血液凝固因子製剤によるHIV感染被害者の長期療養体制の整備に関する患者参加型研究

文献情報

文献番号
201421028A
報告書区分
総括
研究課題名
血液凝固因子製剤によるHIV感染被害者の長期療養体制の整備に関する患者参加型研究
課題番号
H24-エイズ-指定-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
木村 哲(公益財団法人エイズ予防財団)
研究分担者(所属機関)
  • 柿沼 章子(社会福祉法人はばたき福祉事業団)
  • 田中 純子(広島大学大学院医歯薬保健学研究院疫学・疾病制御学)
  • 照屋 勝治(国立国際医療研究センター病院エイズ治療・研究開発センター)
  • 江口 晋(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科移植・消化器外科)
  • 遠藤 知之(北海道大学病院血液内科)
  • 三田 英治(国立病院機構大阪医療センター消化器科)
  • 上平 朝子(国立病院機構大阪医療センター感染症内科)
  • 四柳 宏(東京大学医学部附属病院感染症内科)
  • 藤谷 順子(国立国際医療研究センター病院リハビリテーション科)
  • 大金 美和(国立国際医療研究センター病院エイズ治療・研究開発センター)
  • 中根 秀之(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻リハビリテーション科学講座)
  • 潟永 博之(国立国際医療研究センター病院エイズ治療・研究開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 エイズ対策研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
38,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染血友病等患者はHIV/HCVの重複感染の問題に加え、HIV感染自体による、あるいは抗HIV療法の副作用による糖代謝異常や脂質異常、長期療養に伴う高齢化とそれに伴う関節症悪化による日常活動能の低下、精神的な問題等々を抱えている。患者参加型で患者の実態とニーズを明らかにし、医療と社会福祉が連携して最良の医療やケアを提供できる仕組みを確立することを目指した。
研究方法
研究方法としては下記の1から6のサブテーマに分け、同時並行で研究を行った。
1. 全国のHIV感染血友病等患者の健康状態・日常生活の実態調査
2. C型慢性肝炎の進行度評価の標準化に関する研究
3. HIV/HCV重複感染者における新規抗HCV療法の効果予測に関する研究
4. 血友病性関節症等のリハビリテーション技法に関する研究
5. HIV感染血友病等患者の医療福祉と精神的ケアにおける課題と連携に関する研究
6. HIV感染血友病等患者に必要な医療の連携に関する研究
結果と考察
サブテーマごとに記載する。
