HIV検査相談の充実と利用機会の促進に関する研究

文献情報

文献番号
201421009A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV検査相談の充実と利用機会の促進に関する研究
課題番号
H24-エイズ-一般-009
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 真吾(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 今井 光信(田園調布学園大学 人間福祉学部)
  • 長野 秀樹(北海道立衛生研究所)
  • 貞升 健志(東京都健康安全研究センター)
  • 川畑 拓也(大阪府立公衆衛生研究所)
  • 村主 千明(東京都南新宿検査・相談室)
  • 日野 学(日本赤十字社)
  • 前田 憲昭(医療法人社団皓歯会)
  • 大林 由英(北海道大学大学院 国際保健・疫学)
  • 坪井 宏仁(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
  • 矢永 由里子(慶應義塾大学 医学部)
  • 近藤 真規子(神奈川県衛生研究所)
  • 佐野 貴子(嶋 貴子)(神奈川県衛生研究所)
  • 井戸田 一朗(しらかば診療所)
  • 杉浦 亙(国立病院機構名古屋医療センター)
  • 松岡 佐織(国立感染症研究所エイズ研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 エイズ対策研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
17,745,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV検査相談を充実させ、その利用機会の拡大を促進することにより、HIV感染者をより早期に診断して早期治療・発症予防の機会を提供し、行動変容と抗HIV治療による感染拡大の抑制を図ることを目的とする。
研究方法
ウェブサイト「HIV検査・相談マップ」を介したHIV検査相談の情報提供、当サイトへのアクセス数の解析。一般医療機関におけるHIV検査整備のためのガイドライン作成。HIV検査相談に係る人材育成と指導者育成のための研修会を開催。民間クリニックへのHIV即日検査の導入支援とその評価。横浜市において、唾液検査キット(国内未承認)を併用した、受検理由等に関するアンケート調査を伴うMSMを対象とした夜間無料HIV/STIs即日検査相談を実施。歯科診療所における検査啓発ポスターの効果を広島で調査。
 全国の保健所等にHIV検査相談に関するアンケート調査を実施。HIV陽性献血液の年齢階層別、地域別及び初回献血者等の発生動向の分析。北海道、東京、大阪における検査相談事業の実績を分析。推定HIV感染者数の算出法の調査。世界各国のHIV検査相談体制に関するガイドラインを調査、分析。民間郵送検査会社にアンケート調査を実施。
 次世代シークエンサーを用いたHIV-1遺伝的多様度測定によるHIV感染時期推定法を開発。研究班で独自に開発したHIV-1 RNA測定法の地方衛生研究所等への技術移管。名古屋医療センターでHIV検査担当者を対象にHIV検査技術研修会を開催。
結果と考察
ウェブサイト「HIV検査・相談マップ」の掲載施設数が666か所に増加した。訪問数は年間約190万件と過去最高となった。本サイトはHIV検査に関する情報源として国民に広く利用されていると思われる。
 一般医療機関の医師と看護師を対象として、検査実施のための基礎知識、具体的対応、活用情報等を掲載した「病院におけるHIV検査実施ガイドライン」を作成した。
 高知県と沖縄県で行政と共催で検査相談担当者養成研修会を開催した。相談技術の向上を達成するとともに、行政と医療機関のネットワークの構築に貢献できた。
 HIV即日検査プログラムに参加する民間クリニックは昨年度より5施設増えて過去最高の41施設となった。2013年の成績は、検査数25,396件、確認検査陽性数87件であった。このプログラムは陽性率が保健所等より高く、陽性者が医療につながりやすく、検査に公費が使われないなどの利点があり、今後も継続することが必要である。
 横浜市におけるMSM向けHIV/STIs即日検査相談会は2014年に12回実施し、受検者は119件で、HIV抗体陽性者1件、梅毒TPHA陽性者9件であった。本検査会はMSMが安心して受けられる検査機会として重要であり、一層の充実が望まれる。
 全国の保健所等を対象とした2014年のアンケート調査の結果では、保健所における陽性結果受取率93%、医療機関受診確認率88%、自施設からの届出率57%であった。また、即日検査実施率69%、夜間検査実施率35%、土日検査実施率15%であった。全国的な検査相談の実施形態はここ数年定常状態にあることが分かった。
 郵送検査会社へのアンケート調査の結果、2013年の検査数は73863件、スクリーニング検査陽性数は192件(0.26%)であった。団体受付による受検者の割合は45%で、その場合、個人だけでなく依頼者にも結果が通知されていた。検査精度管理、検査前後の説明・相談、フォローアップ等に課題があると思われる。
 HIV感染時期推定法の検討で、4例の感染初期検体を用いて検討した結果、PBMC及び血漿中ウイルス集団の塩基多様度、両者の遺伝的距離はいずれも日数が経過するとともに増加しており、外挿によって推定した感染時期は、問診による感染時期とほぼ一致していた。また両集団の遺伝的距離とPBMC中ウイルス集団の塩基多様度は感染後100から150日の間に0.1%を超えていた。この結果は、単回採取の検体を用いて近時感染(recent infection)を推定できる可能性を示している。
