文献情報
文献番号
201423001A
報告書区分
総括
研究課題名
経口感染によるウイルス性肝炎(A型及びE型)の感染防止、病態解明、遺伝的多様性及び治療に関する研究
課題番号
H24-肝炎-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
岡本 宏明(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 八橋 弘(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
- 中山 伸朗(埼玉医科大学消化器内科・肝臓内科)
- 新井 雅裕(東芝病院消化器内科)
- 横須賀 收(千葉大学大学院医学研究院消化器・腎臓内科学)
- 石井 孝司(国立感染症研究所ウイルス第二部)
- 鈴木 一幸(岩手医科大学消化器内科肝臓分野)
- 日野 学(日本赤十字社血液事業本部)
- 姜 貞憲(手稲渓仁会病院消化器病センター)
- 李 天成(国立感染症研究所ウイルス第二部)
- 大河内信弘(筑波大学医学医療系消化器外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
34,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
経口感染によるウイルス性肝炎(A型及びE型)の発生実態の把握と臨床病態の解明、起因ウイルスの遺伝的多様性に関する理解の深化、感染源・感染経路の解明、診断法の改良及び治療法・予防法の確立を目標とする。
研究方法
発生動向と重症化リスク因子の調査、感染実態と臨床病態の調査、A型肝炎ウイルス(HAV)株並びにE型肝炎ウイルス(HEV)株のゲノム塩基配列の蒐集と解析、HEV宿主動物調査、食品媒介感染の可能性の調査、慢性HEV感染と肝外病変の調査、HEV増殖機構解明、診断法の改良、抗ウイルス剤、ワクチン開発のための予備的検討などによる。
結果と考察
A型肝炎について、1)2014年春に全国的な流行があり、過去10年間で最も多い届け出患者数(432例)であったこと、2)その流行ではIA型の同一株が約65%を占め、広域に流通した共通の感染源による同時感染の可能性が示唆されたこと、3)高齢者で昏睡型の症例が多く、多彩な合併症を併発することが予後不良の要因となっていること、4) A型肝炎流行地への渡航前のみならず、高齢者や介護従事者などへのA型肝炎ワクチン接種を積極的に推奨すべきであること、また5)La蛋白の発現を抑制するJAK阻害剤(AG490, SD-1029)がHAV増殖を抑制し、新規治療薬の候補となりうること、などが示された。E型肝炎については、1)2014年の届け出患者数が過去最高の151例であったこと、2)北海道の献血者でのHEV-NATが20検体プールから個別検査に移行し、検出感度が上昇した結果、10,000人当たり0.6人から2.2人のHEV RNA陽性率になったこと、3)肝移植後患者でのHEV感染状況の全国調査(17施設、1,978例)を実施した結果、2例の慢性HEV感染例が認められ、ともに周術期の輸血が感染原因であったことが判明し、1例ではリバビリン治療により著効が得られたこと、4)希有ながら3f型HEVの国内感染が認められたこと、5)フェレットにおけるferret HEVの感染により肝障害を伴う一過性感染と持続感染が認められ、急性・慢性E型肝炎の動物モデルとして期待できること、6)HEVの細胞への侵入には粒子表面の膜の有無に関わらず、クラスリン依存性のエンドサイトーシスが重要であること、7)RNAポリメラーゼ阻害剤である2’-C-methylcytidineが治療薬として有望であることなど、病態解明、治療法の確立や感染予防対策の構築に資する多くの成果が班員及び班友の協力によって得られた。これらの研究成果は今後の肝炎医療の水準の向上を目指した厚生労働行政施策の推進に資するものと考えられる。
結論
肝炎発生の動向把握に加え、病態解明、感染予防対策の構築や治療法確立に資する多くの成果を班員及び班友の協力によって得ることができた。
公開日・更新日
公開日
2017-01-20
更新日
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