Hib、肺炎球菌、HPV及びロタウイルスワクチンの各ワクチンの有効性、安全性並びにその投与方法に関する基礎的・臨床的研究

文献情報

文献番号
201420046A
報告書区分
総括
研究課題名
Hib、肺炎球菌、HPV及びロタウイルスワクチンの各ワクチンの有効性、安全性並びにその投与方法に関する基礎的・臨床的研究
課題番号
H25-新興-指定-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
庵原 俊昭(独立行政法人国立病院機構三重病院)
研究分担者(所属機関)
  • 柴山 恵吾(国立感染症研究所細菌第二部)
  • 中野 貴司(川崎医科大学小児科学)
  • 谷口 孝喜(藤田保健衛生大学医学部ウイルス・寄生虫学講座)
  • 大石 和徳(国立感染症研究所感染症疫学センター)
  • 小西 宏(日本対がん協会)
  • 中山 哲夫(北里生命科学研究所)
  • 岡田 賢司(福岡歯科大学全身管理・医歯学部門 総合医学講座 小児科学分野)
  • 池田 俊也(国際医療福祉大学薬学部・公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
16,470,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 ワクチンを定期接種化するためには、各疾患の疾病負担および各ワクチンの有効性、安全性、医療経済性の総合評価が大切であり、定期接種化後も各ワクチンの有効性、安全性評価が必要である。我々は、ワクチンを総合的に評価するために、基礎と臨床が協力してアクテイブサーベイランス、ワクチンの安全性評価を行っている。
研究方法
(1)小児における侵襲性細菌感染症アクテイブサーベイランス:全国10道県の小児侵襲性インフルエンザ菌感染症、侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)、侵襲性B群連鎖球菌(GBS)感染症患者数を全数把握し、侵襲性細菌感染症患児から分離された菌株の血清型の同定と薬剤感受性を検討した。
(2)ロタウイルス胃腸炎(RVGE)アクテイブサーベイランス:津市および伊勢市においてRVGE入院患者数の、津市においてRVGE外来患者数のサーベイランスを行った。また、津市、岡山市、いすみ市で採取された便のロタウイルス血清型について検討した。
(3)HPVワクチンの有用性の評価:子宮頸がん健診時にHPVワクチン歴を聴取し、ワクチン歴によるCIN2以上の発見率について検討した。また、男性のヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者を対象に、HPVウイルスが発生に関与する肛門がんの発生率について検討した。
(4)ワクチンの安全性評価:基礎的には、HPV2やHPV4接種後の接種局所におけるサイトカインの動きについて検討を行った。臨床面では、PCV接種後にアナフィラキシーを発症した小児を対象に、発症メカニズムについて検討した。また、本邦でのワクチンの安全性評価のグローバル化をめざし、ワクチン後の副反応の診断基準について検討を行った。
(5)ワクチンの医療経済性の評価:ワクチン接種の費用対効果推計法を用いてRVワクチンの医療経済性について検討した。

結果と考察
 侵襲性インフルエンザ菌b型(Hib)感染症の罹患率は100%減少し、Hibワクチンの有効性が確認された。侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の調査では、肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)の罹患率減少率は2012年から横ばいであった。IPD患児から分離された105株の血清型の解析では、PCV7のカバー率3.8%、PCV13のカバー率35.2%と、カバー率の低下を認めた。なおメロペネム非感受性菌が15.3%と増加傾向であった。今後も血清型と薬剤感受性の監視が必要である。
 RVGEの調査では、津市と伊勢市のRVGE入院患者数は、RVワクチン導入前と比較すると、それぞれ81%、93%減少し、特に1歳未満の入院減少率が著明であった。RVGE外来患者数も津市では91%減少し、外来入院ともにRVワクチンの有効性が認められた。RVの血清型の検討では、2007年~2010年ではG3型が多かったが、2011年からの3年間でG1型へと変化し、2014年にはG2型が増加していた。今後の推移の検討が必要である。なお、RVワクチンは、ワクチン価格が現状よりも低下すると、定期接種によって費用対効果が良好になることが示された。
 2014年の調査では、20代におけるHPVワクチン接種率は5.4%(11740人中631人)であったが、20代におけるCIN2以上の発見率は、非接種群0.46%に対し、接種群0.16%(RR=0.35)と、HPVワクチンの効果が窺われた。 また、HIV感染者では肛門がんの発症が増加していた。
 HPVワクチンの安全性評価では、マウスへのHPV2およびHPV4の初回接種から7日間は各種の炎症性サイトカインが産生された。再接種によっても、HPV2、HPVともに炎症性サイトカインの上昇は数日間であり、HPV2、HPV4は、接種後の慢性疼痛に直接関与していないことが示唆された。
 PCVによりアナフィラキシーを発症した児では、PCVに対するIgE抗体が検出され、アナフィラキシー発症にはPCV成分に対するIgE抗体が関与することが示唆された。
 ワクチン後の副反応診断基準のグローバル化では、今年度はギラン・バレー症候群、乳幼児突然死症候群、急性散在性脳脊髄炎の診断基準を紹介した。  

結論
 Hibワクチン、PCVともに有効性は示されたが、ワクチンに含まれない血清型に対する注意が今後も必要である。RVワクチンに関しては、入院、外来ともに有効性が示されたが、定期接種化するに当たってはコストが課題であった。HPVワクチンに関しては、HPVワクチンによりCIN2以上の発見率の低下を示唆する結果が認められた。ワクチンの安全性評価では、マウスの実験系において、HPVワクチンと慢性疼痛との直接の関係は否定された。また、ワクチン後の副反応の診断基準のグローバル化にむけて研究を進めている。

公開日・更新日

公開日
2015-05-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201420046Z