結核の革新的な診断・治療及び対策の強化に関する研究

文献情報

文献番号
201420020A
報告書区分
総括
研究課題名
結核の革新的な診断・治療及び対策の強化に関する研究
課題番号
H24-新興-一般-011
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 誠也(公益財団法人結核予防会結核研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 露口 一成(独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター)
  • 慶長 直人(公益財団法人結核予防会結核研究所 生体防御部部)
  • 前田 伸司(公益財団法人結核予防会結核研究所 抗酸菌部)
  • 岩本  朋忠(神戸市環境保健研究所)
  • 和田 崇之(長崎大学熱帯医学研究所 国際保健学分野)
  • 御手洗 聡(公益財団法人結核予防会結核研究所 抗酸菌部)
  • 山田 博之(公益財団法人結核予防会結核研究所 抗酸菌部)
  • 吉山  崇(公益財団法人結核予防会複十字病院)
  • 徳永  修(独立行政法人国立病院機構南京都病院 小児科)
  • 小林 典子(公益財団法人結核予防会結核研究所 対策支援部)
  • 山岸 文雄(独立行政法人国立病院機構千葉東病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
29,525,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
結核の革新的な診断・治療に関する研究として,新薬を用いた薬剤耐性結核治療法の開発、病態解明のためのバイオマーカーの開発,結核菌の生死の迅速診断法の開発,結核菌の感染性・病原性の評価・解明を目的とした。対策の強化のために、接触者健診における発病要因の解明,小児における新規感染診断法の開発及び接触者健診の強化の基礎資料作成,全国薬剤耐性調査の実施,地域連携・服薬支援の指標及び指針作成、スクリーニングに関する基礎資料の作成,一般人口のIGRA陽性率の算出を目的とした。
研究方法
新薬に関しては,結核医療施設へのアンケート調査及び国際学会等での最新情報の入手によった。バイオマーカーの開発には結核患者,LTBI,健常人の全血中のmRNA発現とmiRNAを同時解析してその発現量の関連を分析した。迅速な生死菌診断方法には死菌の核酸増幅反応を抑制する試薬とPCR定量法の組み合わせを試みた。結核菌の感染性・病原性の解明のために,次世代シークエンサーによる結核菌のゲノム解析によって広域まん延株,多剤耐性菌株,低まん延地域でのクラスター形成株等の詳細な解析を行った。結核菌超微形態からのアプローチとして超薄連続切片を作成し,その透過型電子顕微鏡像の三次元構築を行い,計測した。接触者健診の発病予測は,保健所に対するアンケート調査によりIGRAの結果毎の発病率を算出した。小児における感染診断法の検討は,QFT-3G上清中のIP-10をELISA法にて定量した結果を解析した。小児の接触者健診は保健所に対する質問票による実態調査を行った。地域連携の評価推進,DOTS評価指標の検討については,結核看護システムのデータ解析及び関係者のワークショップ等によった。薬剤耐性調査は精度保証をされた検査施設における薬剤感受性検査結果を利用し,臨床データは保健所における登録患者情報システムから収集する。患者発見対策に関する研究は文献調査によって実施した。IGRA陽性率は保健所に対する質問票調査を行った。
結果と考察
新抗結核薬を用いた画期的な治療法の開発については,Group5に分類される抗結核薬の中でリネゾリドの有効性を確認した。また,レジメン開発の情報と整理は日本発の新抗結核薬であるデラマニドを活用した臨床治験計画の策定に役立てられる。
結核のバイオマーカーについてはマイクロRNAが病態を反映する可能性が示されており,日本医療研究開発機構(AMED)の次期研究で継続し,実用化を目指す。治療開始後の感染性の評価については,LED照射, EMAを用いたPCR定量法により生菌率を正確に評価できる可能性が示され, AMEDの次期研究で実用化を目指した研究を継続する。
