肝炎に関する全国規模のデータベースを用いた肝炎治療の評価及び肝炎医療の水準の向上に資する研究

文献情報

文献番号
201422007A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎に関する全国規模のデータベースを用いた肝炎治療の評価及び肝炎医療の水準の向上に資する研究
課題番号
H24-肝炎-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
正木 尚彦(独立行政法人国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 泉 並木(武蔵野赤十字病院 消化器科)
  • 八橋 弘(国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
  • 川崎 洋平(東京理科大学 理学部第二部数学科)
  • 河田 則文(大阪市立大学大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学)
  • 高後 裕(旭川医科大学病院 消化器病態学・腫瘍・血液病態学)
  • 川上 由育(広島大学病院 消化器・代謝内科)
  • 島上 哲朗(金沢大学附属病院 消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
29,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先行する「肝炎に関する全国規模のデータベース構築に関する研究(平成21年度~23年度)」では、全国規模の臨床データ収集・蓄積システムの構築を目的とし、特に、「インターフェロン医療費助成を受けたB型・C型肝疾患患者の治療効果判定報告書の収集」を手懸けた。平成24年度からの本研究班では、インターフェロン治療の受療状況、完遂率、さらには治療効果において均霑化が図られているかを明確にすること、もし地域差があるとすればその要因は何かを検討することとした。
研究方法
1)先行研究で構築したデータ収集を継続するとともに、対象自治体のさらなる拡大、および、肝炎情報センターからの解析結果発信システムの構築に着手した。
2)平成25年4月までに収集した報告書のうち、C型肝疾患患者、および治療レジメの83.4%を占めるペグインターフェロン・リバビリン併用療法(P/R)に絞って受療状況、完遂率、治療効果に関する地域差の有無、およびその要因について検討した。
3)地域差に関する重点的検討:大都市圏(東京、大阪)、地方圏(長崎、石川、広島、北海道)の6自治体を対象として、インターフェロン受療状況の詳細な調査を開始した。
結果と考察
1)平成26年11月までに38自治体から23,380例の報告書が回収された。このうち、問い合わせ中8例、諸事由による除外例236例を除いた23,136例については全国および自治体毎の単純集計を終了し、協力自治体へフィードバック済みである。
2)インターフェロン治療の治療完遂率、治療成績が劣る2ブロックの存在が明らかとなった。その原因について、高齢者比率、人口10万人あたり肝臓専門医数との有意な相関は見られなかった。投与完遂率は著効率と有意に相関していることから(r = 0.879, P = 0.002)、投与中断に関与する諸因子について検討を進めた。投与中断例における有害事象の頻度には有意な地域差を認めなかった。一方、有害事象以外の理由で投与中断した症例について、効果不良は比較的明確な理由であることから、その比率について検討したところ、地域によって異なることが判明した(P = 0.019)。尚、ウイルス側要因に地域差のある可能性については今後の検討課題であると考えている。また、効果不良以外の中断理由には、肝発癌、他疾患発症、転居、経済的理由、自己中断などが含まれるが、特に後二者に関連するものとして、インターフェロン治療への診療アクセス面における地域差の存在が示唆された。
結論
インターフェロン治療の受療状況、完遂率、さらには治療効果において地域差のあること、特に、北海道・東北、四国に解決すべき課題のあることが明らかとなった。その要因として、有害事象以外の原因による治療中止率に差異を認めたことから、人口過疎、交通が不便、一次産業主体、等の条件が重なっていることで、医療資源への診療アクセスに影響した可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201422007B
報告書区分
総合
研究課題名
肝炎に関する全国規模のデータベースを用いた肝炎治療の評価及び肝炎医療の水準の向上に資する研究
課題番号
H24-肝炎-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
正木 尚彦(独立行政法人国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 泉 並木(武蔵野赤十字病院 消化器科)
  • 八橋 弘(国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
  • 川崎 洋平(東京理科大学 理学部第二部数学科)
  • 河田 則文(大阪市立大学大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学)
  • 高後 裕(旭川医科大学病院 消化器病態学・腫瘍・血液病態学)
  • 川上 由育(広島大学病院 消化器・代謝内科、肝臓病学)