 HIV-1 RNA測定法の技術研修を15施設の地方衛生研究所に対して行った。HIV-1/2技術研修会で、HIV-1核酸検査法、薬剤耐性検査、サブタイピング等に関する講義および実習を行った。事後アンケートで内容と難易度について高い評価を受けた。
結論
HIV感染者の早期診断、早期治療を推進し、HIV感染流行の速やかな終息をはかるため、HIV検査相談に関係する様々な課題について包括的に研究を進め、多くの具体的な成果を上げることができた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201421009B
報告書区分
総合
研究課題名
HIV検査相談の充実と利用機会の促進に関する研究
課題番号
H24-エイズ-一般-009
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 真吾(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 今井 光信(田園調布学園大学 人間福祉学部 )
  • 長野 秀樹(北海道立衛生研究所)
  • 貞升 健志(東京都健康安全研究センター)
  • 川畑 拓也(大阪府立公衆衛生研究所)
  • 村主 千明(東京都南新宿検査・相談室)
  • 日野 学(日本赤十字社)
  • 前田 憲昭(医療法人社団皓歯会)
  • 大林 由英(北海道大学大学院 国際保健・疫学)
  • 坪井 宏仁(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
  • 矢永 由里子(慶應義塾大学 医学部)
  • 近藤 真規子(神奈川県衛生研究所)
  • 佐野 貴子(嶋 貴子)(神奈川県衛生研究所)
  • 井戸田 一朗(しらかば診療所)
  • 杉浦 亙(国立病院機構名古屋医療センター)
  • 松岡 佐織(国立感染症研究所エイズ研究センター)
  • 上木 隆人(東京都南新宿検査・相談室)
  • 玉城 英彦(北海道大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 エイズ対策研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV検査相談を充実させ、その利用機会の拡大を促進することにより、HIV感染者をより早期に診断して早期治療・発症予防の機会を提供し、行動変容と抗HIV治療による感染拡大の抑制を図ることを目的とする。
研究方法
 ウェブサイト「HIV検査・相談マップ」を介したHIV検査相談の情報提供、当サイトへのアクセス数の解析。一般医療機関におけるHIV検査整備のためのガイドライン作成。HIV検査相談に係る人材育成と指導者育成のための研修会を開催。民間クリニックへのHIV即日検査の導入支援とその評価。横浜市において、唾液検査キット(国内未承認)を併用した、受検理由等に関するアンケート調査を伴うMSMを対象とした夜間無料HIV/STIs即日検査相談を実施。歯科診療所における検査啓発ポスターの効果を広島で調査。
 全国の保健所等にHIV検査相談に関するアンケート調査を実施。HIV陽性献血液の年齢階層別、地域別及び初回献血者等の発生動向の分析。北海道、東京、大阪における検査相談事業の実績を分析。推定HIV感染者数の算出法の調査。世界各国のHIV検査相談体制に関するガイドラインを調査、分析。民間郵送検査会社にアンケート調査を実施。
 次世代シークエンサーを用いたHIV-1遺伝的多様度測定によるHIV感染時期推定法を開発。研究班で独自に開発したHIV-1 RNA測定法の地方衛生研究所等への技術移管。名古屋医療センターでHIV検査担当者を対象にHIV検査技術研修会を開催。
結果と考察
 ウェブサイト「HIV検査・相談マップ」の掲載施設数が666か所に増加した。スマートフォンサイトの構築によるものか、訪問数は次第に増加し2014年は約194万件と過去最高となった。本サイトはHIV検査に関する情報源として国民に広く利用されていると思われる。
 一般医療機関の医師と看護師を対象として、検査実施のための基礎知識、具体的対応、活用情報等を掲載した「病院におけるHIV検査実施ガイドライン」を作成した。
 高知県と沖縄県で行政と共催で検査相談担当者養成研修会を開催した。相談技術の向上を達成するとともに、行政と医療機関のネットワークの構築に貢献できた。
 HIV即日検査プログラムに参加する民間クリニックは昨年度より5施設増えて過去最高の41施設となった。2014年からの3箇年で検査数73,619件、陽性数271件、そのうち確認検査陽性数254件であった。陽性率が保健所等より高く、陽性者が医療につながりやすく、検査に公費が使われないなどの利点があり、今後も継続することが必要である。
 横浜市におけるMSM向け即日検査相談会は2014年からの3箇年で計31回実施し、291件の検査相談を実施、HIV抗体陽性者7件、梅毒TPHA陽性者31件、HBs抗原陽性2件であった。本検査会はMSMが安心して受けられる検査機会として重要であり、一層の充実が望まれる。
