がん化学療法及び免疫抑制療法中のB型肝炎ウイルス再活性化予防対策法の確立を目指したウイルス要因と宿主要因の包括的研究

文献情報

文献番号
201423003A
報告書区分
総括
研究課題名
がん化学療法及び免疫抑制療法中のB型肝炎ウイルス再活性化予防対策法の確立を目指したウイルス要因と宿主要因の包括的研究
課題番号
H24-肝炎-一般-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
溝上 雅史(独立行政法人国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 持田 智(埼玉医科大学 消化器内科)
  • 楠本 茂(名古屋市立大学医学研究科)
  • 池田 公史(国立がん研究センター東病院)
  • 梅村 武司(信州大学医学部)
  • 宮寺 浩子(国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
  • 是永 匡紹(国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
  • 木村 公則(東京都立駒込病院)
  • 大隈 和(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 調 憲(九州大学大学院医学研究所)
  • 内田 茂治(日本赤十字社中央血液研究所)
  • 考藤 達哉(国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
B型肝炎ウイルス(HBV)再活性化は、がん化学療法および自己免疫疾患治療など幅広い臨床分野で問題となっており、昨今の分子標的治療では特にその可能性が指摘されている。再活性化時の対処の遅れは患者の予後悪化に繋がるため、その予測法、診断・治療法の確立が必要である。本研究班では、がん化学療法及び免疫抑制療法中のB型肝炎ウイルス(HBV)再活性化予防対策法の確立を目的とする。最終的には、費用対効果を考慮した効果的なHBV再活性化防止対策を構築することを目標とする。
研究方法
1)4つの多施設共同研究(自己免疫疾患症例、悪性リンパ腫症例、固形がん症例、造血幹細胞移植症例)から得られる再活性化率、肝炎発症率、劇症化率を元にして、臨床的リスクの評価と再活性化に関与する因子を明らかにする。2)遺伝子関連の附随臨床研究に登録された症例の検体を用いて、HBV変異、宿主遺伝子(HLA等)を解析することにより、臨床情報以外の再活性化関連因子を明らかにする。3)HBV再活性化の診断標準化のために、既存のHBV関連検査の精度評価を行う。HBVDNA高感度検出法、HBV変異高感度定量法の開発を行い、診断における有用性を評価する。4)HBVDNAの自然変動に関与する免疫因子を明らかにし、肝炎発症リスク予測における有用性を検討する。
結果と考察
前年度までの検討により、各種疾患群でのHBV再活性化率、肝炎発症率が明らかとなった。各疾患群におけるHBV再活性化率(HBVDNA>1.5 or 2.1 log copy/ml)は、自己免疫疾患3.2%、血液疾患8.0%、固形がん2.0%、造血幹細胞移植11.6%であった。HBc抗体陽性献血者におけるHBVDNA自然陽転率は0.94%であった。しかし、自己免疫性疾患、固形がん症例の中にはHBVDNAが陽性となっても自然に消失する症例も存在し、全例が抗HBV治療の適応とはならないと考えられた。
結論
4つの多施設共同研究によって、各種疾患でのHBV再活性化率を明らかにした。また、定期的なHBVDNAモニタリングと核酸アナログのPreemptive therapyによって肝炎発症は抑止可能であることが明らかになった。しかし、頻回のHBVDNA検査、長期間継続される抗HBV治療は、医療経済的に大きな負担となる。現時点では、臨床情報のみでHBV再活性化リスクを予測することは困難であり、HBV遺伝子変異、宿主遺伝子(HLA等)、免疫因子など、新たな因子を探索同定する必要がある。またHBV再活性化のリスク因子として、HBs抗体低力価が示唆されていることから、HBVワクチン投与によってHBs抗体価を上昇させることが、HBV再活性化の防止に繋がる可能性がある。HBVワクチンによる再活性化防止効果をProspectiveに検証する予定である。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201423003B
報告書区分
総合
研究課題名
がん化学療法及び免疫抑制療法中のB型肝炎ウイルス再活性化予防対策法の確立を目指したウイルス要因と宿主要因の包括的研究
課題番号
H24-肝炎-一般-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
