リレンザ純化学合成技術を基盤とした薬剤耐性新型インフルエンザウイルス出現に対応する新規抗ウイルス薬の開発

文献情報

文献番号
201420058A
報告書区分
総括
研究課題名
リレンザ純化学合成技術を基盤とした薬剤耐性新型インフルエンザウイルス出現に対応する新規抗ウイルス薬の開発
課題番号
H25-新興-若手-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
熊谷 直哉(公益財団法人微生物化学研究会 微生物科学研究所有機合成研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 滝沢 直己(公益財団法人微生物化学研究会 微生物化学研究所)
  • 藤原 俊伸(名古屋市立大学・大学院薬学研究科)
  • 野本 明男(公益財団法人微生物化学研究会 微生物化学研究所)
  • 高田 礼人(北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター)
  • 高木 智久(京都府立医科大学消化器内科)
  • 河野 憲司(長瀬産業株式会社研究開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,654,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在、インフルエンザウイルスに対する主要な治療薬はリレンザ・タミフル等のノイラミニダーゼ(NA)阻害剤である。しかし、近年タミフル耐性ウイルスが同定され、タミフル依存型治療の脆弱性が問題となっている。本研究では、リレンザ純化学合成技術、保有する全NAサブタイプを基盤として、リレンザの大量製造法の確立・誘導体創出、臨床分離株を含めた徹底的スクリーニング、迅速診断キットの開発を展開する。新型・耐性ウイルスの流行を先回りした研究展開により強力なインフルエンザ対策を構築する。
研究方法
純化学合成技術では安価・大量入手可能なアルデヒドとニトロブテンを原料に、独自に開発したNd/Na 2核金属不斉触媒を用いるanti-選択的不斉ニトロアルドール反応により、合成鍵中間体を光学活性体として供給可能である。廃棄物を一切副生せず、大量合成・誘導体合成法の基盤技術として展開可能である。また、Nd/Na触媒は不斉触媒としては非常に希な不均一触媒として機能するため、将来的に連続フロー合成による効率的大規模合成への応用が期待できる。合成鍵中間体からのリレンザへの各合成ステップの徹底的最適化を行い、安価な大量供給法として確立させる。同時に、リレンザ誘導体の合成検討を開始する。
 合成研究と併行し、リバースジェネティクスの手法を用いてN1からN9までのNAサブタイプのインフルエンザウイルスをそれぞれ作製する。NA以外のウイルスタンパク質の影響を排除するためにNAをコードする分節以外はA/WSN/33の分節を使用する。作製したそれぞれのウイルスについて低濃度リレンザ存在下で継代を繰り返し、リレンザ耐性株の単離を行い、変異部位の決定を行う。変異部位の立体構造から耐性ウイルスに対して幅広く効果が期待できるリレンザ誘導体の構造予測を行う。
結果と考察
前年度にリレンザ合成の基本根幹技術であるanti-選択的触媒的不斉ニトロアルドール反応の抜本的改良に成功し、触媒の調製効率を大幅に増大させた。本段階の触媒効率が全体の合成効率に直結するため、本年度は連続フロー合成系の構築に着手した。
 ニトロアルドール反応の改良は完了し、今冬よりリレンザ耐性ウイルスに対するNA阻害活性のアッセイに供し始めている。
 N1-9を有する12種のNA置換組換えインフルエンザウイルスを作製し、リレンザ存在化におけるそれぞれのウイルスの増殖能を細胞アッセイにより検定した。リレンザ非感受性のウイルスが多数存在することがわかった。NAと同時にHAも組換えたウイルスで同様の細胞アッセイを行ったところ、リレンザ感受性を示す株が多く見受けられたことから、HAとNAの活性のバランスがリレンザ感受性に影響を与えていることが示唆された。現在までに合成されたリレンザ誘導体のリレンザ耐性ウイルス株に対する有効性を精査した結果、著効は確認されていないが、継続的に活性評価の上耐性獲得機構を解明していく。また、迅速変異同定系をウイルスRNAの抽出、LAMP法による増幅、増幅DNAの検出の3つの段階に分け、それぞれの段階について条件検討を行っている。

結論
 3年計画の2年目後半において、リレンザ合成ルートの第一ステップである触媒的不斉ニトロアルドール反応の高効率的な連続フロー合成を達成した。3年目は本方法論を駆使して様々な誘導体を合成し、同時進行しているリレンザ耐性を獲得した変異ウイルスに対する活性評価を進めていく。

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201420058Z