文献情報
文献番号
201421006A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV持続感染成立機構とその防御機序に関する研究
課題番号
H24-エイズ-一般-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
俣野 哲朗(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 保富 康宏(医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター)
- 森川 裕子(北里大学 北里生命科学研究所)
- 高折 晃史(京都大学 医学研究科)
- 三浦 智行(京都大学 ウイルス研究所)
- 吉村 和久(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
- 寺原 和孝(国立感染症研究所 免疫部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 エイズ対策研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
43,166,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
研究目的
世界のHIV感染拡大は未だ深刻な状況にあり、本邦でも感染者数増大が続いている。感染拡大の抑制に向けてはグローバルな視点での取組みが必要であり、早期診断・治療の推進に加え、ワクチン開発が国際的重要課題である。慢性持続感染を特徴とし、自然治癒のないHIV感染症の制圧には、持続感染の阻止に結びつく防御免疫機序の解明が重要である。本研究では、HIV持続感染成立機構とその防御機序の解明を目的とし、HIV持続感染防御法の開発に結びつく科学的論理基盤構築を目指すこととした。特に、HIV持続感染阻止に結びつく有効なCTLおよび抗体反応の解明に向けた研究を推進した。
世界のHIV感染拡大は未だ深刻な状況にあり、本邦でも感染者数増大が続いている。感染拡大の抑制に向けてはグローバルな視点での取組みが必要であり、早期診断・治療の推進に加え、ワクチン開発が国際的重要課題である。慢性持続感染を特徴とし、自然治癒のないHIV感染症の制圧には、持続感染の阻止に結びつく防御免疫機序の解明が重要である。本研究では、HIV持続感染成立機構とその防御機序の解明を目的とし、HIV持続感染防御法の開発に結びつく科学的論理基盤構築を目指すこととした。特に、HIV持続感染阻止に結びつく有効なCTLおよび抗体反応の解明に向けた研究を推進した。
研究方法
研究方法
まず、MHC-Iハプロタイプ共有群を用いたSIV感染エイズモデルの構築を進め、主要な4つのMHC-Iハプロタイプについて陽性群におけるSIV感染免疫動態を解析した。immunodominanceによって有効でないCTLの誘導が有効なCTLの誘導を阻害する可能性をふまえ、有効なCTLの特定に向け、ワクチンによる各抗原特異的CTL誘導がSIV複製に及ぼす影響を検討した。また、HIV特異的CD4陽性T細胞がHIV感染標的となりうることをふまえ、ワクチンにより誘導されたCD4陽性T細胞のSIV感受性に関する研究を推進した。さらに、CTLへの抗原提示効率に関与するプロテアソームを介する抗原分解を解析した。一方、中和抵抗性SIV感染モデルにおける中和抗体誘導群を検索した。また、CCR5阻害剤耐性誘導により得られた複数のHIV株の各種中和抗体に対する感受性を調べた。
まず、MHC-Iハプロタイプ共有群を用いたSIV感染エイズモデルの構築を進め、主要な4つのMHC-Iハプロタイプについて陽性群におけるSIV感染免疫動態を解析した。immunodominanceによって有効でないCTLの誘導が有効なCTLの誘導を阻害する可能性をふまえ、有効なCTLの特定に向け、ワクチンによる各抗原特異的CTL誘導がSIV複製に及ぼす影響を検討した。また、HIV特異的CD4陽性T細胞がHIV感染標的となりうることをふまえ、ワクチンにより誘導されたCD4陽性T細胞のSIV感受性に関する研究を推進した。さらに、CTLへの抗原提示効率に関与するプロテアソームを介する抗原分解を解析した。一方、中和抵抗性SIV感染モデルにおける中和抗体誘導群を検索した。また、CCR5阻害剤耐性誘導により得られた複数のHIV株の各種中和抗体に対する感受性を調べた。
結果と考察
結果と考察
