真菌感染症の病態解明及び検査・治療法の確立とサーベイランスに関する研究

文献情報

文献番号
201420029A
報告書区分
総括
研究課題名
真菌感染症の病態解明及び検査・治療法の確立とサーベイランスに関する研究
課題番号
H25-新興-一般-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
河野 茂(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 宮崎 義継(国立感染症研究所 真菌部)
  • 三鴨 廣繁(愛知医大病院・感染制御部)
  • 荒岡 秀樹(国家公務員共済組合連合会・虎の門病院・感染症科)
  • 渋谷 和俊(東邦大学医学部・病院病理学講座)
  • 槇村 浩一(帝京大学・大学院医学研究科)
  • 比留間 政太郎(御茶ノ水アレルギー研究所・皮膚科学)
  • 望月 隆(金沢医科大学・医学部)
  • 亀井 克彦(千葉大学・真菌医学研究センター)
  • 川上 和義(東北大学・大学院医学系研究科感染分子病態解析学分野)
  • 宮崎 泰可(長崎大学・大学院医歯薬学総合研究科感染免疫学講座)
  • 山越 智(国立感染症研究所 真菌部)
  • 掛屋 弘(大阪市立大学・大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
14,230,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国における真菌症対策において、他先進諸国と比較して疫学情報や診療指針が不足している。したがって、本研究班では病態の解明や診断治療法の研究と共に情報発信のためのサーベイランスネットワークの構築・維持、ならびに、ガイドライン等を充実させることにより真菌感染症の対策に資することを目的とする。
研究方法
各分担研究者は、深在性真菌症や皮膚真菌症における、診断検査、病態解析、新規抗真菌薬開発のそれぞれの専門領域で問題となる課題に関し、臨床と基盤研究グループとが連携して研究を推進する。具体的には疫学調査、ならびに、ガイドライン等に記載すべき診断・治療方法のエビデンスの創成を図る。
1. ガイドラインに関して
① 真菌に関する院内感染防止対策の必要性や、「深在性真菌症の診断治療ガイドライン2007年」出版以降に承認された新規抗真菌薬の情報を踏まえて、ガイドラインの改訂を行った。
② トンズランス感染症対策のために患者向けガイドライン及び医科向けガイドラインの発刊・改定を行った。
2. サーベイランスに関して
① 輸入真菌症、ならびに、新興真菌感染症の発生動向を届け出、学会発表と論文のモニタリングにより、国内発生状況の把握を行った。
② 造血幹細胞移植領域におけるアスペルギルス、接合菌、およびその他の糸状菌による侵襲性真菌感染症の臨床研究により、疫学と臨床像を把握した。
③ 外科系・救急領域における深在性真菌症に関する発生動向が不明なため、アンケート等によりデータの集積・解析を行った。
④ トンズランス感染症は、格闘技選手より学童、幼児、家族内へ拡大しており、ハイリスク群の検診等により発生動向を推定した。
3. 真菌感染症の診断法に関する問題
① アスペルギルス感染症:新規検査キットの患者検体を用いた評価を行った。
② トンズランス感染症: T. tonsuransの迅速同定に有用なCLS(硬膜胞子様構造物, Chlamydospore-like structure)の観察の観察が有用である事が明らかにされている。これを実際に格闘技競技者の集団検診などに用いる際の問題点を明らかにし、より簡便、迅速な検診法を提示した。
③ ムーコル感染症(接合菌症):簡便な検査キットの開発を目指し、ISH法・PCR法を応用したムーコル症の病理診断領域における有用な補助診断法の開発と評価を行った。
④ クリプトコックス感染症:潜在性クリプトコックス感染の検査法の開発を行った。
⑤ヒストプラスマ感染症:新規ヒストプラスマ抗原を用いたELISA法と新たな遺伝子を標的としたリアルタイムPCR法による診断法について、実証実験を進めた。
4. 病態の解明真菌感染症の診断法に関する問題
① Aspergillus fumigatus の遺伝子改変株作製により病原性に関わる蛋白質の同定、機能解析を行った(Y69蛋白質の性状と病原性の解析)。
② クリプトコックス抗原特異的T細胞受容体を高発現するTgマウスを用いてTRM 細胞、長期メモリーT細胞からのIFN-γ産生動態を明らかにした。クリプトコックス潜伏感染モデルを用いて免疫記憶応答機序の解明を行った。
5. 新規抗真菌薬の開発に関して
① カンジダにおける抗真菌薬耐性機序を解明することにより、新たな薬剤標的分子の探索と新規抗真菌薬の開発を行った。
② 侵襲性アスペルギルス症の病原性に関与する新しい分泌蛋白質を見つけそれを標的とする治療薬開発につなげる。
結果と考察
真菌症のサーベイランスとして研究分担者によって輸入真菌症の発生動向調査、造血幹細胞移植領域における侵襲性真菌感染症の調査、外科・救急領域での真菌感染症、トンズランス感染症の全国レベルでの診断・治療ネットワークの構築など様々な分野での真菌症感染症について疫学的な調査やネットワークの構築を行った。また、様々な真菌感染症について新しい診断法や、検査キットが開発中である。臨床サンプルを用いた具体的な検討を行っているものもあり、今後も検討を行う。
結論
調査、研究より得られた結果を基にガイドラインの改訂や評価を行った。今後は改訂されたガイドラインの評価を行っていく。

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201420029Z