1. WHOによるICF(国際生活機能分類)generic set 7項目を用い生活困難度を年齢別に解析した。その結果、ICFスコアが50歳以降、J字型に大きく上昇(悪化)していることが示された。その傾向は歩行、移動、痛みの感覚で顕著であり、リハビリテーションが、生活機能の回復に重要であることが裏付けられた。生活困難水準は、一般男性80歳代の生活困難度と同等以上の水準であることが示された。全国の拠点病院にHCVに関するアンケート調査を行い、393例の報告が寄せられた。135例が慢性肝炎、56例が肝硬変、肝細胞がん保有例が9例と、深刻な状況であった。患者の自己管理能力を高め、意欲をもって療養を継続できるよう「患者が行うチェックチェック」を作成した。
2. 血液製剤によるHIV/HCV重複感染患者でHCV単独感染よりも肝線維化の進行が速いため、長崎大学付属病院等5施設共同で評価法を検討した。線維化の評価にはFibroScan®、ARFIが有用であるが、これらの設備を備えている医療機関はまだ少ないため、サロゲート・マーカーとして血液一般検査・血液生化学検査より算出可能なものを検討し、APRIおよびFIB4が有益であることが示された。食道静脈瘤の有無によりカットオフ値を設定した(APRI>0.85, FIB4>1.85)。このカットオフ値を超えた場合は、内視鏡で静脈瘤の有無をチェックすべきと考え、「HIV/HCV重複感染患者におけるC型慢性肝炎の進行度評価ガイドライン」を作成した。
3. HIV/HCVに重複感染血友病等患者に対するC型慢性肝炎の治療は予後を改善する上で重要である。新たに登場してきた抗ウイルス薬を用いた治療法に関する検討の基盤構築としてHCV単独感染例10例及びHIV・HCV重複感染例11例における薬剤耐性変異に関する検討を行った。次世代シークエンサーを用いシメプレビル耐性変異の頻度を調べた。シメプレビル軽度耐性変異は認められたが中等度~高度耐性をもたらす遺伝子変異は認められなかった。
4. 「運動機能計測」を行った。可動域制限を認めたのは、多い順に膝関節伸展、股関節屈曲、足関節底屈、足関節背屈、肘関節屈曲、肩関節屈曲の順で、制限の頻度は年齢と共に上昇した。筋力は上肢では、ほとんどの項目で、年代が上昇すると低下する傾向にあり、60歳代群の筋力が有意に低かった。下肢でも60歳代群の筋力が有意に低下していた。歩行速度は健常者と比べ、40歳代84.1%、50歳代77.9%、60歳代54.7%であった。これらをもとに「中高年血友病患者の診療にあたって/PT・OTのためのハンドブック2015」を作成した。
5. HIV感染血友病等患者の医療と福祉・介護の連携促進に向け情報収集と支援評価を強化するために、医療職用及び介護・福祉職用「情報収集・療養支援アセスメントシート」、「連携先検討シート」の3種のツールと「医療と福祉・介護の連携に関するハンドブック」を作成した。HIV診療医向け診療補助ツール「HIV診療における精神障害―精神障害の診断治療のためのパッケージ-」を完成させた。
6. 昨年度作成した「診療チェックシート」の「解説書」を作成した。項目は、肝疾患、心疾患、腎疾患、耐糖能異常・高脂血症、骨疾患、血友病性関節症、歩行とADL、認知機能障害、抑うつ、免疫不全にわたり専門医への相談のタイミングや診療判断の流れ図等を付けた。
結論
年齢による生活機能の低下は、リハビリテーション専門医による運動機能計測で客観的に裏付けられた。適切なリハビリテーションと、介護・福祉の活用が重要である。C型肝炎進行度評価のガイドラインを作成した。その他多くのマニュアル等を作成した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