エイズモデルにおいてMHC-Iハプロタイプと病態進行の相関を明らかにした。このモデルはHIV防御免疫機序解明に向けた解析基盤として重要である。ワクチン接種群では、ドミナントNefエピトープ特異的CTL反応誘導は持続感染阻止に結びつかなかったものの、GagあるいはVif特異的CTL反応が感染急性期に優位に誘導されると持続感染は阻止された。この結果は、Gag蛋白に加えVif蛋白も有効なCTLの標的抗原となることを示すとともに、予防HIVワクチンにおけるサブドミナント・エピトープ特異的CTL誘導戦略の合理性を示すものである。新規性も高く、HIV持続感染防御法開発に結びつく論理基盤として重要な成果である。また、ワクチン誘導SIV特異的CD4陽性T細胞のうち、CD107a陽性分画はSIV感染に比較的抵抗性である一方、CD107a陰性分画は曝露後SIV感染標的としてその多くが死滅することが示された。特に、ワクチンによるHIV特異的CD107a陰性CD4陽性T細胞の誘導が、曝露後の有効なHIV特異的CD4陽性T細胞反応誘導に結びつかず、逆に感染標的の増幅を介してHIV複製を促進しうることを示す結果が得られた。抗原分解の解析では、MA塩基性アミノ酸コード領域の変異がGag抗原のプロテアソーム経路分解を増強したことから、MA塩基性アミノ酸領域は有効なCTLの標的となりうると考えられた。中和抗体誘導群の解析ではnef変異の関与が示され、新たな中和抗体誘導機序を示唆する結果が得られた。CCR5阻害剤耐性誘導実験では、耐性変異が中和感受性獲得に結びつくことを見出した。さらに多種の変異HIV株を得て、多種多様な中和抗体に対する感受性情報を蓄積することにより、ワクチン臨床試験等における中和交差性の評価基盤構築に結びつくことが期待される。
エイズモデルにおいてMHC-Iハプロタイプと病態進行の相関を明らかにした。このモデルはHIV防御免疫機序解明に向けた解析基盤として重要である。ワクチン接種群では、ドミナントNefエピトープ特異的CTL反応誘導は持続感染阻止に結びつかなかったものの、GagあるいはVif特異的CTL反応が感染急性期に優位に誘導されると持続感染は阻止された。この結果は、Gag蛋白に加えVif蛋白も有効なCTLの標的抗原となることを示すとともに、予防HIVワクチンにおけるサブドミナント・エピトープ特異的CTL誘導戦略の合理性を示すものである。新規性も高く、HIV持続感染防御法開発に結びつく論理基盤として重要な成果である。また、ワクチン誘導SIV特異的CD4陽性T細胞のうち、CD107a陽性分画はSIV感染に比較的抵抗性である一方、CD107a陰性分画は曝露後SIV感染標的としてその多くが死滅することが示された。特に、ワクチンによるHIV特異的CD107a陰性CD4陽性T細胞の誘導が、曝露後の有効なHIV特異的CD4陽性T細胞反応誘導に結びつかず、逆に感染標的の増幅を介してHIV複製を促進しうることを示す結果が得られた。抗原分解の解析では、MA塩基性アミノ酸コード領域の変異がGag抗原のプロテアソーム経路分解を増強したことから、MA塩基性アミノ酸領域は有効なCTLの標的となりうると考えられた。中和抗体誘導群の解析ではnef変異の関与が示され、新たな中和抗体誘導機序を示唆する結果が得られた。CCR5阻害剤耐性誘導実験では、耐性変異が中和感受性獲得に結びつくことを見出した。さらに多種の変異HIV株を得て、多種多様な中和抗体に対する感受性情報を蓄積することにより、ワクチン臨床試験等における中和交差性の評価基盤構築に結びつくことが期待される。
結論
結論
各種MHC-Iハプロタイプ共有群を用いたSIV感染エイズモデルを樹立し、MHC-Iハプロタイプと病態進行の相関を明らかにした。この系を用いた解析によりGag蛋白に加えVif蛋白も有効なCTLの標的抗原であることを示すとともに、ワクチンによるサブドミナント・エピトープ特異的CTL誘導がHIV持続感染成立阻止に結びつくことを示す結果を得た。さらに、ワクチンによるHIV特異的CD107a陰性CD4陽性T細胞誘導が、曝露後の有効なHIV特異的CD4陽性T細胞反応誘導に結びつかず、逆にHIV複製を促進しうることを明らかにした。本研究結果は、HIVワクチン開発において、サブドミナントGag・Vifエピトープ特異的CTLを誘導する戦略の合理性を示すとともに、HIV特異的CD4陽性T細胞の誘導を避ける戦略あるいはHIV特異的CD107a陽性CD4陽性T細胞を誘導する戦略の合理性を示す重要な成果である。一方、CCR5阻害剤耐性誘導で得られたHIV株における中和抗体感受性増強を明らかにした。この系は中和抗体交差性評価の基盤構築に結びつくことが期待される。
各種MHC-Iハプロタイプ共有群を用いたSIV感染エイズモデルを樹立し、MHC-Iハプロタイプと病態進行の相関を明らかにした。この系を用いた解析によりGag蛋白に加えVif蛋白も有効なCTLの標的抗原であることを示すとともに、ワクチンによるサブドミナント・エピトープ特異的CTL誘導がHIV持続感染成立阻止に結びつくことを示す結果を得た。さらに、ワクチンによるHIV特異的CD107a陰性CD4陽性T細胞誘導が、曝露後の有効なHIV特異的CD4陽性T細胞反応誘導に結びつかず、逆にHIV複製を促進しうることを明らかにした。本研究結果は、HIVワクチン開発において、サブドミナントGag・Vifエピトープ特異的CTLを誘導する戦略の合理性を示すとともに、HIV特異的CD4陽性T細胞の誘導を避ける戦略あるいはHIV特異的CD107a陽性CD4陽性T細胞を誘導する戦略の合理性を示す重要な成果である。一方、CCR5阻害剤耐性誘導で得られたHIV株における中和抗体感受性増強を明らかにした。この系は中和抗体交差性評価の基盤構築に結びつくことが期待される。
公開日・更新日
公開日
2015-06-09
更新日
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