C型肝炎の新規診断法や新規治療法を開発するためのゲノムワイド関連解析の手法を用いた宿主因子の解析に関する研究

文献情報

文献番号
201423012A
報告書区分
総括
研究課題名
C型肝炎の新規診断法や新規治療法を開発するためのゲノムワイド関連解析の手法を用いた宿主因子の解析に関する研究
課題番号
H25-肝炎-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
田中 靖人(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 徳永 勝士(東京大学大学院医学系研究科)
  • 本多 政夫(金沢大学医薬保健研究域保健学系)
  • 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院)
  • 渡辺 久剛(山形大学医学部)
  • 島田 光生(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 消化器・移植外科学)
  • 中島 淳(横浜市立大学大学院医学研究科)
  • 近藤 泰輝(東北大学病院 消化器内科)
  • 小森 敦正(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター・肝臓内科)
  • 池尾 一穂(大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立遺伝学研究所生命情報研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
43,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HCV感染に対する自然経過、新規薬剤に対する応答性、病態進展(特に発癌)に関わる宿主要因を従来のSNP-/CNV(コピー数多型)-based GWASに加えて、次世代シークエンス(NGS)を用いたSequencing-based GWASにより同定する。遺伝要因のみならず、HCV感染各ステージにおけるエピジェネティックな変化やmicroRNAの関与を解析し、新規診断法・治療法の開発を目的とする。
研究方法
ヒト遺伝子解析倫理委員会の規定に基づいて、(1) 検体及び付帯情報の収集を継続(全国38施設から5,000検体以上):Sustained virologic response (SVR)後発癌例のゲノム採血及び組織(凍結、パラフィン組織)及びトルバプタン投与例のゲノム採血を継続。(2) ヒトSNPsを用いたゲノムワイド関連研究:AXIOM Genome-Wide Array Plates (Affymetrix)を用いたGWAS実施。(3) IL28B/ITPA SNPやHCV NS3/NS5A変異を測定し、各施設に情報提供:個別化医療の実現。薬剤耐性変異の解析。(4) 遺伝子発現解析によるIFN-λシグナルの解析。(5)住民/患者コホートにおける病態進展に関わる遺伝因子の探索及び肝炎コホートにおける自然治癒関連因子の解析。(6) エピゲノム解析を含むオミックス解析:非B非C型肝癌凍結組織を用いた網羅的メチル化解析及びmiRNA解析を統合的に実施。DNA methylation microarray (Infinium Human Methylation 450 BeadChip, illumina)解析。NGS: TruSeq Small RNA Sample Preparation Kitにてライブラリーを作成し、Single end 32塩基、3サンプル/1レーンでIllumina GA IIxにて読み取り、高度解析を実施。
結果と考察
(1)ゲノムワイド関連解析:これまでにHCV感染に対する応答性(自然治癒や病態進展)や薬剤応答性の個人差に関わる遺伝要因(IL28B, HLA-DQ, ITPA, PNPLA3, PSMD3-CSF SNPsなど)を明らかにすることができた。新たにAxiom ASIで取得したタイピングデータを用いて、①住民コホートにおいて肝発癌を対象としたGWAS実施。②SVR後の肝発癌(Case群124例、Control群337例)を対象としたGWASを実施した結果、有望なSNPsを複数同定。Validationのための検体を収集し、再現性確認実験を開始。③IFN治療に伴う好中球減少(PSMD3-CSF)及びHCV自然治癒に関連する遺伝要因(HLA-DQB1, IFNL3-IFNL4)を同定し、論文報告。④IL28Bで特異的に誘導されるLECT2は自然免疫を活性化し、HCV複製を抑制。⑤PNPLA3遺伝子は、NASHのみならずC型肝炎線維化進展に関与した。(2)オミックス解析:①非B非C型肝癌例に関してオミックス解析を実施した結果、癌部においてメチル化レベルの低下が顕著な領域として、miRNAコーディング領域があり、発癌への関与が示唆された。さらに、網羅的解析により特定のmiRNAを同定し、パラフィン組織を用いたValidationを実施中。②癌部で最も強い高メチル化を示したのはTBX15であり、肝癌組織での低発現群で有意に無再発生存率が不良。③C型肝炎において低発現のmiRNAの中で、miR146b-5pは単球系細胞で低下。miR146-5p inhibitorを導入するとCXCL10とTGF-beta、IL10発現が有意に増加。④NGSを代表とする大規模配列データの解析に必要となる解析フローを整備・検証を進めた。
結論
IL28B/ITPA SNPs及びHCV NS3/5A変異に基づいた個別化医療を実現した。さらに、発癌母地としての非癌部肝組織を対象としてHCV感染病態をより細分化しIL28B SNP以外の宿主因子探索を行うことにより、新たな治療標的を同定し、肝病態進展の新規診断法や治療法を確立する。すなわち、高齢者の多いC型肝炎患者に対して、遺伝情報に基づいた個別化医療を目指すことで、社会福祉に貢献できる。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201423012Z