  • 島上 哲朗(金沢大学附属病院 消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成20年4月から全国で展開されているB型・C型肝疾患のインターフェロン治療に対する医療費助成事業と協働し、わが国でインターフェロン治療を受けているB型・C型肝疾患患者の年齢、性別、肝病変進行度、ウイルス型、ウイルス量、副作用の出現状況、および最終的治療効果等に関する臨床情報の収集を平成21年度から開始した。特に、平成24年度からは先行研究で明らかとなった患者の受療状況の地域差に焦点をあて、その原因解明、ならびに地域特性を勘案した肝炎総合対策の推進を目指すことを主たる研究目的とした。
研究方法
1)先行研究で構築したデータ収集を継続するとともに、対象自治体のさらなる拡大、および、肝炎情報センターからの解析結果発信システムの構築に着手した。
2)平成25年4月までに収集した報告書のうち、C型肝疾患患者、および治療レジメの83.4%を占めるペグインターフェロン・リバビリン併用療法(P/R)に絞って受療状況、完遂率、治療効果に関する地方圏差の有無を検討した。
3)地域差に関する重点的検討:大都市圏(東京、大阪)、地方圏(長崎、石川、広島、北海道)の6自治体を対象として、インターフェロン受療状況の詳細な調査を開始した。
結果と考察
1)平成26年11月までに38自治体から23,380例の報告書が回収された。このうち、問い合わせ中8例、諸事由による除外例236例を除いた23,136例については全国および自治体毎の単純集計を終了し、協力自治体へフィードバック済みである。
2)投与完遂率における地域差:投与完遂率の全国平均は82.8%であったが、9地域間においてP/R投与完遂率に有意差を認めた(P = 0.009)。治療効果における地域差:9地域間においてP/Rの治療効果(著効、再燃、無効、判定不能)に有意差を認めた(P < 0.001)。さらに、C型肝炎ウイルスの遺伝子型、ウイルス量(高・低)で層別化すると、高ウイルス量群では遺伝子型にかかわらず地域差の存在することが明らかとなった。多変量解析(強制投入法)を用いて、非著効に関与する因子を検討すると、女性(P < 0.001, OR 0.745 [0.688 &#8211;0.806])、高齢者(P < 0.001, OR 0.664 [0.607 &#8211;0.726])、再治療例(P < 0.001, OR 0.666 [0.611 &#8211;0.727])、遺伝子型1型(P < 0.001, OR 0.262 [0.239 - 0.287])、高ウイルス量(P < 0.001, OR 0.299 [0.248 &#8211;0.360])、治療前AST高値(P = 0.003, OR 0.995 [0.993 &#8211;0.998])、治療前ALT低値(P < 0.001, OR 1.007 [1.005 &#8211;1.009])、治療前血小板低値(P < 0.001, OR 1.026 [1.015 &#8211;1.037])、FIB-4高値(P < 0.001, OR 0.890 [0.851 - 0.930])、および、地域差(P < 0.001)が抽出された。特に、九州を基準にすると、北海道・東北(P < 0.001)、四国(P < 0.001)の2地方圏で有意に非著効が多かった。投与中断に関与する諸因子について検討を進めた。投与中断例における有害事象の頻度には有意な地域差を認めなかった。一方、有害事象以外の理由で投与中断した症例について、効果不良は比較的明確な理由であることから、その比率について検討したところ、地域によって異なることが判明した(P = 0.019)。尚、ウイルス側要因に地域差のある可能性については今後の検討課題であると考えている。また、効果不良以外の中断理由には、肝発癌、他疾患発症、転居、経済的理由、自己中断などが含まれるが、特に後二者に関連するものとして、インターフェロン治療への診療アクセス面における地域差の存在が示唆された。
結論
インターフェロン治療の受療状況、完遂率、さらには治療効果において地域差のあること、特に、北海道・東北、四国に解決すべき課題のあることが明らかとなった。その原因を今後探索することにより、地域の特性に応じた肝炎総合対策の立案が可能になるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201422007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
B型・C型肝疾患に対するインターフェロン治療を受けた患者に関する2万例以上の全国規模データベースを構築し、さまざまな疫学的解析を実施するとともに、京都大学とのMTA契約を締結することで、データベース二次利用に関しても研究が発展している。
臨床的観点からの成果
C型肝疾患に対するインターフェロン治療の受療状況、ウイルス学的治療効果に関して、全国を9
ブロックに分けて検討すると少なからず地域差の存在することが明らかとなった。その要因として診療アクセス面での課題の存在が示唆され、病病連携・病診連携の重要性が再確認された。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
地域差の存在が示唆されたブロックのうち、北海道ブロックについては、平成26年5月に札幌で開催された肝炎対策ブロック別担当者会議に随行し、3つの肝疾患診療連携拠点病院担当者、北海道庁、札幌市、旭川市、函館市、小樽市等の行政担当者の参加する意見交換会を肝炎情報センター主催で開催した。2015年10月には、東北ブロックについて7拠点病院、5県庁、肝炎情報センター合同で肝炎ブロック会議を開催した(仙台)。
その他のインパクト
本研究で得られた成果について、研究代表者が講師として招聘された拠点病院主催の少なくとも8件の講演会・研修会において紹介することが出来、医療者のみならず一般市民への肝炎総合対策に関する啓発活動に貢献しえた。