 全国の保健所等を対象として2014年からの3箇年にわたり行ったアンケート調査の結果、保健所における陽性結果受取率93%、医療機関受診確認率88%、自施設からの届出率57%であった。また、即日検査実施率69%、夜間検査実施率35%、土日検査実施率15%であった。全国的な検査相談の実施形態はここ数年定常状態にあることが分かった。
 郵送検査会社へのアンケート調査の結果、年間検査数の合計、団体検査受検者率はともに増加傾向にあり、一方スクリーニング検査陽性数は前年より減少という結果であった。精度調査の結果、2007年10月以降、真の陽性率は86%であった。より一層の精度管理、また検査前後の説明・相談、フォローアップ等には未だ課題が残される。
 HIV感染時期推定法の検討で、4例の感染初期検体を用いて検討した結果、PBMC及び血漿中ウイルス集団の塩基多様度、両者の遺伝的距離はいずれも日数が経過するとともに増加しており、外挿によって推定した感染時期は、問診による感染時期とほぼ一致、また両集団の遺伝的距離とPBMC中ウイルス集団の塩基多様度は感染後100から150日の間に0.1%を超えていた。この結果は、単回採取の検体を用いて近時感染を推定できる可能性を示している。
 HIV-1 RNA測定法の技術研修を地方衛生研究所に対して行った。HIV-1/2技術研修会で、HIV-1核酸検査法、薬剤耐性検査、サブタイピング等に関する講義および実習を行った。3箇年にわたるこの取り組みでは、事後アンケートでいずれも高い評価を受けた。
結論
 HIV感染者の早期診断、早期治療を推進し、HIV感染流行の速やかな終息をはかるため、HIV検査相談に関係する様々な課題について包括的に研究を進め、多くの具体的な成果を上げることができた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201421009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
全国の保健所等を対象に行ったHIV検査相談に関するアンケート調査の結果、陽性結果受取率、医療機関受診確認率、自施設届出率、即日・検査・土日検査実施率等、保健所等における検査相談の課題とその克服のため必要なデータを得ることができた。学術面では、個々のHIV感染者のPBMC及び血漿中のウイルス集団の塩基多様度及び両者の遺伝的距離の時間変化を調べた結果、これらの測定値から感染時期を推定できることが示唆された。この成果はHIV感染罹患率を求めるために有効な方法を提供すると期待される。
臨床的観点からの成果
効果的な抗HIV治療を行うためには、HIV感染をなるべく早期に診断し、医療機関に繋げることが最も重要である。本研究班では、ウェブページ「HIV検査・相談マップ」から保健所等のHIV検査相談施設に関する正確で迅速な情報を発信し、HIV検査の普及啓発に努めた。また、民間クリニックへのHIV即日検査プログラムの導入を図るとともに、横浜市におけるMSM向けHIV/STIs即日検査相談会を支援し、HIV感染の早期発見と早期受診に貢献した。
ガイドライン等の開発
医療機関におけるHIV検査実施の現状把握と実施上の課題について行った検討を踏まえ、一般医療機関向きの「HIV検査実施のガイドライン」を作成した。このガイドラインでは、HIV検査結果の意味、陽性判明時の具体的対応などを明確化し、医療従事者の検査時対応の統一化を図った。
その他行政的観点からの成果
近年利用者が増大する郵送検査の自体を把握するため、郵送検査会社にアンケート調査した結果、2014年の年間検査数の合計は77,588件で、団体検査の受検者率は53%であった。郵送検査は利用者の都合のよい時間と場所でプライバシーがほぼ守られた形で利用できるという利点があるが、検査精度管理、検査前後の説明・相談、フォローアップ等に課題があると考えられる。特に、団体検査における結果通知においてはプライバシーの保護に十分注意することが必要である。
その他のインパクト
<H26年>HIV郵送検査のメリット・デメリットについて(日本テレビnews every)<H25年>インターネットを介したHIV郵送検査の安全性等について(中日新聞)・HIV感染献血に関する特集の中で、今後のHIV対策について(NHKニュースおはよう日本)<H24年>HIV郵送検査の増加に伴う問題点等について(日本経済新聞)。また、HIV検査・相談マップを運営、スマートフォンサイトを開設したこともあり、H26年度は年間194万件のアクセス数があり、前年比96%増となった。

発表件数

原著論文(和文)
13件
原著論文(英文等)
37件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
156件
学会発表(国際学会等)
17件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
2018-05-22

収支報告書

文献番号
201421009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
23,068,000円
(2)補助金確定額
23,068,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,807,416円
人件費・謝金 2,956,527円
旅費 1,594,923円
その他 6,393,922円
間接経費 5,323,000円
合計 23,075,788円

備考

備考
自己資金7728円と預金利息60円合わせて7788円

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-