肝星細胞脱活性化剤開発による肝硬変の肝機能改善と肝発がん予防

文献情報

文献番号
201423017A
報告書区分
総括
研究課題名
肝星細胞脱活性化剤開発による肝硬変の肝機能改善と肝発がん予防
課題番号
H25-肝炎-一般-012
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
河田 則文(大阪市立大学 大学院医学研究科肝胆膵病態内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 一雄(大阪市立大学 大学院医学研究科機能細胞形態学)
  • 村上 善基(大阪市立大学 大学院医学研究科肝胆膵病態内科学)
  • 松原 勤(大阪市立大学 大学院医学研究科機能細胞形態学)
  • 祝迫 惠子(京都大学 大学院医学研究科標的治療腫瘍学講座)
  • 仲谷 和記(大阪市立大学 大学院医学研究科機能細胞形態学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
36,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究ではHSCの脱活性化とMFB制御により脱線維化を誘導し、残存成熟肝細胞を再生させて肝機能を回復させ、延いては発がん抑制に繋がる治療法の開発を、Cygb分子を主軸において検討する。即ち、Cygb活性化薬、あるいは、Cygbに関連する代謝経路の制御剤は肝機能回復と発がん抑制の鍵となるため、本研究では2年間をかけてin vitro, in vivo POCを作り、3年目に臨床試験への準備に移行する。
研究方法
[1]前臨床試験:①HSCを野生型マウス、Cygb欠損マウスから分離して機能比較を行う。②HSCやMFB細胞内のCygbを増加させ得る候補物質を見い出す。③研究を継続しているmicroRNAについて核酸創薬を念頭に検討する。
[2]in vitroでのPOC 取得と構造活性相関を行う。RNAを含む候補物質を2~3へと絞り込み、初期合成を行う。
[3]in vivo POC:候補化合物について、ヒト肝硬変類似マウスモデルを用いて、完成した線維化の復元がみられ、肝細胞の増殖と機能回復がみられるか検討する。
結果と考察
≪結果≫
・研究代表者(河田則文)
(1)CDAAモデルにおけるCygbの関与:野生型ならびにCygb-/-マウスにCDAAを与えてヒトのNASH様モデルを作製した。Cygb-/-マウスで炎症ならびに線維化反応の増強し、32週時点でCygb-/-マウスでは高度の線維化が生じ100%のマウスで腫瘍形成されることを確認した。 
(2) 抗線維化物質の候補であったアルンジン酸はマウス肝線維化モデルでの効果が見られなかったため、さらなる検討を断念した。
(3)ヒト星細胞 (HHSteC細胞)を用いる事で、HHSteC内のCygb量を発現誘導するfibroblast growth factor 2 (FGF2)を同定した。また、低分子化合物によるCygb誘導を行なっている。
・研究分担者(池田一雄)
(1) エピジェネティクス制御の観点から肝線維化に関わる細胞を特にヒストン2A.Zやヒストン3.3といった遺伝子発現に直接関与するヒストンバリアントの領域をChipシークエンスを用いて解析し、細胞の可塑性などを明らかにする研究を行なった。
・研究分担者(村上善基)
(1) miR-29aを用いた脱肝線維化に対する核酸医薬品開発の可能性の検討を進めている。
・ 研究分担者(仲谷和記)
(1)肝組織内におけるヒドロキシラジカル(・OH)を除去し発がんを予防する目的でLECラットを用いた実験を進め、H2の肝がん抑制効果を検討中である。
・研究分担者(松原 勤)
(1)ヒト星細胞株LX-2細胞ならびにHHSteC細胞のCOL1A2遺伝子の発現変動を基盤とした脱線維化評価系・ハイスループットスクリーニング系を構築。本評価系を用いて1920化合物について抗線維化能を検討した。
・ 研究分担者(松原三佐子)
(1)ヒト橋細胞株を用いた検討から、Cygb誘導剤としてFGF2を同定した。
(2)FGF2によるCYGBの発現増加はJNK依存的であることを証明した。
・ 研究分担者(Le Thuy)
(1) 星細胞の機能におけるCygb存在の意義
Cygb-/-マウス由来の星細胞では野生型のものに比較して活性酸素産生が亢進、IL-1, TNFα, IL-6, Cxcl-1, Cxcl-2, Cxcl-7, Ccl-2, Ccl-3, Ccl-4のmRNA発現が有意に増強していた。
(2) CDAAモデルの発がんならびに肝線維化における腸内細菌叢ならびに胆汁酸の関与について現在検討中である。
・ 研究分担者(大黒敦子)
CYGB遺伝子プロモーター2kb断片の下流にLuciferase遺伝子をつなげたDNA(CYGB-2k-Luc)を持つレンチウイルスを作製し、HHSteC細胞に導入し、化合物ライブラリーから候補化合物を選出する実験を行っている。
・ 研究分担者(祝迫惠子)
(1) 星細胞の純粋な分離法について検討した。
≪考察≫
Cygbを主軸として肝硬変を分子・細胞レベルで再評価しつつ本病態に関わるHSCやMFBの機能調節剤を開発することは、正に、肝硬変対策に不可欠で、肝炎関連厚生労働施策へ直接反映させ得る。肝硬変治療薬に対するUnmet Medical Needは高く、『治療満足度が低い疾患』であるため、有効な肝硬変治療薬が開発されれば、患者QOLの向上や医療費の削減など社会に与えるインパクトは大きく、医学的価値は極めて高い。
結論
肝星細胞の活性化制御に関してCygbが重要な因子であることが解明されつつある。Cygbの発現量を星細胞特異的に変動させ、星細胞をビタミンA貯蔵型に分化させることが肝細胞再生の素地形成にも繋がりうる。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201423017Z