結核菌の感染性・病原性・特性の解明・評価については,全ゲノム解析を活用した研究によって,1) 全国で広範囲に発見される菌株に特有と考えられる非同義置換SNP遺伝子の一部は形質転換効率や菌の増殖に影響があることが明らかになった。2) クラスター形成した多剤耐性菌の遺伝的均質性は極めて高く,巨大クラスターの形成は単クローンによる感染伝搬の結果であることが強く示唆された。3) 低まん延地域での病原体サーベイランスでクラスターの一部の変異数は非常に小さく,直近の伝播によることが強く示唆され,菌株の変異の蓄積機序から詳細な伝搬経路が推定できた。結核菌の超薄連続切片の透過型電子顕微鏡観察・三次元構築により直径,菌体長,表面積,体積,リボソーム数を計側した。
接触者健診の際の発病予測因子を検討した結果,1) QFT-3G検査が陽性,2) 感染源の感染性が高い,3) 潜在結核感染治療の未実施,4) 接触者が医療従事者でない場合に,発病の危険が高かった。小児結核医療についてはIP-10の測定による感染診断法の可能性が明らかになり,また,接触者健診の手引きにつながる事例の集積が進められた。地域連携の評価推進,DOTS評価指標の検討についてはDOTS実施率の設定とそのQ&Aの開発を通して国の対策に直接裨益した。薬剤耐性調査については,新方式による症例の集積が開始され,次期AMED研究に引き継がれることになった。スクリーニングに関するレビューは今後の対策の検討資料として活用されることを期待している。一般般人口のQFT-3G陽性率は,推定既感染率の概ね3-4割程度であり,高齢者等の大規模感染の有無の判断に有用と考えられる。
結論
研究分担者は当初の目標に対して着実な成果を上げており,いくつかは成果として論文化され,一部は次期AMED研究で継続することによって,対策に役立つ革新的な診断・治療技術に結実することが期待される。対策の課題の明確化,評価指標の検討結果や指針策定の支援等の成果は国・地域・医療現場で対策の強化に役立てられる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201420020B
報告書区分
総合
研究課題名
結核の革新的な診断・治療及び対策の強化に関する研究
課題番号
H24-新興-一般-011
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 誠也(公益財団法人結核予防会結核研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 露口 一成(独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター)
  • 慶長 直人(公益財団法人結核予防会結核研究所 生体防御部)
  • 前田 伸司(公益財団法人結核予防会結核研究所 抗酸菌部)
  • 岩本  朋忠(神戸市環境保健研究所)
  • 和田 崇之(長崎大学熱帯医学研究所国際保健学分野)
  • 御手洗 聡(公益財団法人結核予防会結核研究所 抗酸菌部)
  • 山田 博之(公益財団法人結核予防会結核研究所 抗酸菌部)
  • 吉山  崇(公益財団法人結核予防会複十字病院)
  • 徳永  修(独立行政法人国立病院機構南京都病院 小児科)
  • 小林 典子(公益財団法人結核予防会結核研究所 対策支援部)
  • 山岸 文雄(独立行政法人国立病院機構千葉東病院)
  • 岡田 全司(独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では結核の革新的な診断・治療に関する研究として,新薬を用いた薬剤耐性結核治療法の開発、病態を解明するための新バイオマーカーの開発,結核菌の生死の迅速診断法の開発,結核菌の感染性・病原性の評価・解明を目的とした。対策の強化のために、接触者健診における発病要因の解明,小児におけるIGRAの診断特性の検討及び新感染診断法の開発,小児結核の実態の把握,小児接触者健診の基礎資料の作成,全国薬剤耐性調査の実施,地域連携・服薬支援の指標及び指針作成、院内感染予防の手引きの策定,スクリーニングに関する基礎資料作成,一般人口のIGRA陽性率の算出を目的とした。