溝上 雅史(独立行政法人国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 持田 智(埼玉医科大学 消化器内科・肝臓内科)
  • 楠本 茂(名古屋市立大学大学院医学研究科 腫瘍・免疫内科学分野)
  • 池田 公史(国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科)
  • 梅村 武司(信州大学医学部 消化器内科)
  • 宮寺 浩子(国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
  • 是永 匡紹(国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
  • 木村 公則(都立駒込病院 肝臓内科)
  • 大隈 和(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 調  憲(九州大学大学院医学系研究科 消化器・総合外科)
  • 内田 茂治(日本赤十字中央血液研究所 感染症解析部)
  • 考藤 達哉(国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
B型肝炎ウイルス(HBV)再活性化は、がん化学療法および自己免疫疾患治療など幅広い臨床分野で問題となっており、昨今の分子標的治療では特にその可能性が指摘されている。再活性化時の対処の遅れは患者の予後悪化に繋がるため、その予測法、診断・治療法の確立が必要である。本研究班では、がん化学療法及び免疫抑制療法中のB型肝炎ウイルス(HBV)再活性化予防対策法の確立を目的とする。最終的には、費用対効果を考慮した効果的なHBV再活性化防止対策を構築することを目標とする。
研究方法
1)4つの多施設共同研究(自己免疫疾患症例、悪性リンパ腫症例、固形がん症例、造血幹細胞移植症例)から得られる再活性化率、肝炎発症率、劇症化率を元にして、臨床的リスクの評価と再活性化に関与する因子を明らかにする。またHBVDNAが陽性化しても肝炎を発症することなく自然に低下する症例の臨床的特徴を明らかにする。2)遺伝子関連の附随臨床研究に登録された症例の検体を用いて、HBV変異、宿主遺伝子(HLA等)を解析することにより、臨床情報以外の再活性化関連因子を明らかにする。3)HBV再活性化の診断標準化のために、既存のHBV関連検査の精度評価を行う。HBVDNA高感度検出法、HBV変異高感度定量法の開発を行い、診断における有用性を評価する。4)HBVDNA変動に関与する免疫因子を明らかにし、肝炎発症リスク予測における有用性を検討する。
結果と考察
各種疾患群でのHBV再活性化率、肝炎発症率を明らかにした。各疾患群におけるHBV再活性化率(HBVDNA>1.5 or 2.1 log copy/ml)は、自己免疫疾患3.2%、血液疾患8.0%、固形がん2.0%、造血幹細胞移植11.6%であった。HBc抗体陽性献血者におけるHBVDNA自然陽転率は0.94%であった。定期的なHBVDNA測定と核酸アナログのPreemptive therapyによって再活性化後肝炎を防止することが可能であることが明らかとなった。HBV再活性化肝炎患者のHBV遺伝子を解析し、特徴的な変異部位を同定した。HBVDNA高感度測定法、HBV変異高感度定量法を開発し、再活性化との関連性を検討した。日本で使用可能なHBs抗原測定キットの比較検証を行ったが、各種キット間での差が大きく、今後測定法の標準化が必要と考えられた。HBVDNAが陽性となっても自然に消失する症例も存在し、全例が抗HBV治療の適応とはならないと考えられた。
結論
4つの多施設共同研究によって、各種疾患でのHBV再活性化率を明らかにした。また、定期的なHBVDNAモニタリングと核酸アナログのPreemptive therapyによって肝炎発症は抑止可能であることが明らかになった。しかし、頻回のHBVDNA検査、長期間継続される抗HBV治療は、医療経済的に大きな負担となる。現時点では、臨床情報のみでHBV再活性化リスクを予測することは困難であり、HBV遺伝子変異、宿主遺伝子(HLA等)、免疫因子など、新たな因子を探索同定する必要がある。またHBV再活性化のリスク因子として、HBs抗体低力価が示唆されていることから、HBVワクチン投与によってHBs抗体価を上昇させることが、HBV再活性化の防止に繋がる可能性がある。HBVワクチンによる再活性化防止効果をProspectiveに検証する予定である。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201423003C

収支報告書

文献番号
201423003Z