肝炎ウイルス特異的免疫賦活化による根治治療的ワクチンの開発に関する研究

文献情報

文献番号
201423016A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎ウイルス特異的免疫賦活化による根治治療的ワクチンの開発に関する研究
課題番号
H25-肝炎-一般-009
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
小原 道法(公益財団法人東京都医学総合研究所 ゲノム医科学研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 保富 康宏(独立行政法人医薬基盤研究所・霊長類医科学研究センター)
  • 小原 恭子(鹿児島大学共同獣医学部•越境性動物疾病制御研究センター)
  • 押海 裕之(北海道大学大学院・医学研究科)
  • 鈴木 亮介(国立感染症研究所ウイルス第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究ではC型肝炎ウイルス(HCV)感染者に対する特異的免疫賦活化による根治を目指した治療的ワクチンの開発を目的とする。HCVは感染することにより80%の被感染者が慢性化してしまうが、20%は慢性化せず自己の免疫によりウイルスを排除する。これらのことは、免疫を賦活化することによりウイルスのコントロールができる可能性を示唆している。HCVによる持続感染化機構は十分に解明されていない。そこで、HCVによる宿主免疫抑制を回避し、特異的免疫賦活化による根治を目指す。ワクチニアウイルスワクチン及びDNAワクチンと免疫賦活化剤を組み合わせることにより、安全かつ強力な治療効果を示すワクチンプログラムを確立し、臨床応用への道を拓く。
研究方法
Cre/loxPシステムでHCV遺伝子を導入したトランスジェニックマウス(Tgマウス)と、IFN誘導性にCreを発現するTgマウスを交配させる事で、任意の時期にHCV遺伝子(CN2-NS2)をスイッチング発現するTgマウスを作製した。このマウスはHCV蛋白質発現に伴う正常な免疫応答が発動することで急性肝炎を発症し、その後も持続的な炎症状態が続き、3-6ヶ月後にはC型慢性肝炎の病態(肝臓の索状構造の乱れ、脂肪化、グリコーゲンの蓄積、繊維化)を発症する。このC型肝炎モデルマウスに、天然痘に対するワクチン株であるLC16m8株にHCVの非構造領域(NS2-NS5B)を挿入した組換えワクチニアウイルス(rVV-N25)を接種した。慢性肝炎の病態形成にTNF-a, IL-6の関与が示唆されたため、炎症性単球M1マクロファージ(M1Mφ)やM2マクロファージ(M2Mφ)の分布変化について解析した。
さらに、マクロファージ枯渇実験、抗IL-6受容体抗体によるIL-6シグナル阻害実験、PD-1抗体とrVV-N25のコンビネーション実験、DNAワクチンとrVV-N25のコンビネーション実験を進めた。
結果と考察
(1)慢性肝炎状態のHCV-Tg マウスにHCV遺伝子組換えワクシニアワクチンrVV-N25を単回皮内接種し、接種後のマウス肝臓を解析した。接種後、肝臓において壊死性細胞浸潤、肝細胞索の乱れ、肝細胞の膨化、グリコーゲン変性および脂肪変性といった慢性肝炎の病態の正常化が認められ、また肝臓内のHCV蛋白の減少がみられた。
(2)HCV蛋白の減少時にALT値の上昇やCTLなどによるHCV発現細胞の排除が認められなかったことから、rVV-N25接種によるHCV 蛋白の制御には細胞死を伴わない蛋白排除機構が働いていることが示され、この機序の解析を進めている。
(3)慢性肝炎マウスの肝臓内では一般的な急性炎症部位で多く見られるM1マクロファージではなく、慢性炎症部位に見られる炎症性サイトカイン(IL-6,TNFa)を発現するM2マクロファージが優位に存在している事を明らかにした。このマウスにrVV-N25 を接種し、接種後の免疫細胞を解析したところ、肝臓におけるM2マクロファージが減少し、肝炎を沈静化する事が明らかとなった。
(4)HCV-DNAワクチンとワクシニアウイルスのprime/boostワクチン併用療法について、WT マウス、HCVTgマウスを用いた評価を行った。併用することにより、細胞性免疫反応が増強し、肝臓中コア蛋白発現量の減少が見られ、治療効果が上がることを確認した。
(5) PrimeとBoostにおいて一部の遺伝子のみが重複するPrime/Boostワクチン接種方法が、全てのHCV遺伝子の重複するワクチンよりCTLの誘導およびHCV core蛋白の排除に非常に効果的であった。
結論
rVV-N25接種によるHCV蛋白の制御には細胞死を伴わない蛋白排除機構が働いていることが示唆された。HCV-Tgマウスの肝臓では、M1 MacでなくM2 MacがIL-6, TNF-αなどの炎症性サイトカインを産生する事でC型慢性肝炎を呈しており、M1 Macのような機能を持つM2 Macについての初めての知見が得られた。さらにrVV-N25は、炎症性サイトカイン産生M2 Macを減少させることで肝臓の病態を改善し、治療ワクチンとしての効果を発揮することが明らかとなった。
以上のことからHCV-rVVはHCVの排除及び肝炎正常化を目指した安全で効果的な治療ワクチンとして開発が期待される。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201423016Z