成人の重症肺炎サーベイランス構築に関する研究

文献情報

文献番号
201420044A
報告書区分
総括
研究課題名
成人の重症肺炎サーベイランス構築に関する研究
課題番号
H25-新興-指定-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
大石 和徳(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 青柳 哲史(東北大学病院 感染症内科)
  • 石岡 大成(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 大日 康史(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 笠原 敬  (奈良県立医科大学 感染症センター)
  • 木村 博一(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 金城 雄樹 (国立感染症研究所 真菌部)
  • 高橋 弘毅 (札幌医科大学 医学部)
  • 武田 博明  (済生会山形済生病院 呼吸器内科)
  • 田邊 嘉也(新潟大学医歯学総合病院 感染管理部)
  • 常 彬 (国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 西 順一郎  (鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科)
  • 藤田 次郎(琉球大学大学院 医学部)
  • 丸山 貴也 (独立行政法人国立病院機構三重病院 呼吸器内科)
  • 山崎 一美 (独立行政法人国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
  • 横山 彰仁 (高知大学 医学部)
  • 渡邊 浩 (久留米大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
14,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、1)全国的に均一性の高いIPD, IHDのサーベイランス体制を構築し、小児及び成人の発生動向、病態を明らかにし、2)成人における人口ベースのIPDの罹患率を算出する体制を構築し、分離菌株の血清型決定を行い、IPDの血清型分布を明らかにする。3)成人における人口ベースのIHDの罹患率を算出する体制を構築し、IHD患者の原因菌の莢膜血清型と莢膜遺伝子を決定し、莢膜株かNTHiかを明らかにすることである。
研究方法
平成25年4月から平成27年1月までの感染症発生動向調査の届出症例情報から、IPD, IHDの疫学的情報を解析した。全国1道、9県の自治体と医療機関を結ぶIPD, IHDサーベイランス体制を構築し、原因菌株および臨床情報を収集した。
結果と考察
期間中の感染症発生動向調査によるIPD総報告症例数は3,089例、IHD総報告数は331例であった。届け出時点の致命率はIPDが6.51%、IHDが7.25%であった。全年齢のIPDの罹患率は1.31 (/10万人・年)、致命率は6.51%であった。全年齢のIHDの罹患率は0.26 (/10万人・年)、致命率は7.25%であった。5歳以下の小児ではPCV接種およびHib接種による髄膜炎のリスク低減、高齢者では23 価肺炎球菌ワクチン (PPSV23)接種によるIPDに起因する死亡リスクの低減が示唆された。
 2013 年 7 月から 2015 年 1 月現在まで10 道県中の9県で発症したIPD 231 例 (うち髄膜炎 39 症例) から分離された 224 株の肺炎球菌の解析を行った。そのうち、PPSV23に含まれる血清型の分離率は 66.5%、13価結合型ワクチン(PCV13)に含まれる血清型の頻度は46%であった。血清型 3 型肺炎球菌による症例は 42 例で、最も多かった。PPSV23 に含まれていない血清型の内分けは 6C (16 例)、15A (13例)、23A (13例)、35B (7例)、24F (6例)、34 (6例)、6A (5例)、38 (4例)等であった。PCV7に含まれる血清型 による症例は 28 例 (12.5%) のみであり、小児に対するPCV7 接種の集団免疫効果に伴う血清型置換が示唆された。
 上五島コホートでは、上五島病院において、2013年9月から観察開始、2014年11月30日までに64例の肺炎が登録された。2014年8月31日までの1年間では62例であった。平均年齢80才(42~95才)、男性37例(56.9%)。このうち肺炎球菌性肺炎は18例(28.1%)であった。15歳以上の全年齢における肺炎球菌性肺炎の年間罹患率(/1,000人・年)は1.0であった。65~74才で1.6、75~84才で2.0、85才以上で4.8であった。
成人のIHD 4例(いずれも菌血症を伴う肺炎)から分離されたインフルエンザ菌は、抗血清による凝集試験、PCRによるbexBの検出から、いずれもtrue NTHi株と判明した。10道県における成人IHD登録症例は、2013年度は4例、2014年度は13例、計17例であった。これら17例の分離菌株すべてがNTHiであった。小児におけるHibワクチンの公費助成及びその後の定期接種化に伴う集団免疫効果によりインフルエンザ菌の血清型の変化が起こっていることが示唆された。
結論
今回の平成25~26年度のIPDの原因菌の血清型の分布成績からは、小児におけるPCV7の定期接種導入による集団免疫効果に伴う血清型置換が認められた。この結果、2010年には成人のIPDの原因菌のPPSV23及びPCV13によるカバー率がそれぞれ約85%、約75%であったものが、現時点ではそれぞれ66.5%と46%と低下していることが判明した。今後も成人のIPDの原因菌の血清型置換が進行すると考えられ、今後も血清型のサーベイランスによる継続的監視が必要である。

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201420044Z