文献情報

文献番号
201421028B
報告書区分
総合
研究課題名
血液凝固因子製剤によるHIV感染被害者の長期療養体制の整備に関する患者参加型研究
課題番号
H24-エイズ-指定-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
木村 哲(公益財団法人エイズ予防財団)
研究分担者(所属機関)
  • 柿沼 章子(社会福祉法人はばたき福祉事業団)
  • 田中 純子(広島大学大学院医歯薬保健学研究院疫学・疾病制御学)
  • 照屋 勝治(国立国際医療研究センター病院エイズ治療・研究開発センター)
  • 江口 晋(長崎大学大学院移植・消化器外科)
  • 遠藤 知之(北海道大学病院血液内科)
  • 三田 英治(国立病院機構大阪医療センター消化器科)
  • 上平 朝子(国立病院機構大阪医療センター感染症内科)
  • 四柳 宏(東京大学医学部附属病院感染症内科)
  • 藤谷 順子(国立国際医療研究センター病院リハビリテーション科)
  • 大金 美和(国立国際医療研究センター病院エイズ治療・研究開発センター)
  • 中根 秀之(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻リハビリテーション科学講座)
  • 潟永 博之(国立国際医療研究センター病院エイズ治療・研究開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 エイズ対策研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染血友病等患者はHIV/HCVの重複感染の問題に加え、HIV感染自体による、あるいは抗HIV療法の副作用による糖代謝異常や脂質異常、長期療養に伴う高齢化とそれに伴う関節症悪化による日常活動能の低下、精神的な問題等々を抱えている。患者参加型で患者の実態とニーズを明らかにし、医療と社会福祉が連携して最良の医療やケアを提供できる仕組みを確立することを目指した。
研究方法
研究方法としては下記の1から6のサブテーマに分け、同時並行で研究を行った。
1. 全国のHIV感染血友病等患者の健康状態・日常生活の実態調査
2. C型慢性肝炎の進行度評価の標準化に関する研究
3. HIV/HCV重複感染者における新規抗HCV療法の効果予測に関する研究
4. 血友病性関節症等のリハビリテーション技法に関する研究
5. HIV感染血友病等患者の医療福祉と精神的ケアにおける課題と連携に関する研究
6. HIV感染血友病等患者に必要な医療の連携に関する研究
結果と考察
サブテーマごとに記載する。
1. 訪問・聞き取り調査等で患者の実態とニーズを解析した。患者が抱える困難の類型で頻度の高いものは「日常活動動作の困難」、「支援基盤の脆弱性」等であった。WHOによるICF(国際生活機能分類)generic set 7項目を用いた生活困難度の調査では、50%がスコア10以上を示し、50歳以降、J字型に大きく上昇(悪化)していることが示された。その傾向は歩行、移動、痛みの感覚で顕著であり、生活困難水準は、一般男性80歳代と同等以上の水準であることが示された。全国の拠点病院におけるHIV感染血友病等患者調査では約半数で慢性肝炎・肝硬変であり、肝細胞がん保有例が9~10例と、深刻な状況であった。意欲をもって療養を継続できるよう「患者が行うチェックチェック」を作成した。
2. HIV/HCV重複感染患者ではHCV単独感染よりも肝線維化の進行が速いため、長崎大学付属病院等5施設共同でC型慢性肝炎の進行度評価法を検討した。標準化のためにFibroScan®、ARFIに代わる線維化の指標として、血液一般検査・血液生化学検査より算出可能なものを検討し、APRIおよびFIB4が有益であることが示された。食道静脈瘤の有無によりカットオフ値を設定できた(APRI>0.85, FIB4>1.85)。このカットオフ値を超えた場合は、内視鏡で静脈瘤の有無をチェックすべきと考え、「HIV/HCV重複感染患者におけるC型慢性肝炎の進行度評価ガイドライン」を作成した。
3. 新たに登場してきた抗HCV薬の効果予測の基盤構築のために、まず、HCV単独感性例5例で解析し、1例でProtease 阻害薬Telaprevirに弱い耐性を示すT54Aを認め、2例でNS5A阻害薬Daclastavirに耐性を示すY93Hを認めた。また、次世代シークエンサーを用い、HCV単独感染例10例及びHIV・HCV重複感染例11例でSimeprevir耐性変異を調べた。軽度耐性変異は認められたが中等度~高度耐性をもたらす変異は認められなかった。
4. 関節の可動域制限及び筋力低下は、上下肢とも年齢と共に進行していた。歩行速度は健常者と比べ、40歳代84.1%、50歳代77.9%、60歳代54.7%であった。装具の使用やリハビリテーションにより、痛みの軽減や歩行障害を予防・改善して行くことが、生活機能の回復に重要であることが裏付けられた。これらをもとに「中高年血友病患者の診療にあたって/PT・OTのためのハンドブック2015」を作成した。
5. 患者自身で自己アセスメントを行えるように「自己アセスメントシート」を作成し、医療職用及び介護・福祉職用「情報収集・療養支援アセスメントシート」、「連携先検討シート」等のツールと「医療と福祉・介護の連携に関するハンドブック」を作成した。HIV感染血友病等患者について検討し、約半数に何らかの精神障害認められた。HIV診療医向け診療補助ツール「HIV診療における精神障害―精神障害の診断治療のためのパッケージ-」を作成した。
6.HIV感染血友病患者では、大腿骨頸部の骨密度が著しく低下ししており、また冠動脈CTを行い無症状であったにも拘らず、8人中3人に高度の狭窄を見出した。診療チェックシート」およびその「解説書」を作成し、多岐ににわたる合併症への対応、専門医への相談のタイミングや診療判断の流れ図等で解説した。
結論
年齢による生活機能の低下は、リハビリテーション専門医による運動機能計測で客観的に裏付けられた。適切なリハビリテーションと、介護・福祉の活用が重要である。C型肝炎進行度評価のガイドラインを作成した。その他多くのマニュアル等を作成した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201421028C

収支報告書

文献番号
201421028Z