発表件数

原著論文(和文)
1件
内科学会座談会
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
JDDW2016
学会発表(国際学会等)
2件
APASL, International Conference on Pharmacoepidemiology & Therapeutic Risk Management
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
「肝炎ブロック会議」の提唱
その他成果(普及・啓発活動)
8件
拠点病院主催の研修会、講演会で発表

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sato I, Shimbo T, Kawasaki Y, et al.
Efficacy and safety of interferon treatment in elderly patients with chronic hepatitis C in Japan: A retrospective study using the Japanese Interferon Database.
Hepatology Research , 45 (8) , 829-836  (2015)
10.1111/hepr.12419
原著論文2
Sato I, Shimbo T, Kawasaki Y, et al.
Comparison of Peginterferon alfa-2a and alfa-2b for treatment of patients with chronic hepatitis C: a retrospective study using the Japanese Interferon Database.
Drug Design, Development and Therapy , 9 , 283-290  (2015)
10.2147/DDDT.S72245
原著論文3
Masaki N, Yamagiwa Y, Shimbo T, et al.
Regional disparities in interferon therapy for chronic hepatitis C in Japan: a nationwide retrospective cohort study
BMC Public Health , 15 (566)  (2015)
10.1186/s12889-015-1891-2
原著論文4
Akutagawa M, Ide K, Kawasaki Y, et al.
Safety Profile of Telaprevir-Based Triple Therapy in Elderly Patients: A Real-World Retrospective Cohort Study
Biol Pharma Bull , 40 , 1525-1529  (2017)
原著論文5
Akutagawa M, Kawasaki Y, Kawasaki A, et al.
Cost-Outcome Description of PEG-IFN-α2bRBV for Hepatitis C: Results Based on the Interferon Database
Biol Pharma Bull , 40 , 594-597  (2017)
原著論文6
Iketani R, Ide K, Yamada H, et al.
The Safety Profile of Telaprevir-Based Triple Therapy in Clinical Practice: A Retrospective Cohort Study
Biol Pharma Bull , 40 , 687-692  (2017)
10.1248/bpb.b16-00989

公開日・更新日

公開日
2016-05-23
更新日
2018-06-18

収支報告書

文献番号
201422007Z