A
報告書区分
総括
研究課題名
次世代生命基盤技術を用いたB型肝炎制圧のための創薬研究
課題番号
H24-B創-肝炎-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
小嶋 聡一(独立行政法人理化学研究所 ライフサイエンス技術基盤研究センター微量シグナル制御技術開発特別ユニット)
研究分担者(所属機関)
  • 小川健司(独立行政法人理化学研究所 吉田化学遺伝学研究室)
  • 平野 秀典(独立行政法人理化学研究所 計算分子設計研究グループ)
  • 吾郷 日出夫(独立行政法人理化学研究所 生命系放射光利用システム開発ユニット)
  • 白水 美香子(独立行政法人理化学研究所 ライフサイエンス技術基盤研究センター)
  • 掛谷 秀昭(京都大学大学院薬学研究科)
  • 松浦 知和(東京慈恵会医科大学 臨床検査医学)
  • 鈴木 治和(独立行政法人理化学研究所 オミックス応用技術研究グループ)
  • 金井 好克(大阪大学大学院医学系研究科 生体システム薬理学)
  • 堂前 直(独立行政法人理化学研究所 連携支援ユニット)
  • 名越 澄子(埼玉医科大学総合医療センター 消化器・肝臓内科)
  • 相崎 英樹(国立感染症研究所 ウイルス第2部)
  • 種村 健太郎(東北大学大学院農学研究科)
  • 渡辺 恭良(独立行政法人理化学研究所 ライフサイエンス技術基盤研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
207,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
B型肝炎(HBV)は、再活性化や耐性ウイルスの問題を抱え一生薬を飲み続けなければならず、持続感染成立や劇症化の分子機構はわかっておらず、基礎研究・創薬研究が大きく立ち遅れている。この状況からの脱却を目指し、理研小嶋・慈恵医大松浦・感染研相崎を中心として、大規模化合物探索研究を実施。脇田班・田中班・茶山班・下遠野班・満屋班はじめ他班と積極的に連携、化合物探索中心の研究体制を継続、理研の生命基盤技術を用いた独創的解析方法を駆使して、自作並びに他班から導入する探索系をハイスループット化し大量探索する。
研究方法
スクリーニンググループ(小嶋)は、HBVの進入、cccDNA形成、転写、カプシド形成と付随する病態について独自のスクリーニング系を構築、有効性・安全性評価グループ(相崎)や臨床グループ(松浦)、同事業他班から細胞スクリーニング系を導入。ハイスループットスクリーニングを行い、ヒット化合物さらにはリード候補化合物を得る。動物モデルで薬効を検証し、相崎グループと連携して安全性を確認し、リード化合物を得る。相崎グループは、松浦グループと連携してヒト肝移植キメラマウスモデル(Hepatology 2008)や、新たに免疫系を保持した細胞培養系・大小動物感染系を用いて小嶋グループで得たリード候補化合物の抗ウイルス効果、安全性・薬物動態を評価する。その一環として、PETを用いた肝残存ウイルス検出技術の開発を目指す。松浦グループは、相崎グループと連携してTK-NOGマウス系を作製する。核酸アナログ耐性HBV感染症例からウイルス産生細胞株を作製するとともにオミックス解析を駆使し、2次・3次スクリーニングに用いる標的試験を行い、将来の臨床実験実施に向けた準備を行う。
結果と考察
平成26年度は、これまでのスクリーニング研究でみつかったカプシド形成コアタンパク二量体化阻害抗ウイルス剤CFI-IPAと、HBV侵入阻害抗ウイルス剤NIEIの2種類の標的候補化合物を得た。さらにIFN疑似薬が強力な抗HBV活性を示し、cccDNA形成を押さえることを見出しcccDNA形成阻害抗ウイルス剤CDEと命名した。カプシド形成阻害抗HBV薬候補については、理研創薬・医療技術基盤プログラム(理研DMP)に導出することを目指し、有力候補ヒット化合物CFI-IPAを得た。今後、最低数百の各誘導体を合成展開、京コンピュータによるin silico探索、SPring8やNMRによる候補化合物構造解析によりnMオーダーで効くよう最適化。構造活性相関研究、ADMET研究、ヒト肝細胞移植キメラマウスを用いた有効性評価、PETを含む動態解析を進め、開発順位をつけて開発候補化合物を決定(平成27年度)、最終年度までに順次リード化合物を得て特許申請、GLP基準の非臨床試験を実施、パートナー企業を探し、慈恵松浦班が中心となり、事業終了後すぐの医師主導/企業主導臨床試験に向けて準備する。線維化阻害剤CMR46がキメラマウスにおいてHBV感染に伴う肝線維化を有意に抑える結果を得て、導出に向けて本プロジェクトから卒業。トランスクリプトーム解析、網羅的定量プロテオミクス、重水素置換法などの方法を駆使して候補化合物の標的タンパク質と標的部位を明らかにする(27年度中)。さらに、RNase H阻害剤/コアプロモータ阻害剤/MICA阻害剤など他班からの要請を検討し、見込みある探索系を取入れ、余力のある限りその大規模探索を続行する。動物実験で薬効を確認した化合物は、急性毒性解析とともに、感染研相崎班で一般毒性試験に加えて毒性アレイ評価系を活用、安全性・毒性評価を実施した。27年度もこれを継続する(平成27-28年度に重点)
結論
B型肝炎(HBV)の化学療法では、核酸アナログ製剤を服用してもウイルスを完全排除できず、耐性ウイルスの出現などが深刻な問題となっている。さらに、持続感染成立や劇症化の分子機構の解明、再活性化によるde novo B型肝炎も臨床的重要課題になっている。そこで、これらの問題点を解決・克服するために本研究班においては、他研究班との連携を積極的に行い、1)コアタンパクカプシド形成阻害剤DFI-IPA、2)cccDNA Eliminator (CDE)、3)BNCを用いた侵入阻害剤NIEI、4)コアプロモータ阻害剤、5)RNaseH阻害剤、6)HBV DNAを標的とした抗ウイルス剤、のスクリーニングを実施し、1)~3)においてヒット化合物を得て、構造活性相関研究、細胞レベルでの評価、動物レベルでの評価を行い、リード候補化合物の獲得を進めるとともに、4)~6)のスクリーニングをすすめている。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201423030Z