研究方法
新薬に関しては結核医療施設へのアンケート調査及び国際学会等での最新情報の入手によった。バイオマーカーの開発には結核及びLTBI患者,健常人の全血中のmRNA発現とmiRNAを同時解析してその発現量の関連を分析した。迅速な生死菌診断方法には死菌の核酸増幅反応を抑制する試薬とPCR定量法を試みた。結核菌の感染性・病原性の解明のために,全ゲノム解析によって家族内感染事例,広域まん延株,多剤耐性菌株,低まん延地域でのクラスター形成株の詳細な解析を行った。結核菌の超微形態の観察のため,超薄連続切片の透過型電子顕微鏡像の三次元構築によって計測した。接触者健診の発病予測は,保健所への質問票調査からIGRAの結果毎の発病率を算出した。小児における感染診断法の検討は,QFT-3GとT-SPOTの測定及び上清中のIP-10の定量結果を解析した。小児の接触者健診は保健所に対する質問票による実態調査を行った。地域連携の評価推進,DOTS評価指標の検討については,結核看護システムのデータ解析及び関係者のワークショップ等によった。薬剤耐性調査は精度保証された検査施設における薬剤感受性検査結果を利用し,臨床データは保健所における登録患者情報システムから収集した。院内感染予防の手引きは2000年版を元に内容を更新し,専門家・関係者の意見により修正し作成した。患者発見対策に関する研究は文献調査によって実施した。IGRA陽性率は保健所に対する質問票調査を行った。
結果と考察
新抗結核薬についてはリネゾリドの有効性を確認した。レジメン開発の情報と整理は日本発の新抗結核薬であるデラマニドを活用した臨床治験計画の策定に役立てられる。
結核のバイオマーカーについてはマイクロRNAが病態を反映する可能性が示され,日本医療研究開発機構(AMED)の次期研究で継続し,実用化を目指す。感染性の評価については,LED照射, EMAを用いたPCR定量法により生菌率を評価できる可能性が示され, AMEDの次期研究で実用化を目指した研究を継続する。
結核菌の感染性・病原性・特性の解明・評価については,全ゲノム解析を活用した研究によって,1)広範囲に検出される菌株に特有な非同義置換SNP遺伝子の一部は形質転換効率や菌の増殖に影響すると考えられた。2)クラスター形成した多剤耐性菌の遺伝的均質性は極めて高く,巨大クラスターの形成は単クローンによる感染伝搬の結果であることが示唆された。3)低まん延地域でのクラスター形成株の一部の変異数は小さく,直近の伝播によることが強く示唆され,菌株の変異の蓄積機序から,詳細な伝搬経路が推定できた。結核菌の超薄連続切片の透過型電子顕微鏡観察・三次元構築により直径,菌体長,表面積,体積,リボソーム数を計側した。
接触者健診の際の発病予測因子を検討した結果,①QFT-3G検査が陽性,②感染源の感染性が高い,③潜在結核感染治療の未実施,④接触者が医療従事者でない場合に,発病の危険が高かった。小児結核についてはIGRAの特性及びIP-10の測定による感染診断法の可能性が明らかになり,また,接触者健診事例の集積が進められた。地域連携の評価推進,DOTS評価指標の検討についてはDOTS実施率の設定とそのQ&Aの開発を通して国の対策に直接裨益した。薬剤耐性調査は症例の集積が開始され,次期AMED研究に引き継がれることになった。「院内感染予防の手引き」はwebで公開され,研修会・対策現場で活用されている。スクリーニングに関するレビューは今後の対策の検討資料として活用されることを期待している。一般般人口のQFT-3G陽性率は,推定既感染率の概ね3-4割程度であった。
結論
当初の本研究班の目標に対して研究分担者は着実な成果を上げており,いくつかは成果として論文化され,一部は次期AMED研究で継続することによって,対策に活用される革新的な診断・治療技術に結実することが期待される。対策の課題の明確化,評価指標の検討結果や指針策定の支援等の成果は国・地域・医療現場で対策の強化に直接役立てられる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201420020C

収支報告書

文献番号
201420020Z