粘膜免疫誘導型新規結核ワクチンの開発

文献情報

文献番号
201420041A
報告書区分
総括
研究課題名
粘膜免疫誘導型新規結核ワクチンの開発
課題番号
H25-新興-一般-019
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
保富 康宏(独立行政法人医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 野阪 哲哉(三重大学大学院医学系研究科 )
  • 庵原 俊昭(国立病院機構三重病院)
  • 石井 健(独立行政法人医薬基盤研究所 アジュバント開発プロジェクト)
  • 國澤 純(独立行政法人医薬基盤研究所 ワクチンマテリアルプロジェクト所)
  • 伊奈田 宏康(鈴鹿医療科学大学薬学部 )
  • 松尾 和浩(日本BCG製造(株)日本BCG研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
36,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
エイズ、マラリア、結核(TB)は世界3大感染症と言われ、その中でも結核感染症は空気感染により伝搬することから感染防御が最も困難であると考えられている。更に、近年出現した多剤耐性結核菌(MDR-TB)、超多剤耐性結核(XDR-TB)においては、その脅威は著しく増大している。TB予防ワクチンとしては世界中でBCGが使用されているが、成人の肺結核においての予防効果が認められないために、現在の世界的な蔓延となっている。近年の免疫学の発展により、多くの感染症が成立する呼吸器や消化器等の粘膜での免疫反応は、生体の全身性の免疫反応と異なり、粘膜において免疫反応を誘導するためには粘膜面に直接抗原を運ぶ必要があることが判明した。このことから現在では肺結核予防のためには粘膜免疫誘導型ワクチンの開発が必須であると考えられている。本研究ではパラインフルエンザ2型ウイルス(HPIV2)に結核抗原を組み込んだ新たな粘膜免疫誘導型結核ワクチンの開発を目的とした。
研究方法
1.挿入抗原の確認:リバースジェネティックス法にて作製した結核抗原遺伝子組み込みHPIV2(rHPIV2-CRL2)をVero細胞に感染させ、mRNAの発現を確認した。
2. rHPIV2-CRL2免疫マウスにおける特異的免疫の誘導:BCG感作マウスにおける免疫反応の測定はマウスにBCGを投与し、6週後からrHPIV2-CRL2を2週間隔で4回経鼻投与し、最終免疫から2週後に脾細胞において行った。BCG非感作マウスではrHPIV2-CRL2とrHPIV2-Ag85Bを混合して2週間隔で4回経鼻投与し、最終免疫から2週後に脾細胞において特異的免疫反応を測定した。
3. カニクイザルにおけるAg85B特異的免疫の誘導:rHPIV2-Ag85Bを経鼻投与にてマウスに2週間隔2ないし3~4回投与した。末梢血、各種リンパ節および肺胞洗浄液を用いたAg85B特異的IFN-γ細胞をELISPOTにて測定した。また、HPIV2に対する抗体も測定した。
結果と考察
結果
1) 非複製型rHPIV2-Ag85Bを用いた系では結核に対し有効な免疫反応が誘導されることが確認された(Vaccine 2014)。
2)新たな抗原を用いたワクチンにおいてもワクチン効果、免疫反応の誘導も確認された。
3)新たな非複製型HPIV2を作製した.
4)HPIV2のHN遺伝子発現Vero細胞を作製した。
5) HPIV2感染状況を調査し、HPIV2は自然界に広く蔓延していることが判明した。
6) 呼吸器症状を呈して当院を受診した小児から鼻汁・咽頭ぬぐい液からHPIV2を調査したところ、明確な病原性は低く、学童期までには通常感染していると考えられた。
7) rHPIV2の内因性アジュバント効果とその作用機序の解析したところ、ウイルスRNAが起きく関与していることが判明した。
8) マウス肺内にrHPIV2を投与したところ肺内にリンパ組織が多数形成されていた。

考察
 結核は空気感染により伝播する疾患であるために世界3大感染症の中でも最もワクチンの必要な感染症と考えられている。呼吸器粘膜より感染を示す本疾患に関しては呼吸器粘膜に免疫反応を誘導する粘膜免疫誘導型ワクチンが感染防御に効果的絵あると考えられる。粘膜免疫の誘導のためには抗原を適切に粘膜面に端株ことが必要である。現在までに結核ワクチンにおいてはヒト治験が7件行われているが、その中で粘膜免疫誘導型ワクチンはない。本研究ではヒトの呼吸器粘膜に感染を示し極めて病原性の低いHPIV2をベクターとした全く新しい粘膜免疫誘導型経鼻投与ワクチンの開発を試みている、
 本研究では新規のワクチン特に組み換えウイルスワクチン等の新規技術を用いたワクチンでは効果の証明(POC: proof of concept)のみならず、病原性の検討、自然界でのベクターウイルスの蔓延状況等、実用化に向けて必要な知見を広く収集し実用化に向けて取り組んでおり、それらを踏まえ実用化への歩みを加速させていきたいと考えている。

結論
HPIV2ベクターを用いた結核ワクチンの開発に向けて多様な知見が得られた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

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2015-06-09
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-

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文献番号